2025.7.30

「お静かに!」誕生 

近代日本美術の鑑賞と批評
著者名:
今村信隆 著
文学院・文学研究院教員:
今村 信隆 いまむら のぶたか 教員ページ

内容紹介

この本では、明治期以降の日本に的を絞り、近代的な「美術鑑賞」と「美術批評」の成立について検討しています。議論を導くキーワードは〈声〉と〈語らい〉です。近代的な鑑賞と批評は、ともに、〈声〉や〈語らい〉を外側へと追いやることで自らの輪郭を定めてきたのではないか。そのような仮定に基づきながら、今日の美術館でもしばしば要請される「お静かに!」をめぐる諸問題を再考し、近代日本美術の淵源を探っていきます。

著者からのコメント

2024年の秋に刊行した前著『「お静かに!」の文化史‐ミュージアムの声と沈黙をめぐって』(文学通信刊)の姉妹編とも言える一冊です。
今回は、前著では扱うことが出来なかった2つの問題に新たに取り組むことを目指しました。
1つは、「鑑賞の歴史」と「批評の歴史」の両方を同時に議論の俎上に載せることです。鑑賞と批評、この両者がまったくの別ものではなく、どこかで通底していると想定する点に、本書の特徴があると考えています。
もう1つ、本書で新たに取り組もうとしたのは、鑑賞史と批評史とが重なる地点から、日本の近代美術自体の成立を眺めてみることです。当初の目論見のすべてが達成できたとは到底思えませんが、それでも、自分なりに答えに近づこうとしたことは事実です。
取り上げたトピックは多岐にわたります。一見したところ、雑多にみえてしまかもしれません。目次や索引を改めて眺めると、我ながら、雑多な気もいたします…。ただ、それらの種々雑多なトピックのあいだを、〈声〉と〈語らい〉というキーワードを握りしめながら進み、探検してみるのは、少なくとも私にとっては愉しい作業でした。この愉しみが、読んでくださる方に少しでも伝わることを、願うばかりです。

ISBN: 9784867660935
発行日: 2025.7.30
体裁: 四六判・456ページ
定価: 本体価格2,700円+税
出版社: 文学通信
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

第1章 見世物と書画会――二つの系譜
第2章 作品の前での語らい――龍池会、鑑画会と『大日本美術新報』をめぐって
第3章 集合と分断――第三回内国勧業博覧会の葛藤
第4章 おしゃべりの愉しみ
第5章 美術批評の文体と声色――再考「日本絵画ノ未来」論争
第6章 「展覧会」のイメージを探る
第7章 雑誌『白樺』の言説空間――鑑賞における親密さと静けさ