内容紹介
本書は、一九二〇〜三〇年代の東アジアにおいて展開された左翼芸術運動について、人物の移動や作品の翻訳・翻案などの観点から多角的に分析を試みた論集である。「左翼芸術運動」とは、共産党や左派労働組合などから直接的・間接的な影響を受けつつ、芸術や文化の力によって革命の実現を後押ししようとする芸術家たちの運動を指す。プロレタリア文化運動や反戦・反ファシズムを掲げる人民戦線的な芸術運動をも広く包括した点が、本書の特徴である。
(「まえがき」を参照)
著者からのコメント
本書は、2022年7月に立命館大学で開催された国際シンポジウム「吼えろアジア──東アジアのプロレタリア文学・芸術とその文化移転 1920〜30年代」をもとにまとめられた成果論集です。
1926年、モスクワのメイエルホリド劇場で上演されたセルゲイ・トレチャコフの戯曲『吼えろ、中国!』は、ヨーロッパやアメリカ、そして東アジアなど、国境を越えて広く上演されました。このように、国家・言語・ジャンルの枠を越えて、人や作品が異なる文化圏・文化領域へと移動する時、そこにはどのような力が作用し、どのような現象が生まれるのでしょうか。
本書では、「左翼芸術運動」をキーワードに、こうした国際的なアダプテーションの様相を明らかにすることを目的としています。ジェンダー、植民地主義、プロパガンダなど、左翼芸術運動を語る上で欠かせない複数の論点を交差させながら、「文化移転」の実態に迫ります。
各章を通して、革命と芸術の結びつき、そしてその伝播が西洋と東洋をどのように往還していったのか、運動のうねりやねじれを感じていただければ幸いです。
外部リンク
〔出版社〕森話社の紹介ページ