2025.3.25

労働をめぐるシスターフッド

プロレタリア文学・フェミニズム・労働研究
著者名:
辻 智子 水溜 真由美 編著
文学院・文学研究院教員:
水溜 真由美 みずたまり まゆみ 教員ページ

内容紹介

多くの女性にとって、生きることは働くことでもあった。戦間期における女性労働の多様化は女性たちの中に分化と序列を生んだ一方で、その立場の脆弱性を浮き彫りにした。女性たちはこの状況にどう向き合ったのか。「文学」「運動」「研究」の分野で活躍した7名の女性と「無名」の女性労働者たちに光をあて、労働が媒介した女性同士の連帯の一端を明らかにする。

著者からのコメント

本書は、戦間期における女性労働をめぐる女性たちの活動(文学・研究・労働運動・女性運動など)と、そこに見られる女性同士の連帯の動き(シスターフッド)を、八つのケーススタディを通じて明らかにしようとするものです。今日の社会には新自由主義的な自己責任・能力主義の考え方が浸透していて、労働をめぐる連帯の動きは活発とは言えません。それだけに、社会運動や言論活動に対する規制が厳しかった戦間期に、女性労働者がおかれた状況を改善するために女性たちが多様な活動を展開していたことは、大変新鮮に感じられると思います。本書は、教育学研究院の辻智子先生、文学院卒業生の上戸理恵さんを始めとして、5人の研究者仲間との共同研究の成果です。執筆者の専門分野は、歴史学、教育学、文学、思想史と多岐にわたっています。本書を完成させる過程で、様々な分野の研究者と一緒に学ぶことの意義、楽しさを実感しました。

 

ISBN: 9784832969032
発行日: 2025.3.25
体裁: A5判・240頁
定価: 本体価格 4500円+税
出版社: 北海道大学出版会
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

序章 戦間期日本における女性労働とシスターフッド(執筆者一同)
第一章 中本たか子:『モスリン横丁』における女性知識人と女性労働者のシスターフッド(水溜真由美)
第二章 佐多稲子:女性労働の空間におけるコミュニケーションへの着目(上戸理恵)
第三章 松田解子:「おりん」三部作における女性労働者像(水溜真由美)
第四章 奥むめお:「家庭婦人」と「職業婦人」を架橋する女性たちの協同運動(亀口まか)
第五章 桟敷ジョセフィン(よし子):倉紡万寿工場の女子寄宿舎・教化係として(岸 伸子)
第六章 丸岡秀子:『日本農村婦人問題』が描いた悲惨な農村母性(広瀬玲子)
第七章 三瓶孝子:『日本綿業発達史』が描いた紡績女性労働(広瀬玲子)
第八章 女性労働者たち:繊維産業における労働運動と表現(辻 智子)