2015.03.31

日本サブカルチャーを読む

銀河鉄道の夜からAKB48まで
著者名:
押野 武志(編著), 西田谷 洋, 水川 敬章, 千田 洋幸, 竹本 寛秋, 諸岡 卓真, 岩川 ありさ, 佐藤 亮, 横濱 雄二, 榊 祐一, 柳瀬 善治
文学院・文学研究院教員:
押野 武志 おしの たけし 教員ページ

内容紹介

宮沢賢治・村上春樹など文学作品からミステリ、ラノベ、百合小説、BL、アイドル、ゲームまで、多種多様な対象とジャンルを取り上げその現代的意義と可能性を明らかにする。錯綜する日本のサブカルチャーを読み解く視座を提供する試み。

著者からのコメント

 日本の錯綜したサブカルチャーの諸相を交通整理すべく、読解の方法や理論も提示します。従来の物語論的なアプローチだけではなく、メディア論、クィア理論、ゲーム理論、サブカルチャー批評などによって分析し、サブカルチャーは単なる娯楽や消費の対象ではなく学術的な研究対象であることも示します。また、セクシュアリティや死といった切実なモチーフも各論で多く取り上げられており、読者の実存的な経験と結びつくような生きたサブカルチャー研究となっています。
 
 本書は、Ⅲ部構成になっています。
 
Ⅰ「サブカルチャーの多様な展開」では、宮沢賢治にみられるセカイ系的な想像力やアイドルと戦争表象をめぐる系譜を辿ったり、村上春樹や小川糸の原作と映画とのメディアミックスのユニークな実例やドライビングゲームの独特な受容のされ方などを紹介したりしながら、サブカルチャーの歴史的な展開と現代的な特質を、ジャンル横断的に論じます。
 
Ⅱ「キャラクターから複数の物語へ」では、ミステリにおける特異な推理法や複数の物語世界を読解する方法、あるいは二次創作におけるBLものの少年同士の関係や百合小説における少女同士の関係の特異性など、とりわけ2000年代以降に顕著になったサブカルチャーの特質を従来のキャラクター論とは異なる観点から分析します。
 
Ⅲ「サブカルチャーを理解するための新たな枠組み」では、物語という観点からだけでは捉えられないゲーム体験というジャンルの固有性を理論的に明らかにし、また、3.11以後のサブカルチャーが引き受けなければならない、死者と生者の共存の表象問題を取り上げ、サブカルチャー研究の新たな展開の可能性と今後の課題を提示します。

ISBN:
発行日: 2015.03.31
体裁:
定価: 本体価格2,800円+税
出版社: 北海道大学出版会
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

はじめに
――日本サブカルチャーを読むための史的展望
Ⅰ サブカルチャーの多様な展開
セカイ系文学の系譜…押野武志
――宮沢賢治からゼロ年代へ
山川直人『100%の女の子』における合成の機能…西田谷 洋
――村上春樹の原作小説との対照
『食堂かたつむり』試論…水川敬章
――倫子のイメージをめぐって
生と死の狭間で歌う少女…千田洋幸
――AKB48から美空ひばりへ、リン・ミンメイへ
ドライビングゲームにおいて、いかにして「物語」はマウントされるのか、あるいはされないのか…竹本寛秋
Ⅱ キャラクターから複数の物語へ
〈操り〉という亡霊…諸岡卓真
――東川篤哉『ここに死体を捨てないでください!』
pixivという未来…岩川ありさ
―― 「クィア・アダプテーション」としての二次創作
〈関係〉を書くことの可能性…佐 藤  亮
――百合小説・中里十『君が僕を』論
ミステリとライトノベル…横濱雄二
――谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズにおける物語世界の構成
Ⅲ サブカルチャーを理解するための新たな枠組み
物語としてのゲーム/テレプレゼンスとしてのゲーム…榊  祐 一
―― 『バイオハザード』を例として
サブカルチャー批評の現在と未来…柳瀬善治
――三・一一以後のサブカルチャー批評は何を表象すべきなのか
あとがき
――戦前期の大衆文学論に触れながら