書香の森企画展示「縫い継がれた記憶進藤冬華展」〈第1期〉

撮影: 伊藤留美子

書香の森の企画展示を更新しました。札幌を拠点として活動する進藤冬華氏の作品を、4回にわたりシリーズ展示いたします。今回は第1期の展示を紹介します。

縫い継がれた記憶 進藤冬華シリーズ展 vol.1
Stitched and inherited memories: Handiworks by Fuyuka Shindo

ふたりでつくる、日々のかたち
Various shapes in days: collaboration with my grandmother

私は札幌に生まれ、その近郊で育ちました。子どもの頃、隣街の母方の祖父母宅にはよく遊びに行きました。裁縫の得意な祖母は、いつも何か縫っていました。彼女が裁縫台にむかって着物を作っている姿や、作っているものについて母と話している様子を覚えています。私の母もアイヌ刺繍を趣味としており、友人たちと長く活動を続けています。こんな風に、私にとって針仕事は日常の光景でした。

 その後、北アイルランドの大学院で学び帰国した後、私はこの母方の祖母と暮らすことにしました。そして時間を見つけては、祖母と縫いものをするようになり、さまざまな手縫いの技術や布の扱いなどを学びながら、一緒に作品を作りはじめました。祖母が作るものは彼女の長年の経験を反映して、美しく、創意工夫に溢れています。ちょっとした手加減や縫い方の工夫で仕立てが綺麗になったり、手元にある物をうまく活用して仕立てたりするアイデアには、いつも驚かされます。

 祖母にとって裁縫は、楽しみであり特技であるだけでなく――たぶん祖母の世代の多くの女性たちにとってそうだったように――暮らしと深く結びついた、実用的なものでした。一緒に作業すると、そのことを実感します。家族の着物や衣服などを縫うことが、彼女の日常でもあったのでしょう。それに対して 私が縫ったのは、食事のときに食べたフルーツや家の鉢植えのサボテンなど、自分の目に映ったさまざまなかたちです。今回の展示では、私が祖母に裁縫をならいはじめて、一緒に作業をするようになった頃に作った小作品をご紹介します。
(アーティスト 進藤冬華)

正面展示ケース
左から《前から見た髪のかたち》《馬》《家》《サボテン》撮影: 伊藤留美子
左から《馬》《家》《サボテン》《スカート》《おなら》《耳当て帽子》《ズボン》撮影: 伊藤留美子
左から《スカート》《おなら》《耳当て帽子》《ズボン》《下から見た鳥》《かがむ中年の男》撮影: 伊藤留美子

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手前展示ケース
撮影: 伊藤留美子
祖母から譲り受けた、進藤の裁縫箱(写真資料)と糸切りばさみ
浴衣のつくりかた: 祖母の教えを進藤がメモしたもの
(上)祖母のポートレイト、(下)糸の始末をする祖母の手
はじめて祖母に運針をならったときの布
トクサ(進藤との作業に刺激されて祖母がつくった作品)
イチゴ(進藤が最初につくった布作品)
きりびつけの技術を使った作品
こて台作品(図案の考案: 進藤、制作: 祖母)
こて台作品用の進藤による図案のスケッチ