SDGsへの取組

文学研究院の研究者は、SDGsに関するさまざまな研究活動、教育活動に取り組んでいます。それらの取組を紹介します。

市民のSDGs取組に向けた行動変容のためのミュージアム活用シナリオの創出

佐々木 亨(博物館学研究室)

※特に優先するゴール、ターゲットを示しているが、SDGsの17ゴールは統合的で相互に関連している

解決すべき社会課題・ボトルネック

SDGs達成は、社会の課題を読み解き、解決できる能力を持ち、行動変容ができる市民が育つことが達成の鍵となる。しかし、環境・社会課題を含むグローバル・イシューと暮らしや事業との具体的な結び付きが見えないこと、社会人を含む多様な立場の人々の学びが実現していないこと、課題の解決の糸口が見つけにくく心理的な拒否感が生まれやすいことなどが、人材育成の障害となっている。市民の行動変容には、これを乗り越えて「主体的・対話的な深い学び」を社会に広げることが必要である。

活用する技術シーズと解決するための手法

対話的な学びの場として重要視されているミュージアムにおいて、1)インタラクティブサイネージによる、展示室内でのオンラインと実空間コミュニケーションの接続技術、2)展示空間を用いた来館者コミュニケーションの実践としての探究展示、および3)ミュージアムにおける事業評価の技法の3つの技術シーズを活用する。この事業を、市民との協働を続けてきた大阪市立自然史博物館を始め、複数の自然史系博物館などで展開することを通じて、学びと人材育成の好循環を創り、SDGsへの取り組みを持続可能にする。

可能性試験の実施計画

2つの技術シーズにより開発した「探究展示」や「インタラクティブサイネージ」により対話的な学びの場を創り、これに「子どもワークショップ」や「オンラインプログラム」も組み合わせたプログラムを、おおむね3ヵ月ごとに異なる内容で4回入れ替えて可能性試験を実施する。併せて、もう1つの技術シーズにより、プログラム改善のための評価を実施する。なお、その後の他地域展開については候補となる人文科学と自然科学の双方の資料を扱う地域志向型の「総合博物館」への適用を念頭において、可能性試験を実施する。

研究開発への参画・協力機関
  • 北海道大学 大学院文学研究院
  • 大阪市立自然史博物館
  • 認定NPO法人大阪自然史センター
  • 明治大学 専門職大学院ガバナンス研究科

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古文書調査プロジェクト

日本史学研究室

文学部・文学院日本史学研究室では、北海道内各地にフィールドを定め、古文書調査合宿を実施しています。いまはコロナで中断していますが、これまで十勝管内豊頃町、オホーツク管内置戸町、後志管内倶知安町、渡島管内松前町等で行なってきました。いずれも教員が参加しつつも学生が主体となり、インターカレッジ方式で調査団を組織してのプロジェクトです。参加者は、現地で合宿し、古文書史料1点1点に向き合い、整理番号を付与し、現状記録をとり、目録を作成します。これにより、参加者には日本史研究の基礎体力が養われることになります。
整理した古文書は、地域に保管され、情報は還元されます。作成した目録は、個人情報に留意しつつも、誰でもが活用できるよう閲覧・公開が図られます。地域の歴史資料のアーカイヴ化を期するこのプロジェクトは、健全な民主主義の根幹を支える歴史資料の公正な保存及び利用等に資する活動の地道な実践という側面を備えています。

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思想課題としての帝国主義
-戦争に至る道と、選ばれなかったいくつもの選択肢-

権 錫永(日本史学研究室)

帝国主義は国家が推し進めた対外膨張政策です。帝国主義は必要か不要か、善なのか悪なのか、について当時もたくさんの議論がありました。幸徳秋水は1901年に、帝国主義を「20世紀の怪物」と呼び、他を苦しめるために、まず自ら苦しむ非科学的なものだとしました。膨張政策は全く日本の利益にならないとして小日本主義を唱えた石橋湛山の主張は有名です。しかし、日本の膨張政策は大きなリスクを抱えたまま推進され続け、結局、悲劇的な大戦争に至ります。その過程で科学的な利益・リスク評価ができていたのか、機能不全に陥りかねない国家統治システムが放置されてはいなかったのか、帝国主義を軟着陸させる道はなかったのか。「いつか来た道」へと私たちが迷い込まないために、歴史を評価し、選ばれることなく可能性のままに終わった選択肢を考えること、それが私の研究課題です。何のために、どんな未来構想の下で推進されているのか分からない、危険な政策は、目を凝らせば、今の時代にもあることが分かります。

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北海道における海洋生産性の長期変動とその人類への影響

高瀬 克範(考古学研究室)

海の生態系の豊かさ,つまり植物・動物プランクトンから鰭脚類やシャチにいたる生物の個体数はつねに変動しています。それが過去7000年間にわたってどのように変化してきたのかを解明するのが,このプロジェクトの目的です。方法として,考古学的な遺跡から出土したキタオットセイ,ニホンアシカ,マダラの骨の同位体分析・DNA分析を用います。特定の種の歴史が,これだけ長期間にわたって解明された研究は北太平洋の西側ではありません。また,過去7000年間の北海道島の住人は高度に海洋資源に依存してきたことが明らかになってきていますので,海産物の減少はまさに死活問題であったと考えられます。海洋生産性の低下は人類にどのような影響を与えたのかを考えることも,このプロジェクトの目的です。将来,海洋資源の利用方法の改善にも有益な情報がえられることが期待されます。

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アイヌ語および先住民の言語アーカイブ・プロジェクト「アイヌ語調査資料のデータベース化に関する基礎的研究」

佐藤 知己(言語科学研究室)

日本国内の危機に瀕した言語の1つであるアイヌ語の調査音声資料を文字化し、各種索引を作成して多方面から利用しやすくするためのプロジェクトです。原資料は、日常生活で実際に使われる会話表現の収集を意図した調査であるため、データベースには日本語からアイヌ語を検索する機能を持たせ、「アイヌ語を実際に使う場合を想定し、それに役立つ研究成果」をめざしています。

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国外のブルガリア系マイノリティの言語状況に関わる研究

菅井 健太(言語科学研究室)

本国であるブルガリア国外に居住するブルガリア系住民(マイノリティ)による言語使用に関する問題について、社会言語学的な見地から研究しています。マジョリティとの接触下におけるブルガリア系マイノリティの人々の言語保持や言語シフトの現状、及びその仕組み・背景についての調査・分析を行っています。これらを通じて、言語使用に関するマジョリティとマイノリティの共存の在り方について考えることも目指しています。

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ハイパーデモクラシー:ソーシャルマルチエージェントに基づく大規模合意形成プラットフォームの実現

大沼 進(行動科学研究室)

本研究では、ソフトウェアエージェントと人間が一緒に参加するSNSでの民主主義(ハイパーデモクラシー)のためのプラットフォームを実現します。ここでは、合意形成の基盤としてのSNSに、人間の代理のエージェントを分散配置し、合意形成プロセスを仲介します(ソーシャルマルチエージェントシステム)。そして、炎上、フェイクニュースなどの課題を解決しながら、より良い合意形成や集団意思決定を支援します。

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プラスチック資源循環・排出抑制のための社会システム学的研究
3Rプラスと海洋プラスチック排出抑制対策に係る評価システムの構築

大沼 進(行動科学研究室)

プラスチック資源循環及び海洋排出抑制に係る持続可能な技術や社会シナリオの社会システム学的評価基盤を構築し、環境制約を満たす総合的シナリオを、関連ステークホルダーとの協働で提示します。

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環境省「海洋ごみ削減のための複数自治体等連携による発生抑制対策等モデル事業」

大沼 進(行動科学研究室)

海洋ごみ削減のためには、その回収・処理の継続的な実施に加え、多様な主体が連携した内陸域を含めた広域的な発生抑制対策等を推進することが重要です。そこで、モデル地域を選定し、海洋ごみにつながる内陸域、河川での散乱、漂流、漂着ごみの実態把握、及び、発生抑制対策の検討及び実証実施を通じて効果を検証します。

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第2次札幌市環境基本計画策定に際しての「みんなで考えるワークショップ」共催

大沼 進(行動科学研究室)

札幌市では、第2次札幌市環境基本計画の検討にあたり、幅広い世代の市民の皆さんから、これからの札幌市の環境や「環境首都」を目指す札幌市としての取組、市民の皆さんにご協力いただけること等について、意見をお伺いするため、3回にわたるワークショップを開催しました。

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北海道行動インサイト

大沼 進(行動科学研究室)

行動デザイン(ナッジ等)を活用した効果的な政策の実現に向けて行動科学の知見に基づいた「人々が自分にとってより良い選択を自発的に取れるよう手助けする政策手法」の実践支援を行っています。

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「8」「9」「15」「16」に大沼または環境社会心理学研究室の名前が出てきます

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コミュニティと自然資源とのかかわりを記録し、これからのかかわりを構想する

宮内 泰介(地域科学研究室)

自然を守るということは、人と自然とのかかわりを守ることでもあります。そのかかわりは、とる、使う、保護するなどとても多様で、目につきにくい小さなかかわりも多く含みます。地域の人びととの対話で、それらを記録し、次世代につなげていく研究を続けています。聞き書き集や生活誌を作成し、さらには、それらを踏まえた地域環境ガバナンスのあり方やコミュニティのあり方を考えます。

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農村の地域づくり団体との協働活動
~大学生が卒論で語る「地域づくり楽習会」~

林 琢也(地域科学研究室)

地域づくりとは,地域の経済的・文化的な活性化と同時に,新しい仕組みを住民自ら創造することを目指すものです。近年は,地元の住民のみならず,地域外の有志も含めた多様な展開がみられ,大学との連携・協働活動を進める地域や団体も多くなっています。
文学部・地域科学研究室(林琢也ゼミ)では,教員と関わりの深い岐阜県郡上市(和良おこし協議会)において毎年,出前・卒業論文発表会(通称,「楽習会」)をおこなっています。学生が全国各地で調査して,まとめた卒論を発表し,その内容をもとに参加した住民有志とまちづくりや観光振興,地域活性化について熱い議論を交わす場がこの「楽習会」です。学生は,様々な職業や価値観の参加者から質問されることで,自分の研究を多角的に見つめ直すことができますし,参加者は,他地域の課題や解決のための取り組みを知ることで,それを今後の活動の参考にすることが可能となります。

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ジェンダー・セクシュアリティをテーマとした公開シンポジウム等の開催

応用倫理・応用哲学研究教育センター

本センターはジェンダー・セクシュアリティに関する研究と教育を活動の柱の一つとしており、学内で複数の授業科目を開講しているほか、この分野の研究動向を発信し意見交換を行う場として公開シンポジウムやフォーラム等を毎年開催しています。これまで取り上げてきたテーマとしては、「ワーク・ライフ・バランス」「異性装とパロディ―自己と文化の多様性」「触発する映画―女性映画の批評力」「結婚という制度 その内と外―法学・社会学・哲学からのアプローチ」「同性パートナーシップ制度導入を考える」「シティズンシップと市民運動―LGBTをとりまく日本的事情」「教養とジェンダー」「「LGBT」はどうつながってきたのか?」「国際労働移動とジェンダー」などがあります。昨年は「占領と性」というテーマで、日本における占領体験と性の関係について多角的に考えることを目的とする公開シンポジウムを開催しました。

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