内容紹介
事件は会議室ではなくテキスト上で起きていました。元祖探偵小説家として知られるエドガー・アラン・ポーの作品の中に未解決殺人事件が隠されていたのです。今回も私はアマチュア文学探偵を勝手に気取り、その事件を発見し、ついでに解決へと導いてみました。「そんな馬鹿な!」とお怒りになるその前に、ひとまず落ち着いて本書を読んでみていただければ幸いです。
著者からのコメント
私が高校生の頃、「君が思うよりきっと僕は君が好きで~」という歌詞の歌が流行っていました。この本ではそれを「人が思うよりずっとポーは天才だった」とアレンジして書きましたが、恋愛であれ探偵小説であれ、思いは伝わらないものなのですね。
ポーの場合、一つの完全犯罪を見事に描ききって「Yes!」との思いで短編「犯人はお前だ」を発表したのが1844年、もう2世紀近く前のことです。でも、その間ずっと誰も「完全犯罪」に気づいてくれないとは。気づかないばかりか「あの作品は探偵小説のパロディーだ。それに、事件を解決する語り手も誠実じゃない。それまでずっとグッドフェローのことを善良な人間だって言い続けていたのに、結末でグッドフェローが犯人だって言うんだから、一体何なんだよ。ポー最大の傑作は、やっぱ『盗まれた手紙』だよなぁ」(=先行論文の要約)という具合に、過小評価されてきました。
探偵小説における不誠実な語り手と言えば、アガサ・クリスティーの『アクロイド殺し』が有名です。語り手が犯人だなんて(ネタバレ御免)、そんなのアンフェアじゃないか、という批判をクリスティーは浴びました。しかしポーは、同様なアンフェア問題をとっくの昔に解決していたのです。「犯人はお前だ」でも、実は語り手が真犯人(だと私は信じている)なのですが、どうすれば真犯人である語り手がフェアに事件を語れるのでしょうか。その問題に対するポーの解決策は、実に華麗なのです。その上、語り手は衆人環視のもとで第二の殺人も犯している。それを見ずして、ポーを天才と言う勿れ。
刊行後の反響
- 2025年4月27日 読売新聞 朝刊 本よみうり堂 『謎ときエドガー・アラン・ポー』竹内康浩著 真相 自ら見抜く楽しみ 評・宮部みゆき
- 2025年4月27日 産経新聞 <書評> 精読が新しい物語を描き出す 『謎ときエドガー・アラン・ポー』竹内康浩著 評・平戸懐古
→産経新聞の紹介ページ - 2025年4月26日 図書新聞 書評 「真犯人は誰かーーポーが試みたメタフィジカルな分析」 評・加藤安沙子
→図書新聞Webの紹介ページ - 2025年4月12日 共同通信 山陰中央新報、沖縄タイムズ、北國新聞
〈注目の一冊〉 謎ときエドガー・アラン・ポー(竹内康浩著) 文学研究、極上の娯楽に
阿部公彦氏による書評 - 2025年4月5日 毎日新聞 朝刊(読者面)
〈今週の本棚〉鴻巣友季子・評『謎ときエドガー・アラン・ポー』=竹内康浩・著 - 2025年3月30日 北海道新聞 朝刊(ほん)
〈読書ナビ ほっかいどう〉北海道の新刊にて紹介 - 2025年3月27日発売 週刊文春 4月3日号
〈書評〉著者、そして二百年前からの挑戦状:『謎ときエドガー・アラン・ポー』評・阿津川辰海
→文春オンラインの紹介ページ - 2025年3月7日 週刊読書人 1-2面
竹内康浩インタビュー: ポーが仕掛けた完全犯罪の謎を解く
『謎ときエドガー・アラン・ポー』の刊行を機に行われたインタビュー記事。
→週刊読書人WEBの紹介ページ - 2025年2月27日発売 新潮社『波』3月号
〈書評〉「探偵のいない推理小説」から「謎のない犯罪小説」へ 評・法月綸太郎
→新潮社の紹介ページ
外部リンク
〔出版社〕新潮社の紹介ページ