内容紹介
アメリカニスト(アメリカ研究者)がアメリカニストになった経緯を、自伝形式で告白する新しいスタイルの学術書。一般的には客観的であることが求められる研究者も、実は人であり主観的な生き物。その人の生まれ育った環境や信条が意識・無意識に研究に影響していることは否めない。本著は、アメリカニストが自分の未来が予測不能(unpredictable)な頃まで遡り、現在の自分を分析することでアメリカ文化研究の真髄に迫っている。
著者からのコメント
ある日突然、「どうして〇〇を研究してるんですか」と質問されて戸惑うことはありませんか。また、「この本、どんな人が書いたのだろう」と不思議に思うことはありませんか。
一般的に、研究には客観性が求められています。つまり、研究者は理性的に訴えなければならないという通念です。が、「理性的に訴える」なんて矛盾した表現はありません。なぜなら、学術研究は個人的経験の主観的主張と言っても過言ではないからです。20世紀後半、フェミニスト運動家や研究者は、“personal is political”として女性自らの経験を政治化し尊厳を訴え、運動や研究の成果を出しました。21世紀の研究はさらに主体的で流動的です。様々な分野で、新しい学問のスタイル“personal is academic”がまかり通ることになるでしょう。
本書は、研究者が自らの研究を披露する背景には、個人的経験が強烈に潜んでいることを語ってくれます。英米文学を専攻した僕の場合、それは故郷であり、家族であり、男性性というジェンダーでした。学術研究の陰に、人ありです。