学芸リカプロ プレゼンテーションシンポジウム「ミュージアム誕生と成長」開催報告

北海道大学学芸員リカレント教育プログラム(学芸リカプロ)報告会「プレゼンテーション+シンポジウム『ミュージアムの誕生と成長』開催報告

日時:令和3年2月20日(土) 13時00分~17時00分
オンライン開催

平成30(2018)年度から3年間にわたって活動してきた北海道大学学芸員リカレント教育プログラム(通称,「学芸リカプロ」)を締めくくる最後のイベントとして,令和3年2月20日(土)に,今年度の公開成果報告会を開催しました。オンラインでの開催となりましたが,学芸リカプロの受講者はもとより,東京,大阪,名古屋,京都,福岡など,全国各地からのべ58人が参加し,議論と親睦を深める機会となりました。

最初に,開会の挨拶に立ったのは,山本文彦理事・副学長です。山本先生は、前職の文学研究院長時代から学芸リカプロを見守ってくださり,2018年のキックオフシンポジウムでもご挨拶を頂戴しましたが、今回は3年間の成果を総括しつつ,本学における今後の社会人リカレント教育を展望するご挨拶をいただきました。

開会にあたり、山本文彦理事・副学長からの御挨拶

続いて,報告会の前半では,学芸リカプロの受講者である塚田真理子さん,中島香矢さん,田川衛さん3人が,自身の研究や実践について報告しました。自宅の庭先で小さなライブラリー兼ミュージアムを運営する塚田さん,北海道帝国大学を卒業したアマチュア画家・服部正夷の生涯を調査した中島さんの報告は,草の根レベルから地域文化を考えるうえでのヒントを与えてくれるものでした。田川さんは,学芸リカプロが主催して2020年10月に開催した企画展「DISTANCE #学びと距離の物語」(於北海道大学総合博物館)での経験を踏まえながら,アイヌ語研究者の知里真志保について報告してくれました。

前半のプレゼンテーションでは3人の受講者が報告しました

後半は,学芸リカプロの受講者がパネリストとして加わるシンポジウム「ミュージアムの誕生と成長」です。まず,学芸リカプロの代表を務めてきた文学研究院教授・佐々木亨先生から冒頭の挨拶があり,本プログラムの3年間にわたる活動を振り返りながら,「学ぶよろこびに年齢は関係ないのではないか」という点をご指摘いただきました。その後,文学研究院の今村信隆特任准教授が司会を務め,具体的な議論へと入っていきます。

代表として学芸リカプロを率いてきた佐々木亨教授

報告を行ったのは,開館から5年未満の新しいミュージアムで活躍する,4人の学芸員やキュレーターです。登壇順に,佐々木蓉子さん(弘前れんが倉庫美術館),蝦名未来さん(だて歴史文化ミュージアム),金澤聡美さん(小樽芸術村),樋泉綾子さん(札幌文化芸術交流センターSCARTS)が,それぞれの勤務館の特徴や最新の活動事例について報告しました。一見したところかなり事情が異なっているように思える4館ですが,報告を通じて,そこに共通するポイントが次第に見えてきます。コメンテーターとして参加した京都芸術大学准教授の田中梨枝子先生からは,4館がともに,人の暮らしの流れの中にあることが指摘されました。同じくコメンテーターの佐々木先生は,旧来の博物館の枠組みにとらわれない4館の機能の多様さについて指摘し,さらに,コレクションや設置・運営母体に関する質問をパネリストに投げかけていきました。各館の誕生や成長をめぐるディスカッションからは,今後のミュージアムが進む方向というより大きな問題も垣間見え,学芸リカプロの閉幕にふさわしい充実した議論が交わされたと言ってよいでしょう。

後半のシンポジウムでは4人のパネリストが登壇
若いミュージアムを動かす学芸員たちが活動を紹介します
コメンテーターの田中梨枝子准教授

最後に,学芸リカプロを主催してきた文学研究院を代表して,研究院長の藤田健先生がご挨拶に立ちました。藤田先生からは,学芸リカプロの活動や文学研究院での社会人教育の現状と絡めつつ,大学の社会的役割を改めて確認するという内容のお話をいただき,無事に閉会となりました。

最後の挨拶に立つ藤田健文学研究院長