2025.4.30

越境する革命

『吼えろ、中国!』と東アジアの左翼芸術運動
著者名:
村田 裕和 越野 剛 田村 容子 和田 崇 編
文学院・文学研究院教員:
田村 容子 たむら ようこ 教員ページ

内容紹介

本書は、一九二〇〜三〇年代の東アジアにおいて展開された左翼芸術運動について、人物の移動や作品の翻訳・翻案などの観点から多角的に分析を試みた論集である。「左翼芸術運動」とは、共産党や左派労働組合などから直接的・間接的な影響を受けつつ、芸術や文化の力によって革命の実現を後押ししようとする芸術家たちの運動を指す。プロレタリア文化運動や反戦・反ファシズムを掲げる人民戦線的な芸術運動をも広く包括した点が、本書の特徴である。
(「まえがき」を参照)

著者からのコメント

本書は、2022年7月に立命館大学で開催された国際シンポジウム「吼えろアジア──東アジアのプロレタリア文学・芸術とその文化移転 1920〜30年代」をもとにまとめられた成果論集です。
1926年、モスクワのメイエルホリド劇場で上演されたセルゲイ・トレチャコフの戯曲『吼えろ、中国!』は、ヨーロッパやアメリカ、そして東アジアなど、国境を越えて広く上演されました。このように、国家・言語・ジャンルの枠を越えて、人や作品が異なる文化圏・文化領域へと移動する時、そこにはどのような力が作用し、どのような現象が生まれるのでしょうか。
本書では、「左翼芸術運動」をキーワードに、こうした国際的なアダプテーションの様相を明らかにすることを目的としています。ジェンダー、植民地主義、プロパガンダなど、左翼芸術運動を語る上で欠かせない複数の論点を交差させながら、「文化移転」の実態に迫ります。
各章を通して、革命と芸術の結びつき、そしてその伝播が西洋と東洋をどのように往還していったのか、運動のうねりやねじれを感じていただければ幸いです。

ISBN: 9784864051897
発行日: 2025.4.30
体裁: A5判・416頁
定価: 本体価格5,400円+税
出版社: 森話社
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

Ⅰ 東アジアを翻案する──セルゲイ・トレチャコフという回路
第1章 セルゲイ・トレチャコフと中国 越野 剛
第2章 ロシア極東のトレチャコフと「トゥヴォルチェストヴォ」 スティーブン・リー(田村 太・越野 剛訳)
第3章 咆吼のこだま エン テイカ(深瀧 雄太・越野 剛訳)
第4 章 犠牲者プロパガンダに抗して 亀田 真澄

 

Ⅱ 終わりなき演出──文化越境者(メディア)としての村山知義・千田是也
第1章 ネオ・ダダの都から転換の都市へ 西岡 あかね
第2 章 中国プロレタリア演劇におけるモダニズムと村山知義 中村 みどり
第3 章 村山知義と在日朝鮮人プロレタリア演劇運動 韓 然善
第4 章 編み合わせのアダプテーション 萩原 健

 

Ⅲ 境界/抑圧を描く──ジェンダー・セクシュアリティ・労働
第1章 プロレタリア文学に描かれた「子殺し」 鳥木 圭太
第2章 社会的再生産を可視化する 飯田 祐子
第3章 ハウスキーパー問題論─湯浅克衛「焔の記録」 ヘザー・ボーウェン=ストライク
第4 章 恋愛から同志愛へ 羽田 朝子

 

Ⅳ 植民地・被占領地の文化実践──韓国・台湾・中国・満洲
第1 章 リアリズム文学のモダニズム的読解について 朴 宣榮
第2章 米と綿、そして移動する無産者たち 李 珠姫
第3章 語らぬ少女の語るもの 杉村 安幾子
第4 章 一九三〇年代の台湾文壇に交差する二つの前衛 陳 允元(田村 容子訳)
第5 章 日中戦争期の被占領地域における演劇 田村 容子

 

Ⅴ 翻訳・翻案(アダプテーション)の政治学──文化移転の諸相
第1 章 受け継がれる浮浪者の気勢 ブルナ・ルカーシュ
第2 章 日米プロレタリア文学の往来 和田 崇
第3章 新築地劇団と劇団築地小劇場 村田 裕和
第4 章一九五〇年代ルーマニアにおける日本文学 ホルカ・イリナ

 

左翼芸術・文化運動年表(一九一六~一九四〇) 村田 裕和(編)