橋本

プロフィール

橋本 雄 教授 / HASHIMOTO Yu
研究内容

中世日本と東アジアの国際関係史・交易史、文化交流史。室町幕府の外交システムや貿易構造、各国における外交儀礼のあり方、いかなるヒト・モノ・情報(文化や技術)が海を越えたのか、といった問題を考えています。

研究分野
日本中世史、東アジア海域史
キーワード
室町時代、国際関係、対外観、東アジア海域、唐物
文学研究院 所属部門/分野/研究室
人文学部門/歴史学分野/日本史学研究室
文学院 担当専攻/講座/研究室
人文学専攻/歴史学講座/日本史学研究室
文学部 担当コース/研究室
人文科学科/歴史学・人類学コース/日本史学研究室
連絡先

TEL: 011-706-2869
FAX: 011-706-2869

研究生を希望される外国人留学生(日本在住者をふくむ)は、「研究生出願要項【外国人留学生】」に従って、定められた期間に応募してください。教員に直接メールを送信しても返信はありません。
関連リンク

Lab.letters

Lab.letters 研究室からのメッセージ
日本史学研究室橋本 雄 教授

海でつながるアジア諸国の結びつき
断片的な資料から描き出す全体像

東アジア海域史では、文字どおり海でつながる日本、中国、朝鮮、琉球の諸地域間の関係をさまざまな角度から検証していきます。そのためのキーワードは生産・流通・消費。流通で例をあげると、15世紀に日本と明とを行き交った遣明船には朝貢品や人件費、船の修繕費などの諸経費がいくらかかったのか。こんな問題が浮上してきます。自分が貿易商人になったつもりで史料を読み込み、パズルのピースのように組み立てていった先にどんな新たな歴史像が見えてくるのかを探っています。

歴史学など、すでに多くの事柄が明らかになっていると思われがちですが、まだまだ日の目を見ていない史実が潜んでいます。先頃、日明貿易の渡航証明書兼貿易許可証である勘合の復元に関わりました。勘合の形や大きさといった基本的問題ですら、学界では未解明のままなのです。さまざまな断片的史料を突き合わせた結果、従来考えられてきたもの以上に大きいものであることが判明しました。決定案に至るまで、まだいくつものハードルがありますが、引き続きこの謎ときを楽しんでいこうと思っています。

なお、下掲〈写真1〉〈写真2〉の段階からさらに若干の考察を進めた日明勘合復元案(宣徳本字壱号勘合料紙; 2013年7月段階)については、こちらからダウンロード(PDF)して御覧になれます。

〈写真1〉実はこんなにも大きい勘合の復元。Eテレ(NHK教育)「さかのぼり日本史 外交篇」の撮影用に作製された(2011年9月段階)。これでもまだ試案の段階であり、今後もブラッシュアップを続けていく必要がある。
〈写真2〉想像の「日明勘合」(写真1)を作るために、仕様書として丁寧に描いた復元案。法量は縦81cm×横108cm程度を想定している。そのほか、下に示した想像復元案のスケッチ(写真3)も作って、復元製作に取りかかって貰った。なお、勘合の形状や大きさ、システムについては、拙著『"日本国王"と勘合貿易』(NHK出版)pp.33-35を参照されたい。
〈写真3〉勘合(=勘合料紙)の作り方を想像してスケッチしてみた画像。

大きな難題を前に
思考をズラしていく技を知る

〈写真4〉2009年に訪れた中国浙江省天台山の石梁飛瀑。かつて日本人留学僧が目指した聖地に念願かなって立つ。

研究で行き詰まらないためには、次から次へと“?(ハテナ)を生み出す力”が不可欠です。初めから狙いどおりの史料が手に入ることは多くないので、自分が知りたい大きな課題を細かく分解したり、迂回路をとることが必要になるからです。授業では、学生諸君が発想を転換させる技を身につけるお手伝いをしています。

おしなべて目を剥くような新説よりも、地に足のついた確実な論文を書く研究者を目指してほしいですね。一緒に頑張りましょう。

(聞き手・構成 佐藤優子)

メッセージ

中世の日本と東アジアの関係について、一緒に研究してみませんか?

さいわい、小さい所帯の研究室なので、こまめに対応、親身の指導ができます。また、伝統ある本講座には、さまざまな文献や史料が備わっているので、幅広く学びたい人のニーズにも応じられます。私自身は室町・戦国期日本の国際関係史や文化交流史、14〜16世紀の東アジア海域史を勉強していますが、それ以外の時代・分野も歓迎です。

そもそも歴史学というのは、ああだこうだと思案しつつ、自分なりの論点を発見し、最善の仮説を目指して突き進む知的冒険に他なりません。そのためには、問題発見能力を涵養し、誰もが納得できる論拠を用意し、説得的な論の運びを心がけていく必要があります。自説に都合のよい素材ばかりを持ってきても、いずれは再検証にさらされ、反証を突きつけられて崩壊すること必至です。したがって、できる限り多くの関連史料を集め、複数の仮説を立てて、独りよがりではない学説を形成していくことが求められます。ときには、過去の自説を葬り去らねばならぬことさえあるのです。そうした身構え・心構えを、ともに学び、身につけていこう―というのが私の教育・研究方針の要諦だと言ってよいでしょう。

北大周辺は、首都圏などよりも遊ぶところが少ないので、しっかり落ち着いて勉強できます! 家賃も安く、交通至便、最近は雪も少なくて、札幌はとても住みやすいところですよ。

〈写真5〉NHK教育(Eテレ)の小学生向け番組「見える歴史」のために復元制作したもの(2009年7月段階)。このように復元モデル(仮説)の更新を繰り返し、「真実」(最善の仮説)を明らかにしていこうとするのが歴史学の営み。

研究活動

略歴

筑波大学附属高等学校卒、東京大学文学部卒、同大学院人文社会系研究科(日本文化研究専攻)修了、博士(文学)、独立行政法人国立博物館・九州国立博物館(設立準備室時代を含む)研究員を経て現職。

主要業績

所属学会

  • 史学会
  • 歴史学研究会
  • 歴史科学協議会
  • 日本史研究会
  • 北大史学会
  • 九州史学研究会
  • 古文書学会
  • 東方学会

教育活動

授業担当(文学部)

  • 日本史学概論
  • 日本史学
  • 日本史学演習

授業担当(文学院)

  • 総合社会情報論
  • 日本史学特殊講義
  • 日本中世近世史特別演習

授業担当(全学教育)

  • 一般教育演習(フレッシュマンセミナー)

おすすめの本

  • 村井章介『中世倭人伝』(岩波新書、1993年)
    「国境をまたぐ地域」や「マージナル・マン」といった概念を提示。知的興奮を誘う内容で、引用史料の訓読がまた奥深い。私の研究テーマを決定づけてくれた本です。
  • 苅谷剛彦『知的複眼思考法』(講談社+α文庫、2002年)
    「誰でも持っている創造力のスイッチ」という副題が示す通り、問題発見能力を開発 するためのコツを満載している。ぜひ一回は読んでみて欲しい。
  • 小坂井敏晶『増補 民族という虚構』(ちくま学芸文庫、2011年)
    民族同一性(ナショナル・アイデンティティ)の脱構築を図る刺激的な書物。本当に面白い。その斬新な発想や平明な語り口を、われわれ歴史学徒も見習うべきだと思う。
  • 村井章介『世界史のなかの戦国日本』(ちくま学芸文庫、2012年)
    16世紀の列島史を、世界史のなかに有機的に定置する快著。コシャマイン戦争・古琉球史・後期倭寇・朝鮮出兵(文禄・慶長役)など、実に多くのテーマを1冊に凝縮しており、お得感たっぷり! 文庫版解説は私(橋本)が執筆しています。

    北海道大学附属図書館Webサイト「本は脳を育てる」(北大教員による新入生への推薦図書)のコーナー
    →橋本 雄 先生 ご推薦の図書