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プロフィール

貴田岡 結衣 さん(HBC北海道放送勤務)
北海道旭川市出身。旭川東高等学校卒業後、2018年4月に北大文学部に入学。文学部では、言語・文学コース/欧米文学研究室を選択し、カーソンマッカラーズの「結婚式のメンバー」を題材に卒論を執筆。2022年3月に卒業、同年4月よりHBC北海道放送に就職。報道部を経て、現在は東京支社編成部にて勤務している。

北大文学部を選んだ理由

文学部のしかも「文学」という一見名前通りの王道らしい専攻を選んだものの、本を読むこと自体は、人並みに好きというレベルで、受験直前まで学部を決めかねていました。よくよく考えてみると「言葉」に興味があり、学問として勉強してみたいなと思ったので、最終的に文学部受験を決めました。

英米文学を専攻するなどとは夢にも思っていなかったのですが、転機となったのは、学部2年生のとき。何気なくとった竹内康浩先生の「英米文学演習」の授業でした。恥ずかしながら、J.D.Salingerの『Catcher in the Rye』くらいしか読んだことなかったのですが、授業で扱った『Nine Stories』の批評が信じられないほど面白く感銘を受けたことを覚えています。その作品には、巻頭に「両手の鳴る音は知る 片手の拍手の音はどんな音か」という禅の問答が書かれていて、はじめは何の意味があるのかがわからなかったのですが、物語全編でその問答が根底に通じてくるような感覚がありました。

この演習は、短編を読んで、ペンネームを付け、400字の作文用紙1枚にて作品を論じ、受講生同士で評価をしあうという形式でした。読み手によって、書き手によって、いろいろな読解があることもとても興味深く感じました。ここで英米文学に出会ったのも何かの縁だと思って、欧米文学研究室を選びました。

文学部ではどんな研究を

竹内先生のゼミで、英米文学に触れるようになり、国や時代が違っても、文学には様々な社会問題や文化背景があることを知りました。卒論は、アメリカ南部の女性作家、カーソン・マッカラーズの『結婚式のメンバー』を題材に執筆しました。社会から排除された、いづらさを感じている主人公の心情について論じました。

北大文学部に行ってよかったですか

物事の見方が広がった感覚があります。様々な作品を読んで論じる中で、ひとつ自分の中でテーマとなったのが「二項対立を疑う」というものです。「善と悪」「男と女」「生と死」「右と左」などこの世界には当たり前にペアの概念があふれている、それをマジョリティだと考えがちだけれども、ただそのはざまにいたときに人々は疎外感や生きづらさを感じることにつながるのではないかと考えるようになりました。今も通じていて、取材の中で自分のステレオタイプに縛られ物事を見ていないか、答えを求めすぎていないかなど自分の中で問い直すきっかけとなっています。この思考が養われたのは、文学部にいたからこそだと思います。

北大の雰囲気もすごく心地よく、晴れた夏の日に中央ローンで涼んでみたり、メインストリートを自転車で滑走するのも心地よかったです。近くのカフェで、ゼミの同期と本を読んで論じながら課題に励んだのもいい思いです

在学中、大変だったことは

後半2年間はコロナ禍の真っ只中だったので、授業もすべてオンラインに。文系棟に通ったのも結局2年生の1年間のみです。あらゆる交流が遮断されて、授業だけでなく、就職活動も重なってしまい、世の中がどうなるかわからなかったので、すごく不安な気持ちでした。

卒業後から現在までの道のり

もともとテレビが好きで、北海道で働きたいと思っていたので、道内のテレビ局を第一志望に就職活動をしました。先述の通りコロナ禍ということもあり、面接は9割がたオンライン。大学にも通えず、コロナもこれからどうなるかわからない…という不安の中での就活でした。

上手くいかなかったこともありますが、ご縁をいただいて、HBC北海道放送に新卒入社し、最初の配属は報道部になりました。

報道部の記者時代は、道内はもちろん全国に向けた事件事故や選挙や市政取材を担当。デイリーのニュース企画だけでなく、思いがけない妊娠に悩む女性たちを追ったドキュメンタリーの制作にもあたりました。時には、目を背けたくなるような事実や、「小説よりも奇なり」な事実も目の当たりにしましたが、自分が今まで生きてきて出会ったことのない人や場所にたくさん出会うことができて、刺激的な日々でした。

報道部で記者時代の取材の一幕。カメラクルーと2人三脚で現場に向かいます。
事件事故から、生活に身近な「スーパー」でのリポートや、休日の行楽地の賑わいまで!
硬軟問わず幅広いジャンルを担当できるのがローカル局ならではの魅力です。

現在のお仕事の内容

入社5年目の夏に異動となり、現在はHBC北海道放送の東京支社編成部で働いています。編成部とはHBCでどの番組をどの時間に放送するかというタイムテーブルの作成、事故なく放送するための運行管理、より多くの視聴者に見ていただくための宣伝などを行う部署です。制作・取材現場からは離れましたが、災害時などは、急遽の特別番組を放送するために、社外・社内調整をはかっていくこともあります。

中でも東京支社での仕事は、28社ある系列局との調整がメインで、全国の放送局の人と関われるのが今の仕事のやりがいです!

HBCのマスコットキャラクター「もんすけ」と。(北海道にサルはいませんが…。)
東京支社で全国の系列局の仲間とかかわることで、HBC・北海道の魅力を再発見!
その魅力を伝えていくべく、奮闘中です!

文学部で学んだことは今のお仕事に役に立っていますか

現在は、直接的に文学とは関係ない仕事をしていて、仕事柄、時間さえあればテレビを見る生活。『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆 著、集英社)とはまさしく自分のことかと思いながら、目の前の仕事に必死な毎日です。

学生時代を振り返ると、一つの物語と向き合って「登場人物の行動は善悪で片づけられるのか」「背景に抱えているものは何なのか」と答えのないテーマをじっくりと考えられていたのは、すごく贅沢な時間だったと思います。文学部時代に培った多角的な視点や粘り強い思考力は、たとえば取材相手と向き合うとき、目の前に生じた課題を解決するときに活かされているかと思います。

今後の目標・夢

いまテレビ局が置かれている状況は、とても厳しいものになっています。テレビ離れ、人口減少やインターネット等の広告の増加で、「どう生き残りをはかっていくのか」が、テレビ局に突きつけられている課題です。

その状況だからこそ、ローカルテレビ局は情報を届けるという点だけでなく、北海道のために何ができるか新たな価値を創り出していくことが求められています。

私自身、北海道で生まれ育ち、就職して、記者時代にニュースを追って道内をめぐった経験でよりその魅力に気づき大好きになりました。自然・食・観光・人…魅力があふれる大好きな北海道という土地に還元できるように、テレビという媒体を通して仕事ができたらいいなと思っています!そして休日には自然いっぱいの土地を満喫する生活を送りたいです。

後輩のみなさんへのメッセージ

文学部は就職に不利ではないか、学んだことは将来に役立たないのでは。特にそういう目が向けられることもあると思います。ただ、文学部の学問は想像以上に幅広く、ここで好きなこと・興味のあることを見つけて、追求できる時間は私にとって何にも代えがたい時間でした。のちのち社会人になって、仕事や生活で大きな壁にぶつかった時、ここで培った思考力や忍耐力は自分を助けてくれるものになっています。

明確にやりたいことがなくても、迷っていても、だからこそ文学部で学ぶという選択肢を持ってみてはいかがでしょうか。

(2026年9月取材)