2011.03.31

中華幻想

唐物と外交の室町時代史
著者名:
橋本 雄
文学院・文学研究院教員:
橋本 雄 はしもと ゆう 教員ページ

内容紹介

明皇帝から「日本国王」に冊封された、歴代の室町将軍たち。
 
彼らは素直に中国の華夷秩序を受け入れたのか? 伝統的な日本の《中華意識》は本当に消え失せてしまったのか?
 
唐物に当時の《中華》イメージを探り、外交の現場から幕府の対外観をあぶり出す。言説・伝説の世界を逍遙し、文化史や美術史の成果とも切り結ぶ、まったく新しい対外関係史。
 
(版元Websiteより)

著者からのコメント

 中世日本の国際意識について研究することが、昔からの夢でした。現代のエスノセントリズムを相対化するために是非とも必要だと思われるからです。ただ、あまりに抽象的な議論は難しいことから、より具体的で実証可能な分野を優先して、卒論以来、研究活動を行なってきました(それは前著『中世日本の国際関係』に一部結実)。
 ところが、あるとき、転機が訪れました。博物館への就職です。具体的なモノ資料(作品)に触れることで、その作品に込められたさまざまな人や地域、時代の価値観を掘り下げていくことの重要性/可能性を思い知りました。個々の作品に累積している過去の情報には、私の知りたい事柄がたくさん詰まっていました。できる限り丁寧に、それらを掘り起こしていこう――。これが、本書を規定している根本思想と言えるような気が致します。
 とはいえ、美術や文学などの他分野に首を突っ込んだ、半可通な議論ばかりで、今となっては恥ずかしい記述も少なくありません(中島楽章・伊藤幸司編『寧波と博多』汲古書院掲載の拙稿(故石井進先生へのオマージュとして会話体で書いてみました)に多少のフォローを示しています)。しかし、だからこその瑞々しい(?)問題提起も出来たのではないでしょうか。私は、少なくとも全学教育(教養教育)で、エスノセントリズムや人種主義の問題を必ず取り上げるようにしています。その題材として、本書の分析を衍用することもしばしばです。
 ともあれ、本書なくして現在の自分自身の歩みはないと言えます。要するに本書は、自分にとって重要な通過点となった本なのです。
 よろしければどこかで本書を繙き、忌憚のない御批判・御感想をお寄せ下さい。よろしくお願い致します。

ISBN: 9784585220138
発行日: 2011.03.31
体裁: B6判 291ページ
定価: 本体価格2,800円+税
出版社: 勉誠出版
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

1 室町殿の“中華幻想”―足利義満・義持期を中心に
2 渡唐天神説話の源流と流行
3 皇帝へのあこがれ―室町殿コレクションと“皇帝の絵画”
4 大内氏の唐物贈与と遣明船
5 『善隣国宝記』箚記
6 永楽銭の史実と伝説
7 朝鮮国王使と室町幕府