佐野 勝彦

プロフィール

佐野 勝彦 准教授 / SANO Katsuhiko
研究内容

様相論理を中心とする非古典論理とその応用について研究している。知識・信念に関わるパズルの分析、疑問文の意味論、チューリングの思想、論理学の歴史にも関心がある。

研究分野
論理学(特に非古典論理、哲学的論理学)
キーワード
様相論理、ハイブリッド論理、非古典論理、チューリング、証明論
文学研究院 所属部門/分野/研究室
人文学部門/哲学宗教学分野/哲学倫理学研究室
文学院 担当専攻/講座/研究室
人文学専攻/哲学宗教学講座/哲学倫理学研究室
文学部 担当コース/研究室
人文科学科/哲学・文化学コース/哲学倫理学研究室
連絡先

研究室: 603
Email: v-sano*let.hokudai.ac.jp
(*を半角@に変えて入力ください)

研究生を希望される外国人留学生(日本在住者をふくむ)は、「研究生出願要項【外国人留学生】」に従って、定められた期間に応募してください。教員に直接メールを送信しても返信はありません。
関連リンク

Lab.letters

Lab.letters 研究室からのメッセージ
哲学倫理学研究室佐野 勝彦 准教授

□と◇の多彩な組み合わせで
世界を表現する様相論理

賢人アリストテレスから始まる論理学とは、世界を正しくかつあますところなく記述するために、「特定の内容に拠らずつねに成立する論理学的真理」を追究する学問のことです。さまざまな先人たちが独自のアプローチで、世界をどう表現するかという取り組みがいのある難題に挑んできました。

そのなかで私は、「pは可能的(◇p)」あるいは「pは必然的(□p)」といった可能性や必然性を取り扱う様相論理を切り口にし、さらに□や◇で表現する形式化の多次元的な組み合わせの研究に取り組んでいます。時間や空間、可能性、さらにはエージェントなどの様々な構造の軸をミックスさせることで表現できる世界がより豊かになっていく。そのロジックをSNSのFacebookなどに照らし合わせるとどうなるのか等の応用を進めています。

エニグマ解読で知られるイギリスの論理学者A.チューリングの論文を翻訳・解説した共著も発表。
「我々はカレンダーや手帳の情報をもとに将来の予定を把握している」という事実を、 様相論理をさらに拡張したハイブリッド論理に基づき形式化・正当化すると、こう表現される。

「壊れない形式化」を目標に
手を動かす習慣をつける

北海道大学では、学部と大学院の双方で論理学の講義が毎年定期的に開講されることからも、論理学研究を重要視している姿勢が感じられ、研究者としては大変心強い環境が整っています。

堅牢なロジックを積み上げていくには、実際に自分の手を動かして記述する訓練が不可欠です。学生の皆さんには、記号と意味が破綻なくつながっているかを、書く行為を通して自分の頭の中で確認する習慣を身につけてほしいと考えています。哲学倫理学研究室の元同僚の千葉惠先生がおっしゃっていた「壊れないセンテンスをつくる(ことが大事)」という言葉を私なりにお借りするとしたら、今後は「壊れない形式化を構築すること」を大きな柱に据え、皆さんの学びを後押ししていきたいです。

(聞き手・構成 佐藤優子)

メッセージ

一つ一つのステップは当たり前でも、全体としての推論が驚くべきものになる。これは、シャーロックホームズが推理について述べていたことですが、論理学の定義として挙げる人もいます。逆にいうと、全体としての驚くべき推論を、それ以上遡れない当たり前のステップへと分解していくのも、論理学の仕事だ、とも言えます。この点で、論理学では自明なもの(当たり前とみなされるもの)が限りなく少なく、それが魅力の一つにもなっています。また、当たり前の推論を一つ一つ積み重ねていく営為が、コンピュータにつながる発想、さらには、コンピュータで解けない問題の存在をも明らかにしてきました。

こういった論理学を勉強していく際には、手を動かして証明を書いたり、証明できないことには反例を作ってみたりするのが必要不可欠です。研究室のゼミでは、どんな風に手を動かして証明を書いたらよいのか、反例を構成したらよいのか、また、証明や反例構成のアイデアをどのように他人にわかりやすく説明したらよいのか、という点について、見本を示しながら丁寧に指導しています。論理学の研究成果を発表するには、英語で論文を書くのが必須です。修士課程では国際学会発表を目指して、英語での論文執筆スキルも磨いてもらっています。物事の理由を突き詰めて考えたい人、手を動かしながら一歩一歩丁寧に思考を進めたい人は、ぜひ論理学の門を叩いてみてください。

研究活動

略歴

京都大学文学部卒、同大学院文学研究科 現代文化学専攻 科学哲学科学史専修 研究指導認定退学、同大学院博士号(文学)。学術振興会特別研究員、北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 助教を経て、現職。

主要業績

  • 菊池 誠編・佐野勝彦・倉橋 太志・薄葉 季路・黒川 英徳・菊池 誠 著 『数学における証明と真理―様相論理と数学基礎論―』共立出版、2016年.
  • Katsuhiko Sano and Jonni Virtema `Characterizing Frame Definability in Team Semantics via The Universal Modality’, Logic, Language, Information, and Computation, Lecture Notes in Computer Science, Volume 9160, pp. 140-155, 2015.
  • Katsuhiko Sano, `Avoiding Impossibility Theorems in Radical Inquisitive Semantics’, Shier Ju, Hu Liu and Hiroakira Ono, editors, Modality, Semantics and Interpretations, Logic in Asia: Studia Logica Library, pp.107-120, 2015. (Post-proceedings of The Second Asian Workshop on Philosophical Logic)
  • Minghui Ma, Katsuhiko Sano, Francois Schwarzentruber and Fernando R. Velazquez-Quesada, `Tableaux for non-normal public announcement logic’, Logic and Its Applications (ICLA 2015), Lecture Notes in Computer Science, Vol.8923, pp.132-145, 2015.
  • 伊藤和行編,佐野勝彦・杉本舞 訳・解説『コンピュータ理論の起源 [第一巻] チューリング』近代科学社, 2014年.
  • Tadeusz Litak, Dirk Pattinson, and Katsuhiko Sano, `Coalgebraic Predicate Logic: Equipollence Results and Proof Theory’, Logic, Language, and Computation, 9th International Tbilisi Symposium on Logic, Language, and Computation, TbiLLC 2011, Kutaisi, Georgia, September 26-30, 2011, Revised Selected Papers, Lecture Notes in Computer Science, Vol.7758, pp.257-276, 2013. 
  • Katsuhiko Sano and Satoshi Tojo, `Dynamic Epistemic Logic for Channel-Based Agent Communication’ , Logic and Its Applications, Lecture Notes in Computer Science, Vol.7750, pp.109-120, 2013.
  • Katsuhiko Sano and Minghui Ma, `Goldblatt-Thomason-style Theorems for Graded Modal Language’, Proceedings of Advances in Modal Logic 2010 (AiML 2010), College Publications, London, pp.330-349, 2010.
  • Tadeusz Litak, Dirk Pattinson, Katsuhiko Sano and Lutz Schroeder, `Coalgebraic Predicate Logic’, ICALP (2), Lecture Notes in Computer Science, Volume 7392/2012, pp.299-311, 2012.
  • Katsuhiko Sano, `Axiomatizing Hybrid Product: How Can We Reason Many-dimensionally in Hybrid Logic?’, Journal of Applied Logic, Vol.8(4), pp.459-474, 2010.
  • Katsuhiko Sano, `Hybrid Counterfactual Logic: David Lewis Meets Arthur Prior Again’, Journal of Logic, Language and Information, Vol.18(4), pp.515-539, 2009.

所属学会

  • 日本科学哲学会
  • 科学基礎論学会
  • 応用哲学会
  • 日本数学会

教育活動

授業担当(文学部)

  • 哲学
  • 論理学
  • 哲学演習

授業担当(文学院)

  • 哲学特殊講義
  • 論理学特別演習

授業担当(全学教育)

  • 外国語演習