2024.12.24

〈動物をえがく〉人類学

人はなぜ動物にひかれるのか
著者名:
山口 未花子、石倉敏明、盛口満 編著
ケイトリン・コーカー、瀧本彩加 分担執筆
文学院・文学研究院教員:
コーカー・ケイトリン・クリスティーン こーかー けいとりん くりすてぃーん 教員ページ
瀧本 彩加 たきもと あやか 教員ページ
山口 未花子 やまぐち みかこ 教員ページ

内容紹介

洞窟壁画の例をひくまでもなく、人は大昔から動物をえがいてきました。また子供が生まれた時に与えられるぬいぐるみや絵本のモチーフとしてまず浮かぶのも動物です。しかしなぜ、私たちは動物をえがいたり、えがかれた動物をそばに置きたいと思うのでしょうか?
本書は人類学者やアーティストなど23人の専門家が、文章だけでなく美しい図版をふんだんに用いながら、様々な視点から人が動物にひかれ、えがく理由に迫った一冊です。

著者からのコメント

人類学なのに動物?と戸惑う方もいるかもしれません。しかし近年の人類学の潮流の中で、人間は人(ホモ・サピエンス)という種のみで存在しうるものというより、様々な存在との絡まりあいのなかで初めてその形を表すような存在であるという見方も示されるようになりました。人を形作る人以外の存在の中でも動物は最も人に近く、また食べ物などの資源としても重要な存在です。なかでも人の人らしさを最も表すものでもある芸術の分野で、動物は最も古く、重要なモチーフの一つでした。さらに動物をえがく表現は単に視覚芸術にとどまらず、音楽や踊り、毛皮の装飾品、詩やはく製、漫画など多様な展開を見せています。本書では動物描写が動物を理解するためのツールであり、人以外の世界と人を結びつける手掛かりであり、生活を楽しくする手段でもあることを、様々な描写が生成するプロセスを示すことで明らかにしようとしました。23人の著者のなかには、文学部の教員でもある山口をはじめ瀧本彩加先生、ケイトリン・コーカー先生、大学院生のサリントヤさんも含まれており北大文学部という場所が日本における動物研究において独自の役割を果たしていることも示すことができたのではないかと思います。

【刊行後の反響】

書評

  • 2025年1月25日『毎日新聞』東京朝刊「今週の本棚」評者:中村桂子氏
  • 2025年3月22日『秋田魁新報』書評欄
  • 2025年4月12日『東京新聞』/『中日新聞』朝刊 「新刊寸評」
ISBN: 9784000616782
発行日: 2024.12.24
体裁: A5判・286頁
定価: 本体価格3,400円+税
出版社: 岩波書店
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

Ⅰ 動物を観察してえがく
1 イメージの中の動物たち――大学生の絵から考える 盛口 満
コラム1 自然史標本の役割と動物たちをめぐる文化 西澤真樹子
コラム2 学者と協働で挑む古生物の復元図 小田 隆
2 暮らしの中の毛皮――西シベリア・ハンティの女性の生き方 大石侑香
コラム3 モンスターデザイン 長谷川朋広

 

Ⅱ 動物を想ってえがく
3 取り残された動物になる――核災害後の表現実践から 丹羽朋子
コラム4 動物を踊る・動物で躍る――バリ舞踊の表現をめぐって 吉田ゆか子
4 狩られる動物を想う――子どもの絵からグイ・ブッシュマンの語りまで 菅原和孝
コラム5 えがかれた動物としての私たち――今貂子の舞踏 ケイトリン・コーカー
5 動物詩序説――生命に直面する詩の問い 管啓次郎

 

Ⅲ 動物イメージの変容をえがく
6 「共異体」としてのキメラ――人間と動物のあいだに 石倉敏明
コラム6 間にて真を眼ざせば――真似び、学び、愛む、ミメーシスとしての制作行為 大小島真木
7 「驚異の部屋」の怪物たち――不思議な生きものが生まれる現場 山中由里子
8 ヒトはなぜ動物を描くのか――人類進化とアートの起源 齋藤亜矢
コラム7 ドリーム ハンティング グラウンド 鴻池朋子
9 「彫られた」動物とともに生きる――ライオンの彫刻が守り、癒し、導く存在になるとき 長坂有希
コラム8 土で動物をつくること、焼くこと 根本裕子

 

Ⅳ 動物とつながるためにえがく
10 動物にうたう歌――カナダ・ユーコン先住民と動物が織りなす音の共同体 山口未花子
コラム9 描くことの根源に動物がいた 土取利行
11 動きを描くことの意味――動物表象とアニマシー 竹川大介
コラム10 動物を漫画に描く 五十嵐大介
12 動物、人、風景をつなぐ歌――ギンゴーが響く草原 サリントヤ
コラム11 「空気を読む」馬 瀧本彩加

 

おわりに――共に動物である私たち 石倉敏明