大西 富士夫

プロフィール

大西 富士夫 特任准教授 / OHNISHI Fujio
研究内容

1.北極域をめぐる地政学
2.日本の北極域研究および政策
3.人新世における北極域学の創造

研究分野
国際政治、北極域研究、地域研究
キーワード
北極域をめぐる地政学、極域研究、人新世
文学院 担当専攻/講座/研究室
人文学専攻/スラブ・ユーラシア学講座/スラブ・ユーラシア学研究室
連絡先

Email: fujio.ohnishi*arc.hokudai.ac.jp
(*を半角@に変えて入力ください)

研究生を希望される外国人留学生(日本在住者をふくむ)は、「研究生出願要項【外国人留学生】」に従って、定められた期間に応募してください。教員に直接メールを送信しても返信はありません。
関連リンク

Lab.letters

Lab.letters 研究室からのメッセージ
スラブ・ユーラシア学研究室大西 富士夫 特任准教授

国際的研究観測のフィールドから
国家間のせめぎ合いの場に

かつて気象観測や地質調査の地だった北極域は今、環境の保護への配慮や先住民の声を考慮した形での資源開発、北極海航路の利用や科学研究、安全保障などの面でも注視され、北極域8カ国と非北極域国が協力と競争の間でせめぎ合う場になっています。その状況下で私が研究するのは、各国の動向と時代ごとに変化する国際秩序のありよう、そしてディスコース(言論)に着目しています。中国は自国と欧州を結ぶ北極海ルートを「21世紀の海上シルクロード」と位置付け、ロシアは「最後の経済的なフロンティア」として重視する。複雑な国際関係の中で北極域がどのように語られ、それが実際の外交やガバナンスにどう影響を与えているかを人文・社会科学の見地から追いかけています。

北極域には複数の地理的定義がある。代表的なのは、北極圏(Arctic Circle zone)を北緯66度33分以北とする天文学による定義。このほかに、気象学、雪氷学、植生等に基づく定義もある。
北極評議会の実務者会合の様子

北極域研究センターを持つ
国内きっての研究者育成の地

従来は自然科学分野を中心に展開されていた北極域研究に、現代は我々人文・社会科学研究者のまなざしが必要不可欠であることは広く知られているところです。中でも本学には私が文学院と兼務している北海道大学北極域研究センターがあり、国内きっての北極域研究者育成の地として確固たる存在感を放っています。人工雪で有名な中谷宇吉郎先生をはじめとする北大の先達が築いてくださったレガシーは、国際間の日本人研究者の信頼性を高め、後に続く我々も身が引き締まる思いです。人類学や経済学、国際法研究とも接しつつ、国際政治の文脈で北極域を見つめる研究分野は、まさに今の時代だからこそ取り組める新たな開拓地。あなたの一歩を刻んでみませんか。

水産学部附属練習船おしょろ丸による2023年北極航海でのアクティブ・ラーニング授業の様子(船内)。文部科学省北極域研究加速プロジェクト(ArCS II)の一環として全国から参加した学生たちと大西准教授(後列右端)。
甲板でイルカを撮影する大西准教授(右)。2023年おしょろ丸北極航海にて。

(聞き手・構成 佐藤優子)

メッセージ

北極域をめぐる国際関係を表すキーワードに北極例外主義という言葉があります。この言葉は、北極域の大自然は手つかずでかけがえの無いものであるから国際政治に通常みられるようなパワーに基づくダイナミズムが適用されてはならないという考え方を示しています。実際に、冷戦終結以降の約30年間は北極例外主義の考え方が実現されてきたといっても過言ではありません。しかし、地球全体の約4倍で進んでいるとも言われている北極域の気温上昇や米国と中国の大国間競争によって北極を例外扱いにするという原則は少しずつ揺らぎはじめ、2022年に生じたロシアによるウクライナへの侵攻によって終止符が打たれる瀬戸際のところまで来ています。

私の研究室では、日々変化する北極域をめぐる国際関係の現状をフォローおよび分析しながら、北極域の国際関係を規定しているような秩序、制度、ディスコースについての研究を進めています。海外の研究者との交流や現地での情報収集を通して、北極域から見えてくる国際関係のダイナミズムを肌で感じ取りたいという意欲のある方の入学を歓迎いたします。

研究活動

略歴

海洋政策研究財団、日本大学国際関係学部助教を経て、2017年から北海道大学北極域研究センター准教授。2023年4月から大学院文学院スラブ・ユーラシア学講座兼任。2024年4月から北海道大学北極域研究センターおよび大学院文学院スラブ・ユーラシア学講座特任准教授(兼任) 。

主要業績

  • researchmap
  • 大西富士夫(2019) 「終わりの始まり?大国間競争時代の北極国際政治」, 『ユーラシア研究』, 60号, 22-26.
  • 大西富士夫(2020) 「国際関係」,田畑伸一郎, 後藤正憲共編著『北極の人間と社会:持続的発展の可能性』, 北海道大学出版会, 185-204.
  • Harrison, Peter, and F. Ohnishi, et.al. (2020) “How Non-Government Actors Helped the Arctic Fisheries Agreement,” Polar Perspectives 2, 1-15.

所属学会

  • ロシア東欧学会
  • 北ヨーロッパ学会等
  • 北極環境研究コンソーシアム等

教育活動

おすすめの本

  • 『北極の人間と社会 ― 持続的発展の可能』(田畑伸一郎、後藤正憲 編著、北海道大学出版会)