2025.3.19

多文化都市トロントにおける移民街の揺動

ジェントリフィケーション・私的政府BIA・ローカル政治
著者名:
髙橋 昂輝 著
文学院・文学研究院教員:
髙橋 昂輝 たかはし こうき 教員ページ

内容紹介

多文化主義国家カナダでも有数の移民街「リトルポルトガル」。近年、この街区に重大な影響を与えているジェントリフィケーションと都市政策BIAに焦点を当て、ダイナミックな都市変容過程におけるローカル政治の構造と力学を明らかにする。10年超に及ぶ精緻なフィールドワークの集大成。

著者からのコメント

本書は、卒業論文の調査を開始した2011年以降、私が一貫して取り組んできた、カナダ・トロントのポルトガル系移民街の変貌を描いたものです。博士論文をベースにしながらも、博士号の取得後、査読付き国際ジャーナルに掲載された複数の論文を翻訳・加筆・修正し、それらを統合の上、全体の論を再構成しました。
200以上のエスニック集団が暮らすトロント市においても、ポルトガル系コミュニティは、これまで都市内部の局所的空間に最も高度に集住し、特有の移民街「リトルポルトガル」を形成・維持してきました。しかし、特に2010年代以降、都市の新たな潮流とともに、移民人口は減少し、その社会空間的な特性は大きく変化してきました。
本書では、移民街という都市の部分空間での定点観測的調査を実施するともに、ジェントリフィケーションと都市政策BIA(Business Improvement Areas)という二つの鍵概念に焦点を当て、過渡期にある移民街でのローカル政治の実践・構造・力学を明らかにしました。またその上で、今日世界一の多文化都市と称されるトロント市が直面している、経済発展と多文化共生の両立をめぐるディレンマについての読解を試みました。

*北大文学部「書香の森」展示スペースにて、写真展「北緯43度線を辿って―多文化都市トロントにおける移民街の情動―」を開催します。
会期:2025年3月21日(金)〜 5月30日(金)平日のみ 9時〜17時
ご興味をお持ちの方は、こちらの展示も併せてご観覧ください。

ISBN: 9784750358987
発行日: 2025.3.19
体裁: A5判・312頁
定価: 本体価格 5400円+税
出版社: 明石書店
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

第Ⅰ部 はじめに
第1章 本書の枠組みと目的
第2章 既往の研究
第3章 研究方法と分析の手順

 

第Ⅱ部 多文化都市トロントのポルトガル系移民街
第4章多文化主義国家カナダと多文化都市トロント
第5章 世界とカナダのポルトガル系ディアスポラ

 

第Ⅲ部 移民街の発展・変容とエスニックコミュニティの空間的分散
第6章 リトルポルトガルの移民街としての発展段階
第7章リトルポルトガルの脱ポルトガル化とポルトガル系コミュニティの空間的分散化

 

第Ⅳ部 私的政府BIAとジェントリフィケーション進展下のローカル政治
第8章 都市の街区政策BIAとその私的政府性
第9章 リトルポルトガルBIAにおける主導権争いと社会関係
第10章 ジェントリフィケーション進展下のポルトガル系議員の選挙戦

 

第Ⅴ部 おわりに
第11章 移民一世の高齢化と老後の戦略的トランスナショナリズム
第12章 結び:多文化都市トロントのディレンマと移民街の揺動