【学芸リカプロ】「地方自治体における文化施策と展覧会企画」7/23濱崎 加奈子氏の講義レポート

地方自治体における文化施策と展覧会企画
講師:濱崎 加奈子 氏(公益財団法人 有斐斎弘道館 館長)

門間 仁史

私たち学芸員は、博物館法や条例等によって定められる法的な義務や、所属館が定める理念やミッションに則って展覧会をはじめとする事業を行っています。そのため展覧会の企画は学芸員にとって当為であって、当為であるがゆえに、企画のための指針−博物館学や教育学的な観点とは異なる、いかなる姿勢で企画に臨むべきかを示す倫理とも言うべき指針—について考える機会は、決して多くはありません。

濱崎氏の講義では、まさにそうした指針について考える契機をいただきました。前日のシンポジウムでは、迎える客一人ひとりのために掛け軸や茶碗などをしつらえるという有斐斎弘道館でのもてなしについて紹介していただきました。また講義でも引き続き、濱崎氏がプロデューサーを務められた京都・二条城での「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」での、かがり火、白馬の繋留、立花、能楽の実演等、世界遺産であり国宝に指定されているような場では通常行われない、しかし二条城だからこそ行われるべき仕掛けや催しによるもてなしについてお話いただきました。いずれにおいても、その場その時に最もふさわしい人、モノ、コトをしつらえるという日本文化の伝統に根ざした当為としてのもてなしを通じて、人を迎える際に念頭に置くべき基本的な指針を例示していただいたものと受け取りました。

本プログラムが掲げる「企画力」という言葉からは、テーマ設定、作家・作品の選定、展示の工夫や広報戦略といった、展覧会を実現するための実践的なスキルのことが第一に想像されます。そこにきて、いずれの方向に「企画力」を発揮してゆくかを定める指針の重要性を説く濱崎氏の講義は、本プログラムの初回にふさわしい意義深い内容でした。