北原 モコットゥナ

プロフィール

北原 モコットゥナㇱ 教授 / KITAHARA Mokottunas
研究内容

アイヌ民族の民族誌(文化・社会などの調査記録)や説話を分析し、在来的な信仰についてアジアの諸文化との比較研究を行っている。文化的共通性を知ることで、近代以降に諸民族の間に引かれた切断線を見直すことにもつながる。

研究分野
アイヌ民族の宗教、アイヌ語、口承文芸
文学院 担当専攻/講座/研究室
人文学専攻/アイヌ・先住民学講座/アイヌ・先住民学研究室
関連リンク

Lab.letters

Lab.letters 研究室からのメッセージ
アイヌ・先住民学研究室北原 モコットゥナㇱ 教授

当事者の立場から
アイヌ宗教儀礼をたどる

私の研究の出発点は「樺太アイヌである母親の地元のやり方にのっとって宗教儀礼を行いたい」という思いです。アイヌの宗教儀礼は地方によって様式が異なりますが、資料の残り方や研究の進展はかなり偏りがあります。研究の空白だった地域について、祀る神の名を調べることに始まり、いつ、どんな言葉や音楽、祭具、儀礼で祈りを捧げていたのか。さまざまな構成要素から成り立つ宗教儀礼の研究は、アイヌ民族の文化を知るうえで非常に重要です。

同時に私自身が“当事者”であるからこそ気づけることも発信していきたいと考えています。「神秘性」や「自然との共生」といったことは本来どの民族の文化にも見られますが、これらを先住民族の固定的な役割として担わされることがないように、誤解や決めつけを修正していく必要を感じています。

私物の祭具。右の漆器の上にのっている「イクニㇱ(イクパスイ)」は祭具であり、祈りの言葉を届けるメッセンジャーの役割も持つ。左はポンパスイと呼ばれる小型のもの。日々のくらしで実践しやすいようにガラスコップと木地の杯台でお神酒を捧げることもある。
北大植物園はアイヌ資料をはじめ貴重な民族学的資料を収蔵。左は石狩市で作られた火の神のイナウ。右(前後両面を図示)は樺太(サハリン)のウイルタ民族の祭具。ユーラシアにはこうしたイナウに似た木製品が点在する。

コミックが近づけた心の距離
相互理解が進む学び舎に

人気コミック『ゴールデンカムイ』の影響もあり、近年の北大生がアイヌに示す好意的な関心の高まりに、時代の変化を感じます。私自身、コミックの監修をお手伝いをしたことが、シャマンの儀礼について論文を書くきっかけになりました。メディアで紹介されることで、研究の見直しを促すこともあると実感しています。

アイヌに関心を持つ学生、自分がアイヌの血を引く学生双方に伝えたいことは、アイヌ文化を知って終わりではなく他の文化と比較する目線を持つこと。1つの文化を鏡とし、他の文化との共通点や差異を見つけて再評価する。そこから相互理解が深まり、この北海道大学が価値多様性を肯定する社会をけん引していくことにつながれば。個人的ですが、いつわらざる私の気持ちです。

(聞き手・構成 佐藤優子)

研究活動

主要業績

教育活動

授業担当(文学部)

  • 博物館展示論

授業担当(文学院)

  • アイヌ・先住民学特殊講義
  • アイヌ・先住民学総合特殊講義
  • アイヌ・先住民学特別演習
  • アイヌ・先住民学海外特別演習