内容紹介
重要なのは、ジャンヌ・ダルクを「脱神話化」すること、つまり彼女を依然として取り巻く勝手な推測や仮説から可能なかぎり解き放つことである。本書は、600年に及ぶ研究史のあり方をふまえ、ジャンヌ・ダルクを彼女の時代の最良の史料によってのみ語り、歴史家としてジャンヌ・ダルクの生涯、活動、その時代に接近する試みである。
著者からのコメント
本書の著者ゲルト・クルマイヒは、第一次世界大戦を中心的な研究テーマとする西洋近現代史の歴史家であるが、教授資格請求論文ではジャンヌ・ダルク没後の記憶をめぐる問題を扱い、その後も両分野について数々の成果を発表してきた。本書は後者について2021年に刊行されたドイツ語の著作を、約3年間かけて全訳したものである。
わが国においてフランス中世史のドイツ語文献を邦訳するのは容易ではなく、両言語に対応可能だが専門の異なる三名(西山、小林、安酸)が約100頁ずつ翻訳し、当該分野を専門とする監訳者(加藤)の指摘や助言を反映することにより形にしていった。
本書の特徴は、訳者あとがきにあるように、「ジャンヌ・ダルク研究におけるドイツ語史料・文献の重要性とドイツ人研究者の貢献の指摘」、「方法論的堅実さ」、「戦争指導者(隊長)としてのジャンヌ性格に光を当てている」ことにある。ぜひ多くの方に手に取っていただき、「脱神話化」されたジャンヌ・ダルクの姿を見てもらいたい。
外部リンク
〔出版社〕みすず書房の紹介―ページ