内容紹介
本書は、勁草書房より1999年に出版された奥野満里子著『シジウィックと現代功利主義』の改訂英語版である。功利主義、利己主義、直観主義(義務論・徳論)の三者に厳密な分析を施したヘンリー・シジウィックの仕事を精査し、そこから現代功利主義を含む現代倫理学の理論的課題と不備を明らかにしている。邦語原著に比して、各所で具体例や論証をいっそう明確化し、議論を補強している。
著者からのコメント
2005年に渡米した当時、私は英語圏では完全に無名の研究者でした。本書を英語で紹介したいと願いながらも、翻訳を引き受けてくださる方など現れるわけもなく、現在のように翻訳ソフトがあるわけでもなく、仕方なく自ら少しずつ訳し始めました。育児と研究と教育の合間を縫って作業を続け、約5年をかけて原稿を整え、ようやく出版社に持ち込み、刊行に至りました。
英語版の作成にあたっては、哲学者ではなく、ロサンゼルスで映画評論に携わっていた方が、副業として英語校正を手伝ってくださいました。専門家ではないからこそ、「ここはどういう意味か」「具体例で言えば何か」と、何度も立ち止まり、興味深げに訊いてくれました。私はその一つ一つに実例を挙げながら答え、説明を補い、論証を組み直しました。
その過程は決して効率的なものではありませんでしたが、結果として議論の不明瞭な箇所が洗い直され、例示や論証の筋道がいっそう明確になった部分も少なくありません。日本語版でやや分かりにくかった論点については、むしろこの英語版のほうが明晰に示されている箇所もあるかもしれません。
多くの偶然と、周囲の善意、そして粘り強い対話によって生まれた一冊です。日米をまたいで積み重ねたこの仕事を、読者の方に受け取っていただければ幸いです。
外部リンク
[出版社] Springer Nature の紹介ページ
