眞鍋 智裕

プロフィール

眞鍋 智裕 准教授 / MANABE Tomohiro
研究内容

インド哲学諸学派のうち、アドヴァイタ・ヴェーダーンタ学派(不二一元論学派)の思想(史)研究を行っています。特に、16-18世紀にみられる不二一元論学派の積極的なバクティ思想導入という事象に注目し、8世紀の不二一元論学派誕生から現代スマールタ派に至るまでの不二一元論教学史の構築を目指しています。

研究分野
インド哲学、インド哲学史
キーワード
ヴェーダーンタ学派、不二一元論、ヴィシュヌ教、バクティ、梵我一如
文学研究院 所属部門/分野/研究室
人文学部門/哲学宗教学分野/宗教学インド哲学研究室
文学院 担当専攻/講座/研究室
人文学専攻/哲学宗教学講座/宗教学インド哲学研究室
文学部 担当コース/研究室
人文科学科/哲学・文化学コース/宗教学インド哲学研究室
連絡先

研究室: 600
TEL: 011-706-3065
Email: t.manabe*let.hokudai.ac.jp
(*を半角@に変えて入力ください)

研究生を希望される外国人留学生(日本在住者をふくむ)は、「研究生出願要項【外国人留学生】」に従って、定められた期間に応募してください。教員に直接メールを送信しても返信はありません。
関連リンク

Lab.letters

Lab.letters 研究室からのメッセージ
宗教学インド哲学研究室眞鍋 智裕 准教授

人生の天秤がつねに傾く
インド哲学の吸引力

インド哲学や仏教研究は、皆さんが「知っている」と思う領域や理解を軽く超えたところにその魅力が広がっています。「梵我一如とはアートマンとブラフマンが“同じ”であること」と習っても、実際のところは頭の中が疑問符で一杯になって当たり前。サンスクリット語で「一」を意味するエーカを「同じ」と訳しても、その「同じ」は「同一」か、それとも「同質」の意味なのかで学派が分かれるほどの議論が続いています。私自身、中学のときから惹かれていたバクティ思想研究の道に進み、途中幾度も人生の帰路がありましたが、研究と他のものを天秤にかけたときにいつもこちらに天秤が傾く、それくらいの面白い世界があるということを皆さんに伝えていきたいです。

世界遺産にもなっているネパール最大のヒンドゥー教寺院パシュパティナート。バグマティ川はガンジス川に合流している。
カトマンズ盆地に写本調査に行った時の古都パタンでの一枚。実際に写本を見せてもらえるかどうかは現地に行ってみないとわからないことも多い。

眠る写本も徐々にデジタル化
「読みたい」関心を大切に

現在の研究テーマであるアドヴァイタ・ヴェーダーンタ学派は複雑多岐なインド哲学史の中でも“保守派の中の革新派”のような位置づけにありますが、私が大学院時代には仏教論理学も修めており、皆さんが「これを読みたい!」と思うテキストがあれば、喜んで歓迎します。北海道大学は宗教学や仏教学など幅広い分野の研究者が席を連ねており、隣接分野に触発されることもきっとプラスにはたらくはず。また、国内のインド哲学研究界は次代の成長を願って横の交流を大切にしているため、他大学との情報共有も可能です。近年はインド各地に眠る写本のデジタルアーカイブ化も進んでいます。インド哲学研究はこれからが本番。皆さんの力で拓いていける学問です。

(聞き手・構成 佐藤優子)

メッセージ

インドにおいては、古代のヴェーダ時代から現代ヒンドゥー教にいたるまで、サンスクリット語文献を中心にバラモン・ヒンドゥー教文化が連綿と受け継がれています。またヒンドゥー教は、インド人の海外進出によって、現在、世界宗教へと変貌しつつあります。このような情勢のなかで、バラモン・ヒンドゥー教研究は、宗教・思想研究の分野においてその重要性が高まっています。

バラモン・ヒンドゥー教研究と一言でいっても、その領域は哲学思想、宗教儀礼、文学、政治、法学、医学、数学などと広大です。また3千年超に渡る長い歴史を持つこと、インド亜大陸各地の地域的特殊性があることなど、その全体像を把握するのは困難です。さらに、まだ写本のまま伝承されており、研究が着手されていない文献も数多く存在し、バラモン・ヒンドゥー教の全体像把握の難しさに輪をかけています。しかしこのことは、各々の興味関心によって新たな研究の開拓が容易に行えるということも意味しています。

悠久のインドに触れてみたい学生でも、新たな研究の開拓意欲のある学生でも、バラモン・ヒンドゥー教文化に興味・関心があれば、宗教学インド哲学研究室を訪れてみてください。

研究活動

略歴

早稲田大学第一文学部東洋哲学コース卒業、早稲田大学大学院文学研究科東洋哲学専攻(修士課程)修了、早稲田大学大学院文学研究科東洋哲学コース(博士後期課程)修了、博士(文学)。その後、日本学術振興会特別研究員PD(九州大学)、早稲田大学高等研究所講師、早稲田大学高等研究所招聘研究員。2021年4月より現職。

主要業績

  • 「アドヴァイタ學派における主宰神觀の變容――マドゥスーダナ・サラスヴァティーの「アートマンの四狀態説」」(『東洋の思想と宗教』34)
  • 「アドヴァイタ的ヴィユーハ説の形成過程について」(『久遠――研究論文集』8)
  • 「マドゥスーダナ・サラスヴァティーの『バーガヴァタ註』における『バーガヴァタ・プラーナ』の目的とkāṇḍatraya」(『南アジア古典学』15)
  • 「バクティの実践におけるśāstraの必要性」(『早稲田大学高等研究所紀要』13)
  • 「マドゥスーダナ・サラスヴァティーのBhāgavata Purāṇaの受容方法――『バーガヴァタ註』概観」(『論叢アジアの文化と思想』28)

所属学会

  • 日本印度学仏教学会
  • 日本仏教学会
  • 仏教思想学会
  • 印度学宗教学会
  • インド思想史学会

教育活動

授業担当(文学部)

  • インド哲学史概説
  • インド古典語
  • インド哲学仏教学演習

授業担当(文学院)

  • インド哲学仏教学特別演習
  • インド哲学仏教学特殊講義

おすすめの本

  • 『新装版 インド哲学思想』1-5、中村元、岩波書店、2012.(初版は1950-1989)
    ウパニシャッドから不二一元論学派開祖シャンカラまでの初期ヴェーダーンタ哲学史を描写した画期的著作。全5巻。
  • 『アドヴァイタ認識論の研究』佐藤裕之、山喜房仏書林、2005.
    不二一元論学派で唯一の認識論の著作『ヴェーダーンタ・パリバーシャー』を日本語で読める著作。
  • 『インド思想史』早島鏡正他著、東京大学出版会、1982.
    古代から近現代までのインド思想の流れを、簡潔に、しかもバランスよく記述したインド思想史の入門書。