内容紹介
歴史学の潮流は、戦後歴史学から社会史をへて新たな段階を迎えている。それは、言語論的ならびに空間論的転回を基軸としながら、文化史研究やグローバル・ヒストリーの形態をとって展開している。本書は、こうした現代歴史学の位相をめぐり、言語論的転回が社会史研究に与えたインパクトについて、そしてポスト言語論的転回といわれる現在の状況にいたる過程についての史学史的な考察を行なうものである。
著者からのコメント
本書を構成する諸論文は、私が一九九〇年代から二〇一〇年代にかけて約二〇年間に書き溜めてきた歴史理論や方法論に関する論考をベースにしている。それらは、研究動向や学説史の論文として理解されているところもあるが、今日風にいえば、史学史的パースペクティブによって執筆されたものである。史学史というのが通俗的な学説史や研究史と異なるのは、いわば歴史学的な「学知」を社会思想史の対象としてみる、いいかえれば、歴史学的な思考様式ないしは「思惟様式」として取り扱うものであり、歴史学をめぐる時代環境といったものをより強く意識している点にある。本書は、社会史から言語論的転回、そしてポスト言語論的転回へといたる歴史研究の推移について、グローバリゼーション・新自由主義を背景としたスナップ・ショットを描こうとするもので、その推移を日本における戦後歴史学から社会史への史学史的発展と絡めることによって、現代日本の歴史学における課題をも明らかにする。
外部リンク
〔出版社〕岩波書店の紹介ページ