内容紹介
本書は、19世紀英国の哲学者ヘンリー・シジウィックの主著『倫理学の諸方法』を丹念に分析し、その規範倫理学・メタ倫理学・道徳哲学上の核心的論点を手がかりとして、現代功利主義をはじめとする現代倫理学の不備を鋭く照射したものである。快楽説の論証や「実践理性の二元性」の含意を掘り下げたうえで、ヘア、ハルサーニ、ブラントらの議論を批判的に再検討し、道徳性の基礎を根底から問い直した作品である。
著者からのコメント
私たちは日常のなかで、あるときは義務感に突き動かされ、あるときは他者を思いやり、またあるときは自分の利益を優先します。人間の道徳性は、そのように多面的で、ときに緊張をはらんだいくつもの側面から成り立っています。
ヘンリー・シジウィックは、この単純でありながら重い事実から目をそらさず、利己主義・功利主義・直観主義という三つの方法の関係を徹底的に分析しました。そして「唯一の究極善は快である」とする論証や、「実践理性の二元性」と呼ばれる自愛と博愛の相剋の難問を通して、道徳の根拠そのものを深く問い直しました。
本書では、その緻密な理論的道具立てを現代の議論のなかに位置づけ直し、功利主義をはじめとする現代倫理学の可能性と限界を再検討しています。
人間の利己的な側面、他者を思いやる側面、義務を重んじる側面――それらを切り捨てるのではなく、真正面から受けとめた上で、では私たちは何をどのように考えて「私は今どうするべきか」を決断すればよいのかを考え抜いたシジウィックの洞察を、ぜひ本書で味わっていただければ幸いです。
外部リンク
[出版社]勁草書房の紹介ページ
