内容紹介
本書は、歴史と記憶をめぐる日台戦後サブカルチャー研究である。戦後、旧植民地時代の「日本」の記憶が完全に忘却、あるいは否定されたわけではなく、台湾社会に「日本」イメージは読み替えられながら残存し現在に至る。本書は、戦前の日台関係史を踏まえ、そうした台湾側からの日本へのまなざしだけでなく、日本からの台湾へのまなざしとも交錯させながら双方の戦後サブカルチャー史に焦点を当てる比較文化研究でもある。
著者からのコメント
本書は、台湾と日本の研究者・作家、総勢一三名による書き下ろし論文集である。第二次世界大戦後から現代に至るサブカルチャー史を、日本と台湾双方の観点から明らかにする意図で企画された。活字メディアや視聴覚メディア、ポピュラー・カルチャーやオタク文化など、さまざまなメディアと文化事象を取り上げながら、台湾において、戦後日本のサブカルチャーがどのように受容され、土着化していったのか、あるいは、そのような台湾から日本のサブカルチャーは何を逆輸入し、どのようなイメージで台湾を表象しようとしたのかを、双方の「交差」から明らかにすることを目的にしている。
本書は、三部構成で、Ⅰ部「歴史の交差」においては、戦後台湾の出版文化、一九七〇年代アジア系アイドル、台湾ニューシネマ、映像の中の「台湾」イメージ、メイドカフェを対象に、日台のサブカルチャーを「歴史」との「交差」から見ていく。Ⅱ部「表象の交差」においては、アニメ、SF映画、フィクションのなかの神様の図像、日本の少女漫画など、ポピュラー・カルチャーにおける両者の「交差」と「土着化」に目を向ける。Ⅲ部「ミステリの交差」においては、日台の現代ミステリを対象にして、科学的想像力・叙述トリック・妖怪表象といった観点から、両者の「交差」と「偏差」を明らかにする。
外部リンク
〔出版社〕北海道大学出版会の紹介ページ