吉開 将人

プロフィール

吉開 将人 教授 / YOSHIKAI Masato
研究内容

多民族から構成される近代国家として中国の統合がいかにしてなされたかという関心から20世紀中国史について、中国世界を外と分けるものは何かという関心から西南中国と嶺南地域について、そして学者たちはどのように自国史を認識してきたのかという関心から中国近現代学術史について、それぞれ研究を進めています。

研究分野
中国近現代史、南中国、民族問題、学術史
キーワード
中国、歴史、民族、学術史
文学研究院 所属部門/分野/研究室
人文学部門/歴史学分野/東洋史学研究室
文学院 担当専攻/講座/研究室
人文学専攻/歴史学講座/東洋史学研究室
文学部 担当コース/研究室
人文科学科/歴史学・人類学コース/東洋史学研究室
連絡先

研究室: 303
Email: yoshikai*let.hokudai.ac.jp 
(*を半角@に変えて入力ください)

研究生を希望される外国人留学生(日本在住者をふくむ)は、「研究生出願要項【外国人留学生】」に従って、定められた期間に応募してください。教員に直接メールを送信しても返信はありません。
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Lab.letters

Lab.letters 研究室からのメッセージ
東洋史学研究室吉開 将人 教授

「レジスタンス」への眼差し
中国問題を理解する鍵は過去にあり

私の学問的関心は、大学3年生だった1989年に、チベット人の蜂起と当局による鎮圧を現地で旅行者として偶然目撃し、また戒厳令下のラサを離れて帰国した後にも、北京で始まった民主化運動が厳しく平定されていった過程を報道から知って、中華人民共和国という国家から大きな衝撃を受けたことに由来しています。

以来、中国に対しては、熱い歴史的ロマンの対象としてではなく、感情を抑えて冷徹に観察すべき対象として接し続けてきました。国家が形作られる中で社会にどのような矛盾が生じ、それをコントロールする国家制度や権力がいかにして形成されたのか、異なる地域がどのように包摂・排除されて今日の中国の枠組みが形作られたのか、そして人々は「過去」の歴史をいかに「現在」に結び付けてきたのか。これが私の30年来の関心であり、各地を歩き、また様々な研究分野に身を投じることで、多くの中国人から話を聞き、研究者から学び、そして数々の貴重な文献や史料を集めてきました。こうしたものを基礎として、最近ようやく長年の疑問に対し、自分なりの理解を得た感があります。

以上のような関心と研究過程を語ると、今の中国を研究すれば十分だろうと思う人が多いことでしょう。しかし実は今の中国を生み出しているのは古代から続いてきた中国特有の歴史で、「現在」もまたその歴史的変化の中にあります。「過去」と「現在」をつなぐのは歴史学です。過去の中国に関心があるが今日の中国についても知りたい、あるいは今日の中国に関心があるので過去の中国について知りたいという人に、是非とも来て欲しいと思います。

新旧の中国政治空間─北京紫禁城と人民大会堂
南越王趙佗の銅像と(河北省石家荘)

中国をいかに読み解くか
北海道の視点が大いなる刺激に

中国という国やそこで暮らす人々の思考は、表面的に接するだけでは理解不可能と思われがちです。しかし”わからない”と言って距離を置くのではなく、むしろ取り組みがいのある”謎”として、その本質に深く迫っていく楽しさが、実はそこに秘められているのです。

中央から離れた北海道は、研究者の思考を縦横無尽に膨らませてくれる面白い場所。私自身、南中国の歴史や中国民族論について考えるうえで、本学で盛んな北方史研究を比較の視座として加えることができ、思いがけない収穫を得ました。これから北海道で中国史を学ぶ皆さんにも、きっと刺激的な新しい成果をもたらしてくれると確信しています。

研究活動

略歴

愛知県生。1990年東京大学卒。1995年東京大学大学院博士課程中退。同年東京大学東洋文化研究所助手。2001年博士(文学)。同年日本学術振興会特別研究員。2003年北海道大学大学院文学研究科助教授。2007年同准教授。2016年同教授。

主要業績

  • 「現代中国における遺跡・神話をめぐる政治力学─『涿鹿』の歴史は誰のものか」『歴史学研究』998(績文堂出版、2020年)
  • 「溥儀の悲憤─『宣統十六年の紫禁城』」鈴木幸人編『かなしむ人間─人文学で問う生き方』(北海道大学出版会、2019年)
  • 「楊砥中と民国晩期の西南中国─忘れられた西南民族の『領袖』」『北大史学』57(北大史学会、2017年)
  • 「『涿鹿』の歴史は誰のものか─『炎黄』顕彰問題と二十世紀末中国民族主義の諸相」『北海道大学文学研究科紀要』150(同研究科、2016年)
  • 「『羈縻』政策と二十世紀中国」松本ますみ編『1920年代から1930年代中国周縁エスニシティの民族覚醒と教育に関する比較研究』(日本学術振興会科学研究費基盤研究(B)成果報告書、室蘭工業大学、2015年)
    ・「宣統十六年の清室古物問題」『北海道大学文学研究科紀要』144(同研究科、2014年)
    ・「苗族史の近代(7)」『北海道大学文学研究科紀要』134(同研究科、2011年)
    ・「漢初の封建と長沙国」『日本秦漢史学会会報』9(同学会、2008年)
    ・『中華民族の多元一体構造』共訳(風響社、2008年)
    ・「東亜考古学と近代中国」『岩波講座「帝国」日本の学知』3(岩波書店、2006年)
    ・「馬援銅柱をめぐる諸問題」『ベトナムの社会と文化』3(風響社、2001年)

所属学会

  • 中国社会文化学会
  • 北大史学会
  • 日本秦漢史学会
  • 北海道大学東洋史談話会
  • 史学会

教育活動

授業担当(文学部)

  • 東洋史学概論
  • 東洋史学
  • 東洋史学演習

授業担当(文学院)

  • 東洋史学特殊講義
  • 東洋史学特別演習

授業担当(全学教育)

  • 歴史の視座

おすすめの本

  • 『ある歴史家の生い立ち』顧頡剛(岩波文庫)
    中国人学者が激動の近代史の中で新たな古代史像を模索し続けた半生について語った自伝的著作。