2021.03.14

時間軸で探る日本の

復元生態学の礎
著者名:
黒沢令子・江田真毅(編著)
久井貴世(分担執筆)
文学院・文学研究院教員:
江田 真毅 えだ まさき 教員ページ
久井 貴世 ひさい あつよ 教員ページ

内容紹介

鳥の歴史の研究と聞くと、最近数10年間の鳥類の生態変化や、化石を用いた恐竜から鳥類への進化の解明、あるいは遺伝情報を用いた系統の解析が思い浮かぶことでしょう。しかし、考古遺物や絵画資料、文献史料なども、見方を変えれば鳥類の過去を雄弁に語り始めます。古生物学者、分子生物学者、考古学者、民俗学者、歴史学者、鳥類学者、生態学者が、各分野の得意とする時代の日本列島の鳥類について、その最新の知見を披露します。(江田)

古生物学、分子生物学、考古学、歴史学、鳥類学、生態学と多様な専門性を持つ9名の研究者が、「鳥を巡るタイムマシンの旅に出よう」をテーマに、化石、遺伝情報、考古遺物、絵画資料、文献史料など、一般的な鳥類学とはひと味違った観点から日本の鳥類の歴史に迫ります。本書の執筆には教員から院生、卒業生まで、文学研究院の関係者も多く関わっています。(久井)

著者からのコメント

江田 真毅 准教授

日本列島における鳥類の過去・現在・未来について語った本書の中で、私は遺跡から出土した鳥類の骨を端緒とした研究について紹介しました。鳥類に限らず、遺跡出土の動物骨から過去の動物の生態を復元する研究は日本ではあまりメジャーではありませんが、それだけに数多くの謎が残されています。考古学と動物学、その両方に貢献できる可能性を秘めた遺跡出土の動物骨の世界を垣間見る契機としていただければ幸いです。

久井 貴世 准教授

私は「第5章 文献史料から鳥類の歴史を調べる」と、「コラム3 江戸時代の食文化と鳥類」を担当しました。これらを含む第2部は、江戸時代の歴史資料に残された記録をもとに、鳥類に関する歴史を紐解く方法を紹介するものであり、第5章ではツルを事例として、資料に記載された様々な「鶴」を同定し、さらに過去の分布を探る方法について取り上げています。コラム3では、江戸時代の人々がどんな「鳥肉」を食べていたのか、現代では考えられない江戸時代の「鶴食文化」を中心に、食という観点から鳥類と人の関わりを紹介しました。
また、「第4章 絵画資料からみる江戸時代の鳥類」は、文学研究科卒業生の山本晶絵さんと博士後期課程在籍の許開軒さんが担当しています。堀田正敦の『観文禽譜』に描かれた鳥類に着目して、同定可能な割合や現和名との異同など、現代の知見から定量的な評価を試みています。
鳥類(動物)の研究というと一般的には自然科学的な分野が想像できますが、本書で取り上げたように、人文科学的な分野からのアプローチも可能です。多様な観点から鳥類に迫る方法を紹介した本書は、鳥類の歴史を紐解く新しい研究分野を切り拓くための礎になるのではないかと期待しています。

ISBN: 9784806716143
発行日: 2021.03.14
体裁: 四六判・268ページ
定価: 本体価格2,600円+税
出版社: 築地書館
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

1 骨や遺伝子から探る日本の鳥
第1章 化石が語る、かつての日本の鳥類相
第2章 遺伝情報から俯瞰する日本産鳥類の歴史
第3章 考古遺物から探る完新世の日本の鳥類
(江田真毅)
2 文化資料から探る日本の鳥
第4章 絵画資料からみる江戸時代の鳥類
第5章 文献史料から鳥類の歴史を調べる
(久井貴世)
3 人と鳥類の共存に向けて
第6章 全国的な野外調査でみる日本の鳥類の今
第7章 人類活動が鳥類に及ぼす間接的影響から今後の鳥類相を考える