内容紹介
ポーランドの作家では5人目、女性としては15人目のノーベル文学賞受賞者(2018年度)となったオルガ・トカルチュクの2019年12月の受賞記念講演の全訳。豊かな想像力をもち、他者に対する思いやりや共感を体現する「優しい語り手」のイデアが、生物はもちろん、無生物にすら「心」を見出すこの作家の世界観を垣間見せ、重要なモチーフとなって講演を貫いている。
このほか、2013年の来日講演「「中欧の」の幻影(ファントム)は文学に映し出される―中欧小説は存在するか」の計2編を収めた、日本オリジナルの構成。
著者からのコメント
ポーランドの作家のなかでもトカルチュクの人気と知名度は群を抜き、読者からも批評家からも高い評価を得ています。東欧革命を経た新生ポーランドで、政治や歴史ばかりを語る愛国主義的文学に倦みつかれた人々を、読書の愉しみに引き戻したといわれました。
とはいえ、「作家とは本来政治的なもの」と述べる通り、彼女は政治的に発言することを恐れません。フェミニストで、環境問題に敏感で、マイノリティの権利を主張する。権力を恐れず、理不尽さに抗う。作家でありつつ社会活動家でもあるという、ポーランドの、ある意味伝統的な知識人ともいえるでしょう。
トカルチュク自身の人柄がにじみ出るノーベル賞受賞記念講演に加えて、その文学的出自を語る2013年の来日講演も、最良の「中欧文学案内」として必読です。
外部リンク
〔出版社〕岩波書店の紹介ページ