書香の森企画展示「新・植物図鑑」シリーズ -写真家・佐藤祐治の植物写真- 第2期展示詳細

書香の森の企画展示を更新しました。写真家・佐藤祐治の関連写真の3つの作品シリーズを紹介します。企画は、芸術学研究室の浅沼敬子教授です。第2期(9月14日-11月27日)の展示詳細を紹介します。

新・植物図鑑」シリーズ -写真家・佐藤祐治の植物写真- 
第2期 北海道各地の和人入植地における植生の写真

明治政府によって北海道はいわゆる「内国植民地」的な形で開拓され,、多くの和人が北海道各地に入植した。一方で人の往来とともに多くの植物も海を渡った。外から移入された植物を外来植物といい、その多くは人為的に持ち込まれたものである。中でも移入先で野外に自立定着しているものが帰化植物である。『帰化植物の自然史―侵略と攪乱の生態学』(2012)の中で、編者である森田は帰化種の英訳として「colonizing species」を提示している。帰化植物に、植民地を指すcolonyと同語源の語が用いられている点に興味を覚えた。

colonyの語源は『古典ラテン語辞典』によると、ラテン語で「耕す」「居住する」などを意味する動詞「colere」に遡ることがわかった。「colere」から、「農園」や「入植地」を指す「colonia」となり、これが英語の「colony」の直接の語源となっていた。「colere」からは「culture(文化・栽培)」や「cultivate(耕作する)」という言葉も派生しているという。colonyという語の持つ意味合いが明治以降の北海道の開拓に重なって見えた。

北海道の開拓によって入植者由来の地名が残る場所、かつてそう呼ばれていた場所がいくつかある。展示写真の地名の由来を確認してみよう。

砂川市宮城の沢は、砂川市の山間部に位置し、奈江豊平川の支流沿いの傾斜地である。その地名は大正8年に入植した宮城団体や宮城県出身者が集落の中心であることを由来としている。大正時代には最大120戸あったというが、私が2025年6月の中旬に訪問した際には人の気配はまばらだった。山道を進むと広い更地に現在北海道が在来種への影響などをもとに指定外来種として分類しているフランスギクが、無人となった土地一面に咲いていた。その場所は昭和47年に慈恵会病院が開院し、敷地に隣接して建設された社宅や住宅だったことが、あとから資料で判明した。病院は平成26年に砂川市内に移転したが、広い敷地と数軒の空き家がその面影をとどめていた。

南富良野町岐阜は、現在の同町幾寅地区の北部にあった地名である。幾寅の本格的な開拓は明治34年から始まり、岐阜団体の他にも、伊勢団体、越中団体なども同地区に入植した。初夏に訪問すると忠魂碑のもとでノラニンジンの花が咲いていた。資料によれば忠魂碑は旧南富良野神社跡地に昭和3年に建立されたもので、近隣からの日露戦争の出征者の名が刻まれているという。

更別町上更別は香川からの移住者によって拓かれた土地である。昭和5年、香川からの移住団体が上更別周辺に入植し香川出身者の集落が形成された。翌年も香川団体が同地に入植した。更には昭和21年に香川出身者を主軸とする満州開拓団が当地に入植し、新香川という集落名がついていた。上更別に入植した最初の住宅地の脇にある上更別神社の隣には香川会館がある。付近を歩くと、くたびれた雰囲気の民家の脇の空き地にルピナスやイタドリが群生していた。

今日入植地の歩みの一部が文字や写真に記録され、その一端を資料で確認することができる。木を切り倒し、住宅を作り、森を畑に変えてきた入植者の営みが、目の前の町並みの時系列の上流にある。札幌を筆頭に開発が進んだ地域がある一方で、人の営為が先細っている場所もある。いずれの場所においても帰化植物は繁殖している。もともとその土地に存在しているものが在来であり、外来は対義語である。土地における時間は常に進行し、在来と外来が混じり合いながら常に変化し続ける風景が形成されている。                    

(2026年 佐藤祐治)

参考文献
  • 森田竜義編著『帰化植物の自然史―侵略と攪乱の生態学』北海道大学出版会,2012年.
  • 國原吉之助著『古典ラテン語辞典』大学書林,2025年.
  • 占冠村史編さん委員会編『占冠村史』勇払郡占冠村役場,1963年11月.
  • 南富良野町史編纂委員会編『南富良野町史 上巻』南富良野町役場,1991年3月31日.
  • 南富良野町史編纂委員会編『南富良野町史 下巻』南富良野町役場,1991年3月31日.
  • 砂川市史編纂委員会編『砂川市史 上巻』中川徳男,1991年3月20日.
  • 砂川市史編纂委員会編『砂川市史 下巻』中川徳男,1991年3月20日.
  • ゼンリン『住宅地図 砂川市』ゼンリン,1983年11月.
  • ゼンリン『住宅地図 砂川市』ゼンリン,2011年11月.
  • 山中元編著『英単語の語源を知り語彙を増やすためのラテン語‐日本語‐派生英語辞典』国際語学社, 2006年6月.
  • 医療法人砂川慈恵会(閲覧日: 2026年5月2日).
  • 北海道環境生活部『ブルーリスト(北海道の外来種リスト)詳細情報』北海道庁,(閲覧日: 2026年5月2日).