野村 益寛

プロフィール

野村 益寛 教授 / NOMURA Masuhiro
研究内容

主な研究内容は、日英語を対象とした文法・比喩研究です。言語は人間の心が生み出したものなので、言語を研究することは人間の心の働きについて知ることでもあるという立場から語や文が表す意味について考えています。

研究分野
英語学、認知言語学、意味論
キーワード
英語学、認知言語学、日英対照言語学、意味論、文法論
文学研究院 所属部門/分野/研究室
人文学部門/言語科学分野/言語科学研究室
文学院 担当専攻/講座/研究室
人文学専攻/言語科学講座/言語科学研究室
文学部 担当コース/研究室
人文科学科/言語・文学コース/言語科学研究室
連絡先

研究室: 401
Email: nomura*let.hokudai.ac.jp
(*を半角@に変えて入力ください)

研究生を希望される外国人留学生(日本在住者をふくむ)は、「研究生出願要項【外国人留学生】」に従って、定められた期間に応募してください。教員に直接メールを送信しても返信はありません。
関連リンク

Lab.letters

Lab.letters 研究室からのメッセージ
言語科学研究室野村 益寛 教授

裸眼と肉眼の違いって何だろう
言語から見る世界の切り取り方

日本語の「裸眼」と「肉眼」、皆さんは日頃何気なく使っている両者の使い分けを説明できますか。どちらも道具を使わずに物を見ることを指していますが、「裸眼」は眼鏡やコンタクトを、「肉眼」は望遠鏡や顕微鏡を使わずに見る状況で使用します。英語にはこれに対応する区別はなく、ともにthe naked eyeと表現されます。

私たち人間は、言語でこの世界を認識する生き物です。同じ人間の中でも上記の例のように言語によって世界の切り取り方が異なり、それぞれの世界観を構築しています。私の学生たちは英語と日本語の比較や特定の英語の文法事項を「なぜ?」の視点で問い直し、言語と世界の新たなつながりを明らかにしています。

古今の英単語および引用文を網羅するオックスフォード・イングリッシュ・ディクショナリー。写真は野村教授がアメリカで買い求めたコンパクト版。「肉眼」では読めず、拡大鏡が必須。
学びの集大成である博士論文は、写真のように立派なハードカバーの装丁をほどこした上で提出され、大学に所蔵されて閲覧に供される。

星座をかたどる線のように
見えなかった知を明らかに

言語は”暗黙知”と言われ、呼吸や歩行のように意識せずともできてしまうものの一つです。頭の中に入っている言語データを取り出し、分析することで暗黙のうちに使っていた仕組みをクリアに明文化する。星と星の間をつなぐ星座の線のように、これまで見えなかったものが見えてくる瞬間こそが学問の醍醐味と言えるでしょう。学生には「文献を正確に読むこと」に力を入れて指導しています。何がわかり、何がわかっていないのかを知ることが研究の出発点。読み方の指導で基本的なテクニックを身につけ、さらに自分なりの読み方をつかむと研究にもいっそう弾みがつきます。

(聞き手・構成 佐藤優子)

メッセージ

「英語学」とは英語の音声、文法、語彙の意味、歴史的変化などを研究することによって、英語とはどのような特徴をもった言語であるのかを探る学問分野のことを言います。一方、どの言語であれ、それは人間の心の働きが産み出したものであり、その語彙や文法の仕組みには、世界をさまざまな角度から認識し、表現しようとしてきた話し手たちの営みが刻印されています。その意味で、英語学は英語という窓から人間の心の働きについて眺め、考える学問でもあります。

ところで、英語という言語の特徴、英語に反映されている人間の心の働きについて知るには英語だけを研究していては見えにくい面もあります。英語以外の言語(母語である日本語を含む)について知ることは英語をより良く理解することにもつながっていくことを心に留めておいて下さい。

最後に、言うまでもないことですが、基礎となる英語の力がなければ英語を研究する資格はありません。どのようにおもしろい研究ができるかはその人の英語力によって制約されると言っても過言でないくらいです。日頃から英語の雑誌、小説を読んだり、映画・ラジオ講座等を利用するなどして英語力の向上に努めてほしいと思います。その一方で、英語学を勉強することにより英語に対する感覚が鋭敏となり、英語力向上につながる面もあることを付言しておきたいと思います。

研究活動

略歴

東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了(文学修士)、カリフォルニア大学サンディエゴ校大学院言語学科博士課程修了(Ph.D.)、日本女子大学文学部専任講師を経て、2001年より現職

主要業績

  • Nomura, Masuhiro (1993) “The Semantics of the Content Clause Construction in English.” English Linguistics 10: 184-210.
  • 野村益寛 (2001)「参照点構文としての主要部内在型関係節構文」、山梨正明他編『認知言語学論考』1: 229-255、ひつじ書房.
  • 野村益寛 (2002)「<液体>としての言葉:日本語におけるコミュニケーションのメタファー化をめぐって」、大堀壽夫編『認知言語学II:カテゴリー化』(言語情報科学シリーズ第2期『言語科学』第3巻)、37-57、東京大学出版会.
  • 野村益寛 (2003)「認知言語学の史的・理論的背景」、辻幸夫編『シリーズ認知言語学入門第1巻:認知言語学への招待』、17-61、大修館書店.
  • Nomura, Masuhiro (2003) “Conceptual Overlap in Complex Sentence Constructions: A Cognitive Grammar Account”, Masatomo Ukaji et al. eds., Current Issues in English Linguistics, 142-164, Tokyo: Kaitakusha.
  • 野村益寛 (2014)『ファンダメンタル認知言語学』、ひつじ書房.

所属学会

  • 日本英語学会
  • 日本言語学会
  • 日本認知言語学会
  • 英語語法文法学会
  • 日本語文法学会
  • International Cognitive Linguistics Association

教育活動

授業担当(文学部)

  • 英語学概論
  • 英語学演習 I
  • 英語学演習 II

授業担当(文学院)

  • 英語学特殊講義
  • 英語学特別演習

授業担当(全学教育)

  • 思索と言語

おすすめの本

  • 池上嘉彦『英語の感覚・日本語の感覚』(NHKブックス)
    ことばの意味を考える楽しさを平易に教えてくれる本で、英語の勉強にもなります。