プロフィール
- 研究内容
社会環境の性質と人間の心理・行動との関連、集団過程の性質の文化差
- 研究分野
- 社会心理学、文化心理学、社会生態心理学
- キーワード
- 文化、社会環境、適応、集団、対人関係、自己
- 文学研究院 所属部門/分野/研究室
- 人間科学部門/行動科学分野/行動科学研究室
- 文学院 担当専攻/講座/研究室
- 人間科学専攻/行動科学講座/行動科学研究室
- 文学部 担当コース/研究室
- 人文科学科/人間科学コース/行動科学研究室
- 連絡先
研究室: E棟405
TEL: 011-706-3056
FAX: 011-706-3056
Email: myuki*let.hokudai.ac.jp
(*を半角@に変えて入力ください)研究生を希望される外国人留学生(日本在住者をふくむ)は、「研究生出願要項【外国人留学生】」に従って、定められた期間に応募してください。教員に直接メールを送信しても返信はありません。- 関連リンク
Lab.letters
心の多様性はどこから生じる?
社会の性質の違いに注目した分析
異なる国、異なる地域、異なる学校や業種などの間で、そこに暮らしている人々の心のあり方がしばしば異なるのはなぜでしょうか。私の研究ラボでは、人の心の多様性が生まれる原因を、それぞれの社会の性質の違いに求める「社会生態心理学」に基づく先端的な研究を進めています。現在特に注目しているのが、関係流動性と呼ばれる社会的な要因の効果です。対人関係を自由に選び替えられる欧米型の社会と、対人関係が固定的なアジア型の社会では、人々の心理はどのように異なってくるのでしょうか(図1)。また、当ラボがこれまでに発見した新たな心の多様性として、集団行動原理の文化差(図2)や、表情知覚の文化差(相手の目を見るか口を見るか)などがあります。
国際色豊かな顔ぶれとともに
刺激に満ちた共同研究
研究で国際比較を多用することもあり、私の研究室にはこれまでアメリカやニュージーランド、英国、中国、クロアチアを出身とする大学院生やポスドク研究者など、国際色豊かな顔ぶれが所属してきました。研究に対してはチームで取り組む共同研究のスタイルをとっており、そこから各自が関心を持つ切り口や方法論で自分の研究テーマを掘り下げていきます。
指導で重要視するのは、国際レベルで競争できる研究者を育てること。正確かつ簡潔に伝えるコミュニケーション能力の育成を大切にしています。行動科学研究室ではラボ間の垣根が低く、全ラボが一同に会する共同ゼミでは、教員同士の熱い議論も珍しくありません。研究の糧となる刺激に満ちた環境で皆さんを待っています。
メッセージ
私の研究ラボでは、人間の心理や行動に対して、周囲の人たちとの関係性や社会の性質がどのように影響するかを検討しています。これを分析するための理論的な切り口として、「社会環境に対する適応」をキーワードとする社会生態学的アプローチを採用しています。実証の方法として、国際比較調査、地域間比較調査、実験研究などを行っています。
現在特に注目しているのは、関係流動性 (relational mobility) と呼ばれる社会変数の影響です。対人関係や所属集団を自らの意志や好みによって選択できる関係流動性の高い社会(例:北米)と、対人関係や所属集団が一旦決まると、それを変更することが困難になる関係流動性の低い社会(例:日本)では、それぞれどのような心理や行動を示すことが、そこで暮らしていく上で有利になるでしょうか。この観点を用いると、従来の比較文化研究で見いだされてきた様々な心理・行動の文化差を、よりシンプルな原理で説明できるようになります。
たくさんの人々の間の相互作用を通じて生み出される対人関係や社会のあり方が、ひるがえって個々人の心理や行動を規定する。この「超社会的動物」としての人間の本性を解明するための研究プロジェクトに、ぜひ皆さんも一緒に参加してみませんか?
研究活動
略歴
埼玉県立浦和高校卒、一橋大学社会学部卒、東京大学大学院人文社会系研究科(社会心理学専攻)修士課程・博士課程修了、博士(社会心理学)、日本学術振興会特別研究員、北海道大学文学部講師、准教授を経て現職
主要業績
- 山本翔子・結城雅樹 (2019). トロッコ問題への反応の文化差はどこから来るのか?関係流動性と評判期待の役割に関する国際比較研究. 社会心理学研究 35(2) 61-71. (日本社会心理学会2020年度優秀論文賞受賞論文)
- Thomson, R., Yuki, M., Talhelm, T., Schug, J., Kito, M., Ayanian, A. H., . . . Visserman, M. L. (2018). Relational mobility predicts social behaviors in 39 countries and is tied to historical farming and threat. Proceedings of the National Academy of Sciences. doi:10.1073/pnas.1713191115
- Yamada, J., Kito, M., & Yuki, M. (2017). Passion, relational mobility, and proof of commitment: A comparative Socio–Ecological Analysis of an Adaptive Emotion in a Sexual Market. Evolutionary Psychology, 15(4), 1474704917746056. doi:10.1177/1474704917746056
- Kito, M., Yuki, M., & Thomson, R. (2017). Relational mobility and close relationships: A socioecological approach to explain cross-cultural differences. Personal Relationships, 24(1), 114–130. doi: 10.1111/pere.12174.
- 山田順子・鬼頭美江・結城雅樹(2015). 友人・恋愛関係における関係流動性と親密性-日加比較による検討- 実験社会心理学研究 55(1) 18-27(日本グループ・ダイナミックス学会2015年度優秀論文賞受賞論文)
- Yuki, M., & Brewer, M.B. (Eds.) (2014). Culture and group processes. New York, NY: Oxford University Press.
- Yuki, M. & Schug, J. (2012). Relational mobility: A socio-ecological approach to personal relationships. In O. Gillath, G.E. Adams, & A.D. Kunkel (Eds.), Relationship science: Integrating evolutionary, neuroscience, and sociocultural approaches (pp. 137-152). Washington D.C.: American Psychological Association.
- Yuki, M., Maddux, W.W. & Masuda, T. (2007). Are the windows to the soul the same in the East and West? Cultural differences in using the eyes and mouth as cues to recognize emotions in Japan and the United States. Journal of Experimental Social Psychology, 43, 303-311.
- Brewer, M. B., & Yuki, M. (2007). Culture and social identity. In S. Kitayama, & D. Cohen (Eds.), Handbook of cultural psychology (pp. 307-322). New York: Guilford.
- 金児曉嗣・結城雅樹(編著) 2005 『文化行動の社会心理学』 北大路書房.
- Yuki, M. (2003). Intergroup comparison versus intragroup relationships: A cross-cultural examination of social identity theory in North American and East Asian cultural contexts. Social Psychology Quarterly, 66, 166-183.
受賞
- 2022年 Outstanding Achievement Award for Advancing Cultural Psychology, Advances in Cultural Psychology Preconference, Society for Personality and Social Psychology.
- 2020年 日本社会心理学会2020年度優秀論文賞
- 2016年 日本グループダイナミックス学会2015年度優秀論文賞
- 平成27年度北海道大学教育総長賞・研究総長賞
- 2014年 Society for Personality and Social Psychology学会フェロー
- 2012年 日本心理学会国際賞奨励賞
- 2009年 Society of Experimental Social Psychology学会 フェロー
所属学会
- Asian Association of Social Psychology
- Society of Experimental Social Psychology
- Society for Personality and Social Psychology
- Association for Psychological Science
- 日本心理学会
- 日本社会心理学会
- 日本グループダイナミックス学会
- 人間行動進化学会
- 北海道心理学会
教育活動
授業担当(文学部)
- 行動科学
- 認知科学
- 行動科学実験実習
- 行動科学特殊演習
- 行動科学研究法
授業担当(文学院)
- 多文化共生論
- 行動科学特殊講義
- 行動科学特別演習
おすすめの本
- 『名誉と暴力 ― アメリカ南部の文化と心理』 R.E.ニスベット&D.コーエン(著) 石井敬子・結城雅樹(編訳)(北大路書房)
米南部人はなぜ「キレる」のか?その必然性を、心と社会の関係から解き明かす。多彩な実証法もCool!