「プラス1ピース読書会Vol.12」開催されました

2019年10月24日(木)、文学研究院「書香の森」にて第12回「プラス1ピースの読書会」が開催されました。今回取り上げたのは、加藤重広先生(言語科学研究室)の著作『言語学講義—その起源と未来』です。

2018年9月の胆振東部地震直後に届いた編集者さんのメールから本格的に始動し、2019年3月にこの本ができるまでの期間、編集者さんとのやりとりやタイトルの由来、多忙な時期にどうやって執筆時間を捻出したかなど、さまざまなエピソードを交えて紹介されました。ちなみに執筆時間の捻出方法は、「あまりにも忙しすぎてよく覚えていない」そうです。

多数の言語学に関する本を執筆されてきた加藤先生。『その言い方が人を怒らせる—ことばの危機管理術』(ちくま新書、2009年;写真左端)を担当した編集者さんから声がかかり、『言語学講義』(写真左から2冊目)の執筆は始まりました。

「この日本語は正しいですか?」加藤先生が頻繁に受ける質問だそうです。ことばは、正しい、間違っているという白黒をつけるものではなく、もっと柔軟なものだと加藤先生は本の中でもお話でも主張されます。地域、文脈、時代の移り変わりなどさなざまな要因でことばは流動的に変化します。「正しい日本語」は理念としては確かに存在するが、すべての場面で正誤を判定しなくてもよいというお話に、大きく頷いたり笑顔を浮かべる参加者がいました。

今回のプラス1ピースのキーワードは「広場」
言語学が取り扱う領域は、拡大し、更新され続けています。研究者は基盤となる従来の言語学よりも、最先端の話題を研究する傾向にあります。同じ言語学の研究者同士であっても、研究領域が離れていると、相手の研究フィールドが十分に捉えきれないことがあるそうです。そのような現状に危機感をもった加藤先生は、そろそろ言語学を枠組みを含め再構成する時期が来ていると感じ、新たな言語学の全体像を示したいという思いでこの本を執筆されました。言語学全体の領域を結びつける広場のような場所、先端領域研究をしていても、誰でも戻って来て議論ができる、そういう場を創り上げていくきっかけとしたいという思いが込もった本です。

書香の森に入りきれず、立ち見の方もいました。