プロフィール
森 菜摘 さん(北海道大学附属図書館 勤務)
群馬県高崎市出身。群馬県立高崎女子高校を卒業後、北海道大学へ総合文系で入学。2年次に文学部に進級し宗教学インド哲学研究室に所属。学部卒業後は一度就職したが、大学院進学への思いを諦めきれず、退職して2020年4月に北海道大学文学院に入学。大学院では、初期のキリスト教周辺の文献等を中心に学び、2022年3月修了。2022年4月より北海道大学附属図書館に勤務。
北大文学院(宗教学インド哲学研究室)を選んだ理由
学部生の頃にお世話になった宗教学インド哲学研究室の先生方のもとでまた学びたいという気持ちが大きかったです。学部生の頃は、宗教学とインド哲学どちらにも興味があったため、両方の授業を受けました。
大学院では宗教学に絞り、特に初期のキリスト教に関係する文献等を中心に学びました。宗教学を専攻する先生方も学生も、それぞれ研究内容や興味関心が多種多様で、宗教学はとても広い分野だと感じます。そのぶん、学部生の時に学びきれなかったことをもっと勉強したいと思い、同じ研究室に進学することを選びました。
大学院ではどんな研究をしましたか
授業でグノーシス主義やコプト語を学んだことから、これらにかかわりの深い「ナグ・ハマディ文書」のうち、もともと自分自身が宗教学的に興味のあった「回心」についての記述が出てくる文書を修士論文の題材に選びました。
コプト語は大学院に入ってから初めて触れた言語でしたので、とても興味深く、勉強するのがとても楽しかったです。
大学院に行ってよかったですか
自分の学問的な興味、関心を再認識することができたので、行ってよかったです。
理系・文系問わず様々な分野の大学院生が受講する大学院共通授業科目の受講は、とても刺激を受けました。人間知・脳・AI研究教育センター教員が開講した「心と認知の哲学入門」は、様々な専攻分野の院生の方と、脳と心の関係についての議論を行ったことが印象的でした。特に、同じグループになった医系の院生さんは、普段かかわることのない分野の方でしたので、様々な考え方を知る貴重な機会となりました。
在学中、大変だったことは
修士論文の執筆に必要な文献等を探し出して集めることに少し苦労しました。国内の図書館に所蔵がない本や、身近な書店等では容易に購入できない本もあり、海外から取り寄せたものが何冊かありました。
修了後から現在までの道のり
前職でも大学で働いており仕事内容のイメージがつかめていたこと、そして何より北大が好きなので、北大で働きたいと思いました。
修士2年の時に北海道地区国立大学法人等職員統一採用試験(図書区分)を受験し、採用されました。現在は北大附属図書館の職員として働いています。
特に図書区分を選んだのは、大学院に進学してから、北大図書館で、大学院生を対象に募集されていた短期支援員として働いたことがきっかけです。実際に職員が働いているのを間近で見ながら様々な業務を体験するなかで、図書館での仕事にとても興味をもち、就職を目指しました。
現在のお仕事の内容
主に、図書の発注と納品後の支払い業務を担当しています。
札幌の取引先に発注した本は、ほぼ毎日取引先の書店さんが納品に来て、納品棚に置いてくれます。

納品された本を回収したあと、請求書を確認して支払い作業をします。
大学院で学んだことは今のお仕事に役に立っていますか
とても役に立っています。図書館の業務では様々な言語の書籍を扱うので、これまでにいろいろな言語に触れてきた経験が活かされているように思います。
また、修士論文の題材とした「ナグ・ハマディ文書」はとても古いものです。もしこれが長い年月の間に失われたり散逸したりしていたなら、私達には存在すら知られなかったのかもしれないと考えると、時代や状況は違っていても、現代の図書館での業務にも真摯に取り組まなければならない、と気持ちが引き締まります。
今後の目標・夢
図書館での勤務は4年目に入りましたが、学ばなければならないことがまだまだたくさんあり、勉強の毎日です。これから様々な業務を経験し、しっかりと図書館を支えていける職員になりたいです。
また、私にとって宗教学はこの先もかかわりを続けていきたいと思える学問分野なので、今後も、自分なりのペースで学んだり考えたりしていこうと思っています。
後輩のみなさんへのメッセージ
北海道大学文学院での2年間で、専門的な知識ももちろん増えましたが、それ以上に、自分の中での考え方の幅や奥行きを広げることが出来たと思うので、とても良かったです。文学院で過ごすうちに、自分が本当にやりたいことや、人生において大切にしていきたいことを見つけることが出来たのだろうと思います。
みなさんも、ぜひ文学院への進学を考えてみてください。
(2025年8月取材)