丹菊 逸治

プロフィール

丹菊 逸治 准教授 / TANGIKU Itsuji
研究内容

アイヌ語(北海道方言・樺太方言)およびアイヌ語文学、特にアイヌ口承文学(口承文芸)研究。および、サハリン島で長年アイヌ民族と隣接してきた、ニヴフ民族の言語(ニヴフ語サハリン方言)と口承文学の研究をしています。

研究分野
口承文芸論、アイヌ語、ニヴフ語
キーワード
アイヌ、ニヴフ、言語、口承文芸、口承文学
文学院 担当専攻/講座/研究室
人文学専攻/アイヌ・先住民学講座/アイヌ・先住民学研究室
関連リンク

Lab.letters

Lab.letters 研究室からのメッセージ
アイヌ・先住民学研究室丹菊 逸治 准教授

壮大なアイヌ叙事詩に見出す
個人芸術の多様性

アイヌ民族・ニヴフ民族の口承文芸の一つである叙事詩は、かつて仕事後の夕方の集まりなどで朗唱で語り継がれてきた壮大な長編物語。主人公の冒険譚や荒唐無稽な戦いを描いたものとして知られていますが、これを文学作品として丁寧に見ていくと、実際は先人から受け継ぐ物語を共有しながらも話し手独自の演出や語り口が加わった個人芸術であり、落語や講談のような豊かな多様性を持っていることがわかります。

アイヌ叙事詩の歴史・言語学的な研究はこれまでにもありましたが、こうした文学研究の視座は北海道大学ならではの新しい試みです。一語一語を読み解きながら語り手が込めたさまざまな思いを発見し、他の文化的事象にも関連性を見出していく研究の広がりを大切にしています。

ニヴフ民族が使う白樺の皮を折って作られた水桶。アイヌやニヴフの刺繍等の模様も叙事詩同様、大枠のルールを守りつつ細部の表現は個人の創作芸術であり、他人の作品のたんなるコピーは許されない。
ニヴフ口承文芸の名手だった故タチヤーナ・ウリタさん(手前)と、民族楽器カルキ゜を持つ故アントニーナ・シカルイギナさん(後ろ)。2001年チルウンヴド村マス祭にて。

研究の一人歩きを防ぐ
脱植民地化思想

北海道大学アイヌ・先住民研究センターにいる我々がこの先も最重要視したいキーワードは、「脱植民地化」です。マイノリティーであるアイヌ・先住民の歴史や言語を正面からとらえ、マジョリティーとマイノリティーが未来につながる関係を構築するためにも研究者が次代の皆さんに伝えられることをしっかりと手渡していく、ひいてはそれが二度と繰り返してはならない“学問の暴走”の抑止につながるのではないかと思っています。

アイヌ文化の研究は、いまを生きるアイヌ社会とつながりを持つことも非常に重要であり、センターが持つ幾つもの接点を活用できるのは我々の大きな強みです。今後は話者の協力を仰ぎながら、アイヌ語研究者の育成にも力を入れていきたいです。

(聞き手・構成 佐藤優子)

メッセージ

当研究室所属教員の研究分野はさまざまですが、いずれも理論・文献調査・フィールドワーク(現場)の3つの要素をうまく組み合わせ、社会との関わりを忘れずに自分の研究を作り上げていくことが重要です。また、研究倫理の遵守が強く要請されます。言語学・口承文芸論も例外ではありません。先住民族と言語学・口承文芸論(それが誰の手によって行われるにせよ)は長年の協力関係・緊張関係にあり、学問が社会といかに関わっていくかという問題の最前線でもあります。先住民族の言語・文化の研究のためには、少なくとも言語学と文学研究の基礎知識は必須ですが、同時に幅広い教養も必要になります。努力しても困難がつきものの分野ですが、頑張りましょう。

研究活動

所属学会

日本口承文芸学会

教育活動

授業担当(文学院)

  • アイヌ・先住民学特殊講義
  • アイヌ・先住民学総合特殊講義
  • アイヌ・先住民学特別演習
  • アイヌ・先住民学海外特別演習