竹澤 正哲

プロフィール

竹澤 正哲 准教授 / TAKEZAWA Masanori
研究内容

社会規範の進化、文化進化、規範と文化を支える認知メカニズムの適応的基盤

研究分野
社会心理学、適応的意思決定、文化進化論
キーワード
社会心理学、協力、社会的学習、遺伝子と文化の共進化、適応論的アプローチ
文学研究院 所属部門/分野/研究室
人間科学部門/行動科学分野/行動科学研究室
文学院 担当専攻/講座/研究室
人間科学専攻/行動科学講座/行動科学研究室
文学部 担当コース/研究室
人文科学科/人間科学コース/行動科学研究室
連絡先

研究室: E411
Email: m.takezawa*let.hokudai.ac.jp
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関連リンク

Lab.letters

Lab.letters 研究室からのメッセージ
行動科学研究室竹澤 正哲 准教授

ヒトだけが持つ規範と文化
進化の原理から人間社会を解体

幼稚園の”ボスママ”に悩まされていたあるお母さんたちの話です。なぜ内心望んでいないにも関わらずみんなボスママに従うべきという規範がお母さんたちの集団の中に生まれてしまったのか。一見ワイドショー的なこの問題の根底には〈我々一人一人が損得の自己利益に基づいて選び取った行動の結果として社会・文化が出来上がる〉という人間社会の構造が隠れています。

社会規範が維持される上で〈罰〉は非常に重要な役割を担っていますが、自己中心的なふるまいが罰せられる国もあれば、逆に集団のための自己犠牲をとがめだてする国もあり、是とされる規範は決して一つではありません。そもそもなぜ、他人が規範に従っているかを気にかけ、規範を破った人にコストをかけてまで罰を与えようとするのかもよく分かっていません。こうした社会の中に潜む規範が生まれてくる仕組みを実験や数理モデルを用いて理論と実証の両方からアプローチしています。

技術が作り手から作り手へと文化的に伝達されていく「累積的文化進化」を実験室内に再現した実験(下記〈メッセージ〉参照)。
"スパゲッティと粘土で塔を作る"という課題だが、同じ作り手が繰り返し挑戦する場合と、作り手から作り手へと技術が伝達されていく場合とでは、出来上がる塔は全く異なる構造を持つようになる。

国際的にも際立つ階層的な視点
同時代の多彩な研究者も注目

私の研究の背後に流れているのは〈人間の心は進化の産物であり、その人間の心が社会・文化を作っていく〉という階層的な視点です。こうした視点から世界を理解しようという取り組みは、北大行動システム科学講座の存在を国際的にも際立たせている大きな特徴です。かくいう私もかつてその視点に魅せられて入学した一人であり、現在も毎週本講座の全教員と大学院生が集う院ゼミで大いに刺激をもらっています。

進化というフィルターで人間の心や社会を研究していくという潮流は、リアルタイムにかつ猛烈な勢いで動いています。関心を寄せる研究者も生物学者や人類学者、哲学者、数学者など実に多彩。あらゆる領域の研究がひとつにまとまっていく感覚を味わえる、非常にエキサイティングなフィールドです。

(聞き手・構成 佐藤優子)

メッセージ

人間は長年に渡る進化の歴史の結果、他の生物には見られない特徴を獲得するに至りました。その中でも重要なのが社会規範と文化です。人間の社会にはさまざまな規範が存在し、それに従う事が当然のことと期待されています。また、人間は一生を通じて、多くの知識を他者から学びます。科学や言語などの知識体系は、世代から世代へと伝達される中で徐々に変化を遂げ、やがて一人の人間が単独では生み出し得ない複雑な構造を持つようになります。

私の研究の目的は、規範と文化という、人間が持つ2つの大きな特徴が進化のプロセスからどのように立ち上がってきたかを解明することです。ここでは文化について考えてみましょう。私たちは、世界には多様な文化があることを知っています。でも、我々が知っている文化の多様性はどのようなメカニズムを経て生み出されるのでしょうか?進化というコンテクストからみた場合、DNAという遺伝的な情報伝達経路ではなく、社会的な経路を経て伝達される情報の集合が文化です。つまり文化の多様性とは情報が世代を経て人から人へと伝達される中から生まれてくるのだと考えられます。最近は「世代間の伝達」という過程から、どのような構造を持つ技術や知識体系が生まれてくるのか理論的・実証的に研究しています(上記画像参照)。人間の社会性の本質を理論と実証の双方からアプローチするエキサイティングな研究に関心がある人は、ぜひ研究室のドアを叩いてください。

研究活動

略歴

北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(行動科学)取得。マックス・プランク人間発達研究所ポスドクフェロー、同リサーチサイエンティスト、ティルブルク大学社会科学部アシスタント・プロフェッサー、上智大学総合人間科学部准教授を経て現職。

主要業績

  • サミュエル・ボウルズ、ハーバート・ギンタス(著)竹澤正哲(監訳)、大槻久、高橋伸幸、稲葉美里、波多野礼佳(訳)協力する種(2017)NTT出版
  • 北村 英哉・内田 由紀子【編】、竹澤正哲(分担執筆:15章)社会心理学概論(2016)ナカニシヤ出版
  • アレックス・メスーディ(著)野中香方子(訳)、竹澤正哲(解説)文化進化論(2016)NTT出版
  • Tane, K. & Takezawa, M. (2011). Perception of human face does not induce cooperation in darkness. Letters on Evolutionary Behavioral Science, 2, 24-27.
  • Takezawa, M. & Price, M. E. (2010). Revisiting “the evolution of reciprocity in sizable groups”: Continuous reciprocity in the repeated n-person prisoner’s dilemma. Journal of Theoretical Biology, 264, 188-196.
  • Garcia-Retamero, R., Takezawa, M., & Gigerenzer, G. (2009). Does imitation benefit cue order learning? Experimental Psychology, 56, 307-320.
  • Johnson, D. D. P., Price, M. E., & Takezawa, M. (2008). Renaissance of the individual: Reciprocity, positive assortment, and the puzzle of human cooperation. In Crawford, C., & Krebs, D. (Eds.), Foundations of evolutionary psychology: Ideas, issues, applications and findings, (pp. 331-352). Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum
  • Takezawa, M., Gummerum, M., & Keller. M. (2006). A stage for the rational tail of the emotional dog: Roles of moral reasoning in group decision making. Journal of Economic Psychology, 27, 117-139.

教育活動

おすすめの本

  • Not by Genes Alone: How Culture Transformed Human Evolution. P. J. Richerson & R. Boyd. (2004). University of Chicago Press.
    現時点では進化と文化の関係を体系的に理解するためには英語で文献を読むしかありません。英語は道具です。使えば使うほど上手に使えるようになります。頑張ってください!