江田 真毅

プロフィール

江田 真毅 教授 / EDA Masaki
研究内容

遺跡から出土した動物、とくに鳥類の骨を主に研究しています。これらの骨を土器や石器と同様に「遺物」と捉え、過去の人々の生活を復元する一方、「動物の死体」と捉え、過去の動物の生態を復元しています。

研究分野
動物考古学、考古鳥類学、文化財科学
キーワード
遺跡出土動物骨、形態解析、古代DNA解析、タンパク質分析、ニワトリ
文学院 担当専攻/講座/研究室
人文学専攻/歴史学講座/考古学研究室
連絡先

研究室: 総合博物館 N323A
Email: edamsk*museum.hokudai.ac.jp
(*を半角@に変えて入力ください)

研究生を希望される外国人留学生(日本在住者をふくむ)は、「研究生出願要項【外国人留学生】」に従って、定められた期間に応募してください。教員に直接メールを送信しても返信はありません。
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Lab.letters

Lab.letters 研究室からのメッセージ
考古学研究室江田 真毅 教授

鳥のかたわらに人間あり
物言わぬ骨に過去を聞く

動物考古学とは動物の骨から過去の人々の生活を考える学問です。そのなかでも私は鳥類に軸足を置いて研究しています。例えば、ある遺跡で骨髄骨―産卵前後の数週間だけ骨の中にできる二次的な骨です―を含むヤマドリの雌の骨が見つかった場合、「この遺跡にいた人々は卵を温めているヤマドリを捕らえるとともに、卵も食べていたかもしれない」という仮説が考えられます。土器や石器の研究だけではなかなか解明できない問いかけを、動物の骨を糸口に論理的にひもといていく。それが動物考古学の面白さだと考えています。国内に鳥類を専門とする研究者は私だけです。そのため、国内外のさまざまな時代の遺跡から出土した鳥骨が寄せられ、それぞれの同定を進めています。

遺跡資料の分析を端緒に2020年11月には現在「アホウドリ」と呼ばれる鳥が2種からなることを明らかにした研究成果を発表。画像はその「2種」が生息する伊豆諸島の鳥島。→プレスリリース「特別天然記念物・アホウドリに2種が含まれることを解明」
2019年6月にはナスカの地上絵に描かれた鳥を同定した研究成果を発表。この「ハチドリ」はナスカ周辺に生息しないカギハシハチドリ類と同定され、世界的な話題となった。→プレスリリース「ナスカの地上絵の鳥を鳥類学の観点からはじめて同定」

打ち込めるテーマを探し
名推理で自説を構築

遺跡から出土した「モノ」から語る考古学は、一足飛びに答えにたどり着ける学問ではありません。まず自分で「こうではないか」という妄想を膨らませ、仮説を立てて一つ一つ証拠を集めていく。映画や小説で名探偵が発揮するような推理力が求められます。自分自身で思いついた妄想でなくては、高いモチベーションを保ち続けるのは難しいもの。骨を様々な角度から見て「これだ!」と没入できるテーマを見出してください。北海道大学にはさまざまな脊椎動物の標本を収蔵する総合博物館があり、また北海道は保存状態の良い動物骨が多数出土する、格好のフィールドです。ぜひ一緒に北海道から動物考古学を盛り上げていきましょう。

(聞き手・構成 佐藤優子)

メッセージ

考古学は遺跡から出土したモノから過去の人類の生活を復元する学問です。私は遺跡から出土するモノの中でも動物の骨、とくに鳥類の骨を主に研究しています。

モットーは「目的のためには手段を選ばない」。もちろん、「いい意味で」です。骨の形態の詳細な観察に加えて、薄板スプライン法などの幾何学的形態測定や、組織学的分析、古代DNA分析、コラーゲンタンパク分析などの理化学的手法も取り入れて分析しています。それぞれの分析手法でみえてくる事象は違います。各分析手法の長所を生かし、短所は補い合うことで、より詳細な人類の活動を復元するデータが得られます。

遺跡から出土する骨とその分析は動物の過去の復元にも役立ちます。実際に、私たちは遺跡から出土した骨の分析を端緒に、これまで「アホウドリ」と呼ばれてきた鳥が2種からなることを明らかにしました。この知見は今後「アホウドリ」の保全に大きな貢献をもたらすと考えています。

考古学と動物学。遺跡から出土した動物の骨は、その両方に貢献できる大きな可能性を秘めています。そんな、「1粒で2度おいしい」遺跡出土動物骨の世界を一緒に探検してみませんか?

研究活動

略歴

埼玉県出身。筑波大学人文学類で考古学を、東京大学大学院農学生命科学研究科で生態学を、九州大学大学院比較社会文化研究院で分子生物学を学び、鳥取大学医学部では解剖学教育に携わる。2012年4月より現職。

主要業績

  • 黒沢令子・江田真毅(編著)『時間軸で探る日本の鳥: 復元生態学の礎』築地書館、2021年(編著)
  • 江田真毅「遺跡から出土する鳥骨の生物学,「考古鳥類学」の現状と展望」日本鳥学会誌,66(2),1-18,2019

  • Masaki EDA, Hiroki KIKUCHI, Guoping SUN, Akira MATSUI. Were chickens exploited in the Neolithic early rice cultivation society of the lower Yangtze River? Archaeological and Anthropological Sciences 11, 6423–6430, 2019. DOI: 10.1007/s12520-019-00783-x

  • Masaki EDA, Rasmi SHOOCONGDEJ, Prasit AUETRAKULVIT, Jirassa KACHAJIWA. The history of chicken and other bird exploitation in Thailand: Preliminary analysis of bird remains from four archaeological sites. International Journal of Osteoarchaeology 2019: 231-237. Doi:  10.1002/oa.2731

  • Masaki Eda, Hiroko Koike, and Hiroyoshi Higuchi. Understanding prehistoric maritime adaptations in northern Japan: indirect evidence from ancient DNA and histological observations of albatross (Aves: Diomedeidae) bones. Quaternary International 419: 159-164. 2016. DOI:10.1016/j.quaint.2015.06.067

  • Masaki EDA, Hiroe IZUMI, Satoshi KONNO, Miwa KONNO, Fumio SATO. Assortative mating in two populations of Short-tailed Albatross Phoebastria albatrus on Torishima. Ibis 158: 868-875. 2016. doi: 10.1111_ibi.12397.

  • Masaki Eda, Peng Lu, Hiroki Kikuchi, Zhipeng Li, Fan Li, and Jing Yuan. Reevaluation of early Holocene chicken domestication in northern China. Journal of Archaeological Science 67: 25–31. 2016. doi:10.1016/j.jas.2016.01.012

  • 江田真毅「家畜化に伴う骨形態の小進化と弥生時代のニワトリ」動物考古学33: 49-61、2016年。

  • Masaki Eda, Shoji Yashima, and Takao Inoué. Medullary bone in goose remains: A reliable indicator of domestic individual in non-breeding regions. International Journal of OsteoArchaeology 25: 849-854. 2015. DOI: 10.1002/oa.2355

     

所属学会

  • 生き物文化誌学会
  • 日本文化財科学会
  • 日本鳥学会
  • 日本動物考古学会
  • International Council for Archaeozoology

教育活動

授業担当(文学部)

  • 博物館展示論
  • 博物館情報・メディア論

授業担当(文学院)

  • 考古科学特別演習
  • 環境考古学特別演習