文学研究院哲学倫理学研究室の宮園健吾准教授が、第22回(令和7(2025)年度)日本学術振興会賞を受賞いたしました。
日本学術振興会賞は、創造性に富み優れた研究能力を有する若手研究者を見出し、早い段階から顕彰することで、その研究意欲を高め、研究の発展を支援することにより、我が国の学術研究の水準を世界のトップレベルにおいて発展させることを目的としています。
各分野を代表する我が国のトップレベルの学術研究者により構成される審査会で厳正な審査が行われ、受賞者が選考・決定されます。
宮園准教授の受賞理由は以下のとおりです。
- 「合理性と非合理性についての哲学的学際的研究」
(Philosophical and Interdisciplinary Studies of Rationality and Irrationality)
宮園健吾氏の研究は、心の「不合理性」や「異常」に注目し、合理的で正常な心の働きを明らかにしようとするものである。とりわけ、「妄想」(delusion)をめぐる研究では、妄想を「機能不全の信念」ととらえるという独創的な戦略を採り、関連分野での様々な論争と未解決課題に対し、説得力のある答えを導いている。また、宮園氏は、妄想が引き起こされる要因について、個人の心に重点を置いた従来の解釈を転換して「他者からの証言」という社会的要因に着目した議論を展開し、当該研究分野及び関連分野に多大な影響を与えた。そのほか、信念の正当化における想像力の役割や認識的ナッジに関してもレベルの高い研究を行い、心的作用の合理性・非合理性に関する哲学に関しては、若手の代表的な研究者と呼べる地位を築いている。
こうした宮園氏の研究は、その質と圧倒的な量において、また国際性や文理融合的学際性において、独創性と創造性を十分に備えたもので、確かな将来性が見込まれる。
なお、授賞式は令和8年2月3日に日本学士院で行われます。