内容紹介
本書は、百年以上にもわたって創造された「日本」の「文化」としての「探偵小説」のダイナミズムを捉えようとするものである。第一部「歴史の視座」では、日本探偵小説の歴史を俯瞰し、第二部「探偵小説論の現在」では、日本型探偵小説の特殊性や今日的な展開を論じる。第三部「座談会」では、札幌市在住のミステリ作家・評論家を招いて、「ミステリと評論の間」をめぐって議論が行われる。
著者からのコメント
本書に通底するのは、「日本探偵小説」を読むことの「愉楽」であり、それを読者の皆さんに伝え、共有したいという思いである。もちろん、時として「日本探偵小説」は、権力との隠微な共犯性を帯びたり、自らの通俗性を卑下し純文学の芸術性に嫉妬したりと陰鬱な側面も併せ持つ。その意味では、本書は、「日本探偵小説」の豊穣性や正統性をことさら擁護するものではない。その貧しさ、その仄暗さも知ってこそ、真の「愉楽」に通じるのではないだろうか。(「あとがき」より)
外部リンク
〔出版社〕北海道大学出版会の紹介ページ