2022.12.20

呪術と学術のアジア

陰陽道研究の継承と展望
著者名:
陰陽道史研究の会 編
分担執筆 吉田拓矢(【コラム】日蝕予報と暦家)
文学院・文学研究院教員:
吉田 拓矢 よしだ たくや 教員ページ

内容紹介

古代において成立した陰陽道は,時代とともにその役割を拡げていきました。本書は,陰陽道史研究の継承と展望というテーマのもと,「Ⅰ 呪術としての陰陽道」「Ⅱ 学術としての陰陽道」「Ⅲ 東アジアという視点」の三部構成で,多彩な論考を収めています。

著者からのコメント

コラム「日蝕予報と暦家」で,古代から近世初期までの日蝕予報について論じました。
日本では,江戸時代に渋川春海の貞享暦に代わるまで,中国から輸入した暦法でこよみを作っていました。日蝕予報も,それまでは中国暦法で計算していたのです(ちなみに,中国暦法で日蝕予報をしていても,半数以上は的中します)。しかし,中国暦法を独学するのは容易なことではなく,日本の暦家たちが使いこなせるようになるまでには,かなりの時間を要しました。さらに,ようやく中国暦法に習熟してきたところで,宿曜師や算博士が日蝕予報に口出しをしてきたり,しまいには暦家賀茂氏(勘解由小路家)が断絶してしまったりと,その後も苦難は続きます。学術を受容し継承するのには,大変な苦労があったのです。

ISBN: 9784585325246
発行日: 2022.12.20
体裁: A5判・272ページ
定価: 本体定価3,000円+税
出版社: 勉誠出版
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

序論 陰陽道研究の展望―その性格と概念をめぐって
山下克明
総論 中世仮名暦と『簠簋内伝』―陰陽道概念の近世的
展開によせて 山下克明

 

Ⅰ 呪術としての陰陽道
陰陽道の呪術と民俗信仰との繋がり―まじない呪盤書をもとに 松山由布子
『簠簋内伝』と祇園社―その関係性と影響について 鈴木耕太郎
五山文学にみる賀茂氏と泰山府君 野口飛香留
中世における陰陽道祭祀の展開―雷公祭・風伯祭を事例に 赤澤春彦
陰陽道の神々と呪術―変貌する「土公神」をもとめて 斎藤英喜
【コラム】備後地方の晴明伝説と〝末裔〟たち 木下琢啓
【コラム】和泉地方のまじない資料と信仰 細田慈人
【コラム】いざなぎ流・病人祈禱の呪術 梅野光興

 

Ⅱ 学術としての陰陽道
陰陽師による天文道・暦道の兼帯について 細井浩志
平安時代の陰陽師説話――『今昔物語集』の晴明のまじないの前後 中島和歌子
近世前期の占いの「学術」の一側面―『簠簋』の解説書を中心に マティアス・ハイエク
江戸時代の陰陽道認識と陰陽師―呪術書と重宝記― 梅田千尋
【コラム】古代の東国における陰陽師 山口えり
【コラム】中世日本の陰陽道と地震 濱野未来
【コラム】「相地」における知の更新――「四神相応」言説を通して 中村航太郎
【コラム】暦注の「正しさ」をめぐって――『簠簋内伝』へのまなざし 馬場真理子
【コラム】日蝕予報と暦家 吉田拓矢
【コラム】近世の反閇儀礼 詫間直樹

 

Ⅲ 東アジアという視点
「東アジアという視点」から考える陰陽道 水口幹記
唐の李淳風の『乙巳占』 田中良明
『礼緯含文嘉』の諸伝本と近世における天文五行占書の流布 佐々木聡
中国現存最古の伝世択日書『弾冠必用集』について 大野裕司
陰陽道の独自性と東アジア性―「陰陽師」と「陰陽生」の比較を中心として 張麗山
【コラム】「歩天歌」と中国・朝鮮・日本 髙橋あやの