内容紹介
明皇帝から「日本国王」に冊封された、歴代の室町将軍たち。
彼らは素直に中国の華夷秩序を受け入れたのか? 伝統的な日本の《中華意識》は本当に消え失せてしまったのか?
唐物に当時の《中華》イメージを探り、外交の現場から幕府の対外観をあぶり出す。言説・伝説の世界を逍遙し、文化史や美術史の成果とも切り結ぶ、まったく新しい対外関係史。
(版元Websiteより)
著者からのコメント
中世日本の国際意識について研究することが、昔からの夢でした。現代のエスノセントリズムを相対化するために是非とも必要だと思われるからです。ただ、あまりに抽象的な議論は難しいことから、より具体的で実証可能な分野を優先して、卒論以来、研究活動を行なってきました(それは前著『中世日本の国際関係』に一部結実)。
ところが、あるとき、転機が訪れました。博物館への就職です。具体的なモノ資料(作品)に触れることで、その作品に込められたさまざまな人や地域、時代の価値観を掘り下げていくことの重要性/可能性を思い知りました。個々の作品に累積している過去の情報には、私の知りたい事柄がたくさん詰まっていました。できる限り丁寧に、それらを掘り起こしていこう――。これが、本書を規定している根本思想と言えるような気が致します。
とはいえ、美術や文学などの他分野に首を突っ込んだ、半可通な議論ばかりで、今となっては恥ずかしい記述も少なくありません(中島楽章・伊藤幸司編『寧波と博多』汲古書院掲載の拙稿(故石井進先生へのオマージュとして会話体で書いてみました)に多少のフォローを示しています)。しかし、だからこその瑞々しい(?)問題提起も出来たのではないでしょうか。私は、少なくとも全学教育(教養教育)で、エスノセントリズムや人種主義の問題を必ず取り上げるようにしています。その題材として、本書の分析を衍用することもしばしばです。
ともあれ、本書なくして現在の自分自身の歩みはないと言えます。要するに本書は、自分にとって重要な通過点となった本なのです。
よろしければどこかで本書を繙き、忌憚のない御批判・御感想をお寄せ下さい。よろしくお願い致します。
外部リンク
〔出版社〕勉誠出版の紹介ページ
(正誤表もここからDownloadできます)