若手研究者支援セミナー「学振特別研究員の申請に向けて準備は1年前から!」開催されました

4月17日(水)に文学研究院研究推進委員会主催の若手研究者支援セミナー「学術振興会特別研究員DC・PD申請書の書き方セミナー2019~学振特別研究員の申請に向けて―準備は1年前から!~」が開催されました。映像・現代文化論研究室、哲学倫理学研究室、行動科学研究室、日本史学研究室、スラブ・ユーラシア研究センターにそれぞれ所属する5人の現役学振特別研究員に話題を提供していただき、申請のおおまかな内容から自分の経歴を申請書に落とし込む方法、申請書が審査される際の審査セットの傾向と対策、書類が通った後の面接の具体的な内容について、更にDCとPDの違いや留意事項等、自身の体験を踏まえたお話を伺いました。

今回のセミナーのサブタイトルは、2017年度および2018年度に続き、「準備は1年前から!」。セミナー開催直後に控えた2019年申請のための直前セミナーではなく、来年2020年5月の応募を目指す若手研究者を対象に開催されました。実際に申請書に着手するのは提出前の2~3ヶ月前だとしても、本当の準備は、日々の研究の中で自分の研究テーマやキャリアプランを考えていくところからすでに始まっているのだというメッセージを伝えることを目指して企画されました。

学振特別研究員についてまだよく分からない学生が多く参加することを想定し、まず始めに、司会の藏田伸雄先生(哲学倫理学研究室・教授/研究推進委員長)から学振特別研究員制度の概要について説明がありました。さらに、具体的な数字や例を出しながら、採用されれば経済的にもキャリア面でも安定して研究が出来ること、申請書を書くこと自体が自分の研究を「人にもわかるように」まとめたり、今後の研究計画を検討する機会にもなることを話しました。

藏田伸雄先生(哲学倫理学研究室)

話題提供者の一人目は、平成31年度採用DC2(早期修了のためPDに資格変更)の増井さん(映像・現代文化論研究室)。増井さんは、「ダメ元でやってみる」と題し、たとえ経歴がいまひとつであったとしてもまずは申請することに意味があること、不採択になってもそれを次の申請のたたき台にできること、を話しました。さらに業績は修士課程の時からこつこつ蓄積することが大事なので、どんどん論文を書いてみることをアドバイスしました。

増井真琴さん(映像・現代文化論研究室)

続いて2人目の同じくH31DC2の小林さん(哲学倫理学研究室)は、では実際にどのように申請書を書くのか、「どうやって構想や経験を申請書に落としこめばいい」のか、について話しました。まず前提として、「勉強」と「研究」を区別すること、申請書はテストの答案用紙ではなくエントリーシートであること、そして審査員の先生に対しては受け身ではなく積極的に自分が「独立した研究者として投資する価値がある」ことをアピールする点について述べました。さらに具体的なアドバイスとして、研究計画のゴールとして博士論文を完成させることを想定しながら学会発表や論文投稿の大まかな予定をたてたり、審査員を納得させるための材料を記載したりすることの大切さを話しました。また、留学が審査で重要視される項目の一つであることを述べ、学振の応募手続きがWEB上で可能なこと、メールやSkypeを活用すれば指導教員や知り合いの採択者に申請書を見てもらうことが可能なので学振の「若手海外挑戦プログラム」等を活用して今から留学準備をしても間に合うことを話しました。

小林知恵さん(哲学倫理学研究室)

今年度からDC1に新規採用された横山さん(行動科学研究室)は、審査員に的を絞り、申請書は誰が読むのかを具体的に想定したうえで「審査セット」を慎重に選ぶ必要があることを実際の書面審査セットを見せながら分かりやすく説明しました。横山さんは、自身の研究を客観的に分析し、自分の武器が何なのかを考え、「自分の研究の意義が伝わるのは誰か?」、「自分の研究に価値を見出すのはどの分野の審査員か?」について考えることが重要であることを話しました。

横山実紀さん(行動科学研究室)

続いて高鳥さん(日本史学研究室)は、実際に経験していないとなかなか実情が分からない面接について、自己PRとあわせて話をしました。具体的には面接は東京会場で行われ、わずか4分のPPT発表に続き面接担当者からの質疑応答6分という短い時間で評価されるため、発表資料のPPTとプレゼンテーションについてはよく練る必要があることを説明しました。申請書の「自己評価」欄に記入する自己PRについては、申請時にあると望ましい経歴や記載可能な活動について例をあげながら述べ、他の申請者との差別化をはかるような内容がよいことを話しました。

高鳥廉さん(日本史学研究室)

5人目はDCの経験も持つ現役特別研究員PDの清沢さん(スラブ・ユーラシア研究センター)。これまでのDC採用者4名からの話題を振り返りつつ、PDの制度について詳しく紹介しました。まず、採用人数や採用率、研究奨励金、採用期間、申請資格等の制度概要に加えDCとは違い必ず研究機関を移動する義務があることについて説明しました。研究機関の移動、すなわち博士課程で在学した大学等研究機関とは別の研究機関を受け入れ先として選定する際の基準については、自身の場合を例に具体的なポイントをいくつか紹介しました。更に、研究費である特別研究員奨励費は人文社会学領域であっても特別枠への応募が可能であることや、博士課程のうちから積極的に国内外の学会へ参加し多くの研究者と交流することや、研究助成への応募にも挑戦することの大切さについて話しました。また、学振PD以外にも人文系ポスドクが利用できる助成制度があることも紹介しました。

清沢紫織さん(スラブ・ユーラシア研究センター)

最後に教員コメンテーターの池田透先生(地域科学研究室・教授)より、大学院生が申請可能な研究費として学振特別研究員だけではなく、民間を含め、様々な助成事業や競争的資金があることについて、具体的な検索サイトを示しながら詳細な説明がありました。採用された場合は業績となることはもちろん、たとえ不採択であっても自分の研究をまとめるよい機会になるので積極的に応募すると良いとのアドバイスがありました。

池田透先生(地域科学研究室)

当日は、修士課程、博士後期課程の大学院生を中心にポスドクとあわせて計37名の方が参加しました。アンケート結果では、ほぼ全員が「役に立ちそうだ」と回答(有効回答31名・回収率83.8%)。また自由筆記欄には、「面接の話はなかなか聞けないのでよかった」、「実際の経験に基づいた話だったので、とても役に立った」等のコメントが寄せられました。

今年度も、2020年2月頃に実践編として、「申請書の書き方相談会」を開催する予定です。当日は教員による話題提供と併せて、審査経験のある教員と現役学振特別研究員による個別面談も設けますので作成中の申請書(仮)を持ち込みアドバイスをもらうことも可能です。また、実際にこれまで採択されたDC・PD・RPD・外国人特別研究員の申請書類を閲覧できるブースを設けますので、どうぞ奮ってご参加ください。

【アンケートでの質問・意見への回答】

Q1)修士1年の現時点で、申請のためにどのような準備をしたらよいですか
A1)KAKENデータベース(https://kaken.nii.ac.jp)で「特別研究員奨励費」カテゴリー内でキーワード検索して、採択された計画の内容やボリュームを確認することを推奨します。また、指導教員とまめに面談を行って、修論でできないこと(発展課題)を早めにあぶり出す。斜め読みやアブストラクトに目を通すだけでもよいので、先行研究の調査を大量に行って、先行研究では何がなされていないのかをつきとめておくのも、学振申請書用(博士論文用)のアイディアをふくらませる上で有効です。

Q2)学振申請書の具体例も配布してもらえるといいと思います
A2)残念ながら配布はできませんが、研究推進室で閲覧いただくことは可能です。セミナーで配布した【学振特別研究員DC・PD申請書閲覧確認書】に閲覧希望日時を明記してメールでご連絡ください。

Q3)もう少し具体的な申請書のテクニック等を知りたかった
A3)セミナーで配布したチェックリスト【申請書の書き方相談会20190207(河原先生作成)改訂版】が申請書作成における具体的なテクニックを網羅しております。ぜひこちらをご確認ください。