川端 康弘

プロフィール

川端 康弘 教授 / KAWABATA Yasuhiro
研究内容

「色彩」「映像」「見ることの熟達化と適応力」「視覚システムのダイナミズムと可塑性」等に関わる心理学的研究を行っています。

研究分野
認知心理学(色覚、感性、知識、熟達)
キーワード
色彩、情景、熟達、時空間解像度 
文学研究院 所属部門/分野/研究室
人間科学部門/心理学分野/心理学研究室
文学院 担当専攻/講座/研究室
人間科学専攻/心理学講座/心理学研究室
文学部 担当コース/研究室
人文科学科/人間科学コース/心理学研究室
連絡先

研究室: E棟410
TEL: 011-706-4014
FAX: 011-706-4014
Email: kawabata*let.hokudai.ac.jp
(*を半角@に変えて入力ください)

研究生を希望される外国人留学生(日本在住者をふくむ)は、「研究生出願要項【外国人留学生】」に従って、定められた期間に応募してください。教員に直接メールを送信しても返信はありません。
関連リンク

Lab.letters

Lab.letters 研究室からのメッセージ
心理学研究室川端 康弘 教授

文学的な比喩か現実か?
「違ったものの見方」を検証

「見る力」とは、世界を認識する力でもあります。生来備わっている知覚システムに加え、各自の環境や経験に応じて認知能力は人間の成長とともに向上していきます。ある対象物について「違ったものの見方がある」という表現がよく使われますが、実際に私たちは同じ対象物を各自の見る力に応じて「違ったもの」として見つめているのではないか。このことを明らかにしていくため、当研究室では日常生活の活動と結びつけながら、色彩や情景の再認に関する研究を行っています。所属する学生は他大学からの編入組も多く、色彩への関心から専門的な資格を取るなど充実した研究生活を送っています。

冬山登山者の越冬生活は白の識別感度を高める?
日常的な対象物の配色の好みや文脈や場面に応じた配色の好みについて評価してもらう実験の風景です。実験では被験者の評価だけでなく、視線の動きなどを計測することもあります。

脳の融通性を実験で明らかに
効果的な組立てをアドバイス

2色覚の友人とヒマラヤへ登山に行った時のことです。どんな時でも彼のほうが(他の3色覚の登山隊員の誰よりも)遠くをよく見渡せることに気づき、帰国後の検査で彼が優れた解像度を持っていることを突き止めました。これはもしかすると色処理に使わない脳のリソースを解像度に振り分けるよう、脳が”融通を利かせた”結果だとも考えられます。こうした疑問を客観的かつ論理的に解明するために、私たちは実験という手法を用いています。どんな設定でどういう対象者に何をしてもらうのか、実験方法の組立ては研究の成否を握る重要な要素です。学生たちが決めた研究テーマの魅力を曇らせないように、これからも効果的な実験方法をアドバイスできたらと思っています。

(聞き手・構成 佐藤優子)

メッセージ

経験を積んだり、特殊な環境で過ごしていると、認知能力は変化していきます。「見る目がある」「審美眼」という言葉がありますが、美術の鑑定家や山菜取り名人などを考えれば(衣服の配色センスが良い人やTVゲームの上級者でも構いません)、ものを見きわめる力は明らかに上達します。そして色彩はこの見ることの熟達化に大きく関わっているようです。私たちはいま「デッサン熟達者のシーン再認記憶」「同じ一般3色覚の人なのに色識別力は様々」「化粧品を使う機会が多い女子学生は淡い黄赤紫色域の識別力が高い」「意識しない日常経験や学習が色識別力を向上させる」「冬山登山者や山菜取り名人の色認識力」「写真家が一瞬でシーンを把握する能力」などについて実験データを集めています。

なぜ色彩にこだわるのか。学生時代に北海道の山に親しみ、また空気が乾燥して見通しのきく中央アジアの山岳でしばらく生活したことがきっかけかもしれません。数km先を詳細に認知できる地元の人々の目は驚きでした。脳内のどんなシステムが高解像度の見えをもたらすのか。現地の人に2色覚の人が多い(約10%)ことと関連しているか。その疑問が研究の原点でした。色というわかりやすく役に立つツールを用いて、見る力のすばらしさ明らかにしていきたいと考えています。街に氾濫するポスターやチラシ。またネットの世界にもさまざまなデザインがあふれています。その中に、見て心の琴線に触れるものがあります。なぜだろう。それを科学的に考えてみませんか。

研究活動

略歴

北海道大学大学院文学研究科博士課程修了、博士(行動科学)。日本学術振興会特別研究員、北海道大学文学部助手、立命館大学文学部助教授、北海道大学大学院文学研究科准教授を経て現職。

主要業績

  • 佐々木三公子・川端康弘・川端美穂 (2014). 視覚認知研究から見た公共サインの「見やすさ」について, 日本画像学会誌, 53(5), 448-452.
  • Kojima, H., & Kawabata, Y. (2012). Perceived duration of chromatic and achromatic light. Vision Research, 53(1), 21-29.
  • 笠井有利子・川端康弘 (2011). シーン内の可変情報に対する認知の精度 -視点,明るさ,色調の変化, 心理学研究, 81(6), 610-618.
  • 川端康弘 (2000). 色覚の時空間周波数特性 日本視覚学会(編)視覚情報処理ハンドブック(分担執筆)朝倉書店, 232-236.
  • Kawabata, Y. (1994). Temporal integration at equiluminace and chromatic adaptation, Vision Research, 34(8), 1007-1019.
  • Kawabata, Y. (1994). Spatial integration in human vision with bichromatically mixed adaptation field, Vision Research, 34(3), 303-310.
  • Mitsuboshi, M., Kawabata, Y., & Aiba, T.S., (1987). Color opponent characteristics revealed in temporal integration time, Vision Research, 27(7), 1197-1206.

所属学会

  • 日本心理学会
  • 日本色彩学会
  • 日本視覚学会
  • 日本照明学会
  • 日本認知科学会
  • 日本認知心理学会
  • 日本基礎心理学会
  • 北海道心理学会
  • 国際色彩学会
  • 国際心理物理学会

教育活動

授業担当(文学部)

  • 基礎心理学
  • 心理学演習
  • 心理学実験実習
  • 心理学特殊演習

授業担当(文学院)

  • 総合社会情報論
  • 心理学特殊講義
  • 知覚情報論特別演習
  • 知識構造論特別演習

授業担当(全学教育)

  • 科学技術の世界
  • 外国語演習

おすすめの本

  • 『Hilgard’s Introduction to Psychology』Smith E.D. et al.(Wadsworth Pub Co.)
    心理学の入門書だが、カラー図版がふんだんに使われていてわかりやすい。日本語版あり。