内容紹介
さまざま意味において20世紀の最も重要な宗教学者のひとりであるミルチャ・エリアーデ(Mircea Eliade, 1907-1986)と、自他ともに認める彼の高弟でありながら若くして非業の死を遂げた同じく宗教学者ヨアン・ペトル・クリアーヌ(Ioan Petru Culianu, 1950-1991)との間で14年間に渡り交わされた110通の彼らの母国ルーマニア語によって書かれた書簡集の翻訳。
著者からのコメント
本書は、私的な手紙をまとめた書簡集です。書簡集というのは、読み手にはそれらの手紙が書かれたコンテクスト(背景)がよく分からない、というハンディがありますが、逆にそういったコンテクストを推測しながら読む、という面白みもあります。特に、本書簡集には、宗教学者エリアーデとクリアーヌ両者をよく知る研究者たちによって詳細な序文や編者注(さらに訳者注と解説)が付されており、それらを頼りに両者の人生の迷宮に分け入る、という醍醐味があります。特に、両者は亡命ルーマニア人として、われわれ日本人の知る由もない数奇で困難な人生を強いられました。そのような中で、研鑽を積み業績を上げ、世界的な宗教学者となっていった両者の学問形成の過程を知ることは、とりわけ同じように研究者としての道をめざす人々にとっては、いろいろと示唆に富んでいるはずです。また、天寿を全うしたかに見えるエリアーデと、41歳の若さで暗殺されるという悲劇的な死を遂げたクリアーヌとのコントラストは、第二次次世界大戦前から始まり1989年のチャウシェスク政権の崩壊にまで至るルーマニアという国の特殊な政治状況と複雑に絡み合っており、この書簡集にたんなる私的な手紙のやりとりという以上の、政治的あるいは歴史的観点からする資料的価値をも与えています。
外部リンク
◎〔出版社〕慶応大学出版会の紹介ページ
◎江川純一のブログ:注目すべき本