内容紹介
本書は、フランスの哲学者ポール・リクールが1960年代末から1970年代にかけて発表した聖書解釈をめぐる論文8篇を選んで訳出したものである。リクールは哲学と神学を峻別することにこだわったが、彼の解釈学的哲学において、聖書解釈(学)の問題は大きな位置を占めている。本訳書は、聖書解釈(学)におけるリクールの貢献だけでなく、彼の哲学思想の全体像を知る上でも重要である。
著者からのコメント
リクールの哲学は、解釈学的現象学とも呼ばれます。解釈学は、聖書や法律の解釈などに発するdisciplineですが、マルティン・ハイデガーやハンス・ゲオルグ・ガダマーといったドイツの学者たちによって哲学的・学問的に重要な位置づけをえました。リクールは彼らの解釈学を批判的に継承し、さらに方法論的に練り上げていきました。その際重要となるのは、キリスト教の正典である聖書の解釈をめぐる問題です。本書では、リクールの生涯にわたる聖書解釈(学)をテーマとした論文のなから、比較的初期の代表作を厳選し翻訳しています。聖書解釈(学)をめぐる議論は、リクールの哲学的営為全体を知る上でも欠かすことができません。私も文章を寄せた『リクール読本』(法政大学出版局)と合わせて読んでいただくと、リクール解釈学についてさらに理解が深まると思います。