内容紹介
多文化主義国家カナダでも有数の移民街「リトルポルトガル」。近年、この街区に重大な影響を与えているジェントリフィケーションと都市政策BIAに焦点を当て、ダイナミックな都市変容過程におけるローカル政治の構造と力学を明らかにする。10年超に及ぶ精緻なフィールドワークの集大成。
著者からのコメント
本書は、卒業論文の調査を開始した2011年以降、私が一貫して取り組んできた、カナダ・トロントのポルトガル系移民街の変貌を描いたものです。博士論文をベースにしながらも、博士号の取得後、査読付き国際ジャーナルに掲載された複数の論文を翻訳・加筆・修正し、それらを統合の上、全体の論を再構成しました。
200以上のエスニック集団が暮らすトロント市においても、ポルトガル系コミュニティは、これまで都市内部の局所的空間に最も高度に集住し、特有の移民街「リトルポルトガル」を形成・維持してきました。しかし、特に2010年代以降、都市の新たな潮流とともに、移民人口は減少し、その社会空間的な特性は大きく変化してきました。
本書では、移民街という都市の部分空間での定点観測的調査を実施するともに、ジェントリフィケーションと都市政策BIA(Business Improvement Areas)という二つの鍵概念に焦点を当て、過渡期にある移民街でのローカル政治の実践・構造・力学を明らかにしました。またその上で、今日世界一の多文化都市と称されるトロント市が直面している、経済発展と多文化共生の両立をめぐるディレンマについての読解を試みました。
*北大文学部「書香の森」展示スペースにて、写真展「北緯43度線を辿って―多文化都市トロントにおける移民街の情動―」を開催します。
会期:2025年3月21日(金)〜 5月30日(金)平日のみ 9時〜17時
ご興味をお持ちの方は、こちらの展示も併せてご観覧ください。
外部リンク
〔出版社〕明石書店の紹介ページ