内容紹介
宮沢賢治・村上春樹など文学作品からミステリ、ラノベ、百合小説、BL、アイドル、ゲームまで、多種多様な対象とジャンルを取り上げその現代的意義と可能性を明らかにする。錯綜する日本のサブカルチャーを読み解く視座を提供する試み。
著者からのコメント
日本の錯綜したサブカルチャーの諸相を交通整理すべく、読解の方法や理論も提示します。従来の物語論的なアプローチだけではなく、メディア論、クィア理論、ゲーム理論、サブカルチャー批評などによって分析し、サブカルチャーは単なる娯楽や消費の対象ではなく学術的な研究対象であることも示します。また、セクシュアリティや死といった切実なモチーフも各論で多く取り上げられており、読者の実存的な経験と結びつくような生きたサブカルチャー研究となっています。
本書は、Ⅲ部構成になっています。
Ⅰ「サブカルチャーの多様な展開」では、宮沢賢治にみられるセカイ系的な想像力やアイドルと戦争表象をめぐる系譜を辿ったり、村上春樹や小川糸の原作と映画とのメディアミックスのユニークな実例やドライビングゲームの独特な受容のされ方などを紹介したりしながら、サブカルチャーの歴史的な展開と現代的な特質を、ジャンル横断的に論じます。
Ⅱ「キャラクターから複数の物語へ」では、ミステリにおける特異な推理法や複数の物語世界を読解する方法、あるいは二次創作におけるBLものの少年同士の関係や百合小説における少女同士の関係の特異性など、とりわけ2000年代以降に顕著になったサブカルチャーの特質を従来のキャラクター論とは異なる観点から分析します。
Ⅲ「サブカルチャーを理解するための新たな枠組み」では、物語という観点からだけでは捉えられないゲーム体験というジャンルの固有性を理論的に明らかにし、また、3.11以後のサブカルチャーが引き受けなければならない、死者と生者の共存の表象問題を取り上げ、サブカルチャー研究の新たな展開の可能性と今後の課題を提示します。
外部リンク
〔出版社〕北海道大学出版会の紹介ページ