佐藤 健太郎

プロフィール

佐藤 健太郎 教授 / SATO Kentaro
研究内容

マグリブとアンダルス、つまりイスラーム期の北アフリカとスペイン・ポルトガルを対象に、ムスリム社会の歴史を研究しています。最近は、14世紀の歴史家イブン・ハルドゥーンの自伝の翻訳にも取り組んでいます。

研究分野
中東イスラーム史(特に西地中海地域)
キーワード
マグリブ、アンダルス、契約文書、モリスコ、イブン・ハルドゥーン
文学研究院 所属部門/分野/研究室
人文学部門/歴史学分野/東洋史学研究室
文学院 担当専攻/講座/研究室
人文学専攻/歴史学講座/東洋史学研究室
文学部 担当コース/研究室
人文科学科/歴史学・人類学コース/東洋史学研究室
連絡先

研究室: 510
Email: skentaro*let.hokudai.ac.jp 
(*を半角@に変えて入力ください)

研究生を希望される外国人留学生(日本在住者をふくむ)は、「研究生出願要項【外国人留学生】」に従って、定められた期間に応募してください。教員に直接メールを送信しても返信はありません。
関連リンク

Lab.letters

Lab.letters 研究室からのメッセージ
東洋史学研究室佐藤 健太郎 教授

イベリア半島と北アフリカ
境界線に息づくイスラーム史

キリスト教社会とイスラーム社会が交錯する西地中海は、一元的な視点ではとらえきれない魅力あふれる地域です。私が留学していたモロッコではグレゴリウス暦とイスラーム暦の列記に加えて、古代ローマに由来するユリウス暦をも農事暦として併記するカレンダーが街角で売られていました。百年ほど前まではイスラーム以前の夏至祭・冬至祭に由来をもつアンサラやヤンナイルという祭りを祝う慣習が、イスラームの祝祭と並んで残っていたこともわかっています。私が重きを置くのは地理的な国境や宗派の境界線よりも、こうした生き生きとした人々の営み。地図上ではイベリア半島と北アフリカに分かれていながら、そこには豊かな多面性が息づく”境界線から見たイスラーム史”を自分なりの視点で掘り下げています。

アフリカ最北端の町セウタからイベリア半島を臨む。写真中央にそびえるのは海峡と同名の岩山ジブラルタル。わずか1時間の船便で対岸に到着する。(佐藤教授撮影)
モロッコの街角で売られていた日めくりカレンダー。左上のマスはグレゴリウス暦による「1997年1月1日水曜日」、右上はイスラーム暦「1417年シャアバーン月21日水曜日」、右下は農事暦「農事の12月19日」、左下は礼拝時刻を記したもの。

偶然が「好機」に変わる
院生と指導教員のマッチング

2011年春に北海道大学に赴任し、まったくの偶然ですが私が専門とする14世紀の宮廷政治家イブン・ハルドゥーンを題材にして学部の卒業論文を執筆した院生がいたことに驚かされました。大学院で充実した研究生活を送るには院生と指導教員のマッチングが非常に重要です。私も本学での思いがけない偶然をさらに「好機」に変えていけるよう全面的に協力する心がまえでいます。また、北大のイスラーム研究には長い伝統があり、今も専門の先生がたが複数名おられるという恵まれた環境が続いています。アラビア語の一次史料から浮かび上がる歴史の像が徐々に鮮明になっていく感動の瞬間を、ともに積み重ねていきましょう。

(聞き手・構成 佐藤優子)

メッセージ

私がイスラーム史に関心を持ったのは、学生時代の頃、イスラームを手がかりにすると世界中のいろんな地域がつながって見えるんじゃないかなあ、と漠然と感じたのがきっかけでした。中央アジアを通して中国と、地中海を通してヨーロッパと、さらにはインドや東南アジア、アフリカともつながっている、と。もちろん、これらの地域を全部勉強することはできませんから、西地中海、具体的には北アフリカとイベリア半島が私の研究フィールドになりましたが、いろんな地域とつながっていることはイスラーム史の魅力のひとつだと今でも思っています。また、東洋史という学びの場は、いろんな地域や文化に関心を持っている人が集うところでもあります。イスラーム史の知識とアラビア語などの原典史料の読解能力とを手がかりに、世界のいろんな地域とつながってみませんか。

研究活動

略歴

埼玉県生。1992年東京大学文学部卒。2002年東京大学大学院単位修得退学。2005年博士(文学)。1996年から98年にモロッコ留学。日本学術振興会特別研究員、人間文化研究機構地域研究推進センター研究員、早稲田大学イスラーム地域研究機構研究院准教授を経て、2011年に北海道大学着任。

主要業績

  • 『岩波講座世界歴史8 西アジアとヨーロッパの形成 8〜10世紀』共著(岩波書店、2022年)
  • The Maghrib in the Mashriq. Knowledge, Travel and Identity (Berlin: De Gruyter, 2021)(共著)
  • The Vellum Contract Documents in Morocco in the Sixteenth to Nineteenth Centuries Part I- II (Tokyo: Toyo Bunko, 2015-20)(共編)
  • 「イブン・ハルドゥーン自伝1〜8」共訳『イスラーム地域研究ジャーナル』1〜8(2009年〜2016年)
  • 「17世紀チュニジアのモリスコ」神崎忠昭編『断絶と新生 —中近世ヨーロッパとイスラームの信仰・思想・統治』(慶應義塾大学言語文化研究所、2016年)
  • “Yannayr and al-‘Anṣara: Seasonal Festivals in the Medieval Muslim West,”The Journal of Sophia Asian Studies 30 (2012)
  • 『世界歴史大系 スペイン史1 古代~近世』共著(山川出版社、2008年)
  • 『モロッコを知るための65章』共編(明石書店、2007年)

所属学会

  • 日本中東学会
  • 日本イスラム協会
  • スペイン史学会
  • 北大史学会
  • 北大東洋史談話会

教育活動

授業担当(文学部)

  • 東洋史学概論
  • 東洋史学
  • 東洋史学演習

授業担当(文学院)

  • 東洋史学特殊講義
  • 東洋史学特別演習

授業担当(全学教育)

  • 歴史の視座

おすすめの本

  • 『地中海世界のイスラム ヨーロッパとの出会い』W.モンゴメリ・ワット、三木亘訳(筑摩書房)
    英語原著はちょっと古い(1972年刊)ですが、前近代におけるイスラームとヨーロッパとの交流を分かりやすく紹介しています。