内容紹介
文化進化とは、文化の差異や動態を生物進化のアナロジーで説明する21世紀の新しい科学である。集団遺伝学や進化生物学の数理モデル、先端的な統計手法を駆使して、石器や土器、写本、民話、技能、食慣習、言語、宗教、社会構造に関する現実のデータが解析され、数々の驚くべき知見が見出されてきた。本書は、自然科学と社会科学の融合を目指す新たな研究領域の全容と成果を、数式を一切使わずに平易に紹介した解説書である。
著者からのコメント
日本文化、中国文化、インド文化・・・文学部には、特定の◯◯文化について、人生をかけて研究している人たちがたくさんいます。その様子は、100万種以上存在する中からたった一つの生物種を選び、その生物を長年研究していく生物学者の姿とよく似ています。しかし、生物学には進化という、全ての『生物』に適用可能な概念、理論体系があります。メンデルの法則やDNAは、ミツバチであれチューリップであれ、生物を研究する者ならば、誰もが知らなければならない概念です。
でも文化についての学問には、そうした統一的な理論的枠組みや概念は存在していません。もし生物学のように、文化をサイエンスの対象として研究するならば、その学問はどんな姿かたちをしているのでしょうか。
これは、そんな疑問を持ったことがある人のための本です。本書では、1980年代に生物学で誕生し、40年かけてようやく人文学、社会科学へと浸透してきた新たな科学の姿が平易に紹介されています。これまで文化進化という新しい科学の姿を知るためには、数理モデルや高度な統計解析が駆使された英語論文を地道に読むしかありませんでした。本書は、この新しい科学の姿を数学や統計が苦手な文系の読者でも理解できるように執筆された解説書です。
進化を基盤として、人間の心と社会を理解しようとする試みは、自然科学から社会科学において大きな広がりを見せています。「協力する種:制度と心の共進化(S.ボウルズ・Hギンタス(著) 竹澤正哲(監訳) NTT出版)」と共に本書を読むことで、その様子を伺い知ることができるでしょう。
外部リンク
〔出版社〕NTT出版の紹介ページ
〔書評〕朝日新聞書評(柄谷行人)
〔書評〕読売新聞書評(岡ノ谷一夫)
刊行記念B&Bトークショー
〔インターネット上の代表的な書評〕
HONZ
shorebird 進化心理学中心の書評など