竹内 修一

プロフィール

竹内 修一 教授 / TAKEUCHI Shuichi
研究内容

アルベール・カミュ研究、世俗化(脱宗教化)と文学。

研究分野
フランス現代文学
キーワード
フランス現代文学
文学研究院 所属部門/分野/研究室
人文学部門/表現文化論分野/欧米文学研究室
文学院 担当専攻/講座/研究室
人文学専攻/表現文化論講座/欧米文学研究室
文学部 担当コース/研究室
人文科学科/言語・文学コース/欧米文学研究室
関連リンク

Lab.letters

Lab.letters 研究室からのメッセージ
欧米文学研究室竹内 修一 教授

神なき時代の殺人を主題とする
カミュの『反抗的人間』

『異邦人』で知られるカミュの著作の中でも本人が「もっとも重要な書物」と記したエッセイ『反抗的人間』については、これまでのフランス文学研究の中でもあまり顧みられることはありませんでした。神なき時代の殺人を主題とする本作に長年取り組んできた私なりの回答を、『死刑囚たちの「歴史」──アルベール・カミュ『反抗的人間』をめぐって』(風間書房)に集約しています。他方、近年では、宗教の影響力が薄れた社会に於いて、人々の記憶をまとめあげる歴史的モニュメントと文学(者)との関係にも興味をもっています。丸善から刊行された『フランス文化事典』では、「聖人」ではなく世俗的な「偉人」たちの霊廟であるパンテオンや無名戦士の墓の設置された凱旋門についての項目を担当しました。

パリ・サント=ジュヌヴィエーヴの丘の上に建つパンテオン(「汎神殿」の意味)。正面には「偉人たちに、祖国は感謝する」という銘句が刻まれている。
『死刑囚たちの「歴史」──アルベール・カミュ『反抗的人間』をめぐって』(風間書房)

論文形式に基づいた
読ませる文章能力を養う

フランスの高校生は哲学を学び、小論文にあたるような長文を書く経験を積んでいます。日本の場合、皆さんが本格的な長文を書くようになるのはおそらく大学以降でしょう。まずは”序論に始まり結論で終わる”といった論文の形式を入口に、持論を展開できる文章能力を養ってほしいと思います。

北海道大学では、留学の機会も開かれていますし、北大出身で現在活躍中のフランス文学の研究者もいます。人生の若い時期を奥深いフランス文学に費やそうという志ある皆さんの進学を待っています。

(聞き手・構成 佐藤優子)

メッセージ

かつて「文学」が多くの若者の心を捉え、文学研究を志す人々に欠くことはない時代がたしかにありました。しかし近年、仏文、英文、独文といった国民の名を文学に冠した専門分野に興味をもつ若者は減少しています。その原因として、映画やインターネットといった書物以外のメディアへの関心が高まったことをあげることができるかもしれません。ですが、それ以上に重要なのは、「文学」概念の自明性が疑われるようになったことでしょう。文学という語が与える印象は、かつてと現在ではかなり異なっているように思えます。1946年にジャン=ポール・サルトルは「文学とは何か?」という問いをタイトルとした書物を刊行しました。しかしそのような問いが普遍的に、ということはつまり、どこでも、いつでも、成立するということをひとはもはや信じることができなくなっています。

そのような時代に於いてもなお、文学研究を行うとすれば、作家なり、あるいは文学理論なりに強い興味を、そして地道にテクストを読み、解釈するという作業を通じて、論文を仕上げるという強い意志をもたねばなりません。と同時に「文学」そのものを歴史的に相対化する視点をもって研究することが必要になるでしょう。

以上は、あまりにかしこまった硬い文章になりましたが、最後にフランスという国の重要性を指摘しておきたいと思います。フランスとはやはり革命をおこした国であり、「民主主義」「人権」「自由」といった諸価値を全世界に知らせた国です。もちろんそうした諸価値に異議を唱える作家や思想家もフランスには存在しました。そのような国で生まれた文学作品は、実に豊穣です。フランス語を学習したのなら、ルソーやディドロ等の啓蒙思想家の書いたテクストを、ランボーやヴェルレーヌの詩を、あるいはゾラの『ジェルミナル』やカミュの『異邦人』といった小説を読んでみていただきたい。そしてもし興味をもったのであれば、人生のある時期を、フランス文学に親しんで、勉強してみませんか。

研究活動

略歴

松江北高等学校卒業、東京大学文学部卒業、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得満期退学、日本学術振興会特別研究員(PD)、東京大学大学院人文社会系研究科助手を経て現職

主要業績

  • 「不条理・殺人・レジスタンス (I) ── 『ドイツ人の友への手紙』から『反抗的人間』へ」、『カミュ研究』第4号、カミュ研究会編、青山社、2000年
  • 「不条理・殺人・レジスタンス (II) ── 『ドイツ人の友への手紙』から『反抗的人間』へ」、『カミュ研究』第5号、カミュ研究会編、青山社、2002年
  • 「正義と殺人 ── エピュラシオンをめぐる論争と『反抗的人間』」、『フランス語フランス文学研究』(日本フランス語フランス文学会機関誌)第81号、2002年
  • 「未来と殺人 ── コミュニストたちの裁判と『反抗的人間』」、『仏語仏文学研究』第19号、東京大学仏語仏文学研究会、2006年、pp.39-54.
  • 「歴史的契機としての処刑──カミュの近代史観について」、『Septentrional』, 第1号、2008年

所属学会

  • 日本フランス語フランス文学会
  • 日本カミュ研究会

教育活動

授業担当(文学部)

  • フランス文学演習 I
  • フランス文学演習 II
  • フランス文学史概説

授業担当(文学院)

  • フランス文学特別演習
  • フランス語フランス文学特殊講義
  • 言語文化比較論特別演習

授業担当(全学教育)

  • 芸術と文学

おすすめの本

  • 『芸術崇拝の思想—政教分離とヨーロッパの新しい神』 松宮 秀治 (白水社)
    2008年に出た本だが、著者の意見に賛成するにせよ、反対するにせよ、「芸術」概念の歴史性を考えるために、必読文献になるだろう。