内容紹介
『謎とき「ハックルベリー・フィンの冒険」』(新潮社)から三年、前著で見逃したり全然論じるつもりのなかった問題が気になりだして、今度は英語で書いて全部はき出しました。かつて『ハックは黒人だろうか?』という研究書が流行りましたが、私はむしろ「ハックの父は黒人だろうか?」と問うべきだと思っていて、この問いへの答えを探るとトウェイン作品のいろいろ不思議なところが氷解するのではないか、という提案をしています。
著者からのコメント
「内容紹介」では、本書の執筆動機が自らの学問的進展にあるような書き方をしましたが、それは事情の半分(きれいな方の半分)にすぎず、残り半分はもっと下世話で、実は『謎とき「ハックルベリー・フィンの冒険」』が全然売れていないのです。そこで、日本がダメならアメリカがあるさ、世界があるさ、いや宇宙があるさ、というヤケクソ気味の思いつきで、少々苦労しながら英語で拡大発展版を書いてみることにしたわけです。執筆途中、本を出してくれる出版社が見つからなかったらこの苦労は全部水の泡か、という小さい人間特有の不安と戦いつつ。
結局、出版には漕ぎ着けましたが、今はもう英語で本を書くのはこりごりという気持ちでいっぱいです。少年ハックが小説の最後で「本を書くのがこんなに大変だと知ってたら、オレは本なんて書かなかったよ」と言った時の気持ちが自分のことのように分かります。もう私も疲れました。老けました。先日は犬の散歩ごときで肉離れしました。ちょっと旅に出たい気分です。
【関連書籍】
謎とき『ハックルベリー・フィンの冒険』―ある未解決殺人事件の深層
(竹内康浩 著、新潮社、2015年)
外部リンク
〔出版社〕Routledgeの紹介ページ