内容紹介
15~16世紀、朝鮮や明に現れた数多(あまた)の偽使たち。彼らを派遣した《地域》勢力によって《国家》の外交権が浸食され、室町幕府外交システムが崩壊していく過程を解明する。幕府有力者や琉球国王の使節を偽造してきた対馬―博多勢力、西国有力守護など、《地域》勢力の実態を追究。中世日本の《国家》との関係を軸に、新たな東アジア国際関係像を構築する。
(本書カヴァーの内容概説より)
著者からのコメント
私の母校である東京大学人文社会系研究科に提出した博士学位論文の後半に、関連論稿(新稿)を加えて上梓したものです(前半は部分未公刊……早く公刊しないといけないのですが、なかなか仕上げる時間を取れません)。開館準備に携わっていた九州国立博物館のオープン直前に、文字通り身命(具体的には睡眠時間や休日)を削って博論を完成させ提出、ただちに改稿して出版の体裁を整えました。いわゆる文献史学とは異なる博物館の業界に入り、自分の研究成果をここで纏めておかねば、すべてお蔵入りになってしまうかもしれない……と考え、新たなステップを刻む覚悟で突貫工事に臨んだわけです。実際、博物館オープンの荒行も加わって、身体はぼろぼろになってしまいました。本書は、私の最初の著作であり、かくも思い出深い作品です。
タイトルはかなり大仰なものですが、少なくとも中身において、当該テーマの特徴的な論点は炙り出せたのではないかと思っています。さらに自画自賛ながら、15~16世紀にかけて起こった室町幕府外交貿易システムの崩壊過程を具体的に描いた、初めての研究書だと自認しています。なお、サブタイトルの「東アジア通交圏」は敬愛する故田中健夫先生へのオマージュ。「偽使問題」は私自身の造語ではありませんが、知的ポテンシャルの高い歴史用語ではないかと、ひそかに気に入っています。
学術論文集としては実にありがたいことに、2014年5月に復刊(2刷)と相成りました。版元も世間も、それだけの需要があると見込んでくださったのでしょう。最近、歴史学のどの分野でも研究者の数が逓減しておりますが、本書を契機に、対外関係史に関心をもつ若者が(いやご年配の方も)どんどん出てきてくれれば、これに過ぎる喜びはありません。
外部リンク
〔出版社〕吉川弘文館の紹介ページ