内容紹介
もう一つの市民社会。多数のイスラーム教徒が存在したロシア帝国。彼らはいかに生きたのか。日露戦争から第一次世界大戦・革命へと至る時代に、政治・行政・教育・出版・戦争・慈善等に積極的に関与し、言論と行動によって自らの 「公共圏」 を生み出したムスリム社会の苦闘を、かつてない深度で描き出す。
著者からのコメント
現代世界では、異質な集団への寛容がますます失われつつあるように見えます。しかも、民主主義、多文化共存、グローバリゼーションなど相互に矛盾をはらむこれらの理念の実現で曲がりなりにも模範を示してきた(と自負してきた)ヨーロッパやアメリカの人々が、それらはもはや自分たちの割に合わないと発言し始めています。ロシアやイスラーム世界は西洋の自画像の反転した世界として非難や嘲笑の対象になってきましたが、今やそうした世界観自体を問い直す時に来ています。「ロシア人のためのロシア」を希求する声が高まった帝政最後の十年にヨーロッパ部ロシア東部でマイノリティとして生きたムスリム社会の軌跡は、現代の我々にも思考の糧となるはずです。
外部リンク
〔出版社〕名古屋大学出版会の紹介ページ