内容紹介
飼い馴らしたタカを使役して獲物を捕らえる狩猟、鷹狩。本書は、全国的かつ通史的な視野に立ち、さらに環境や狩猟文化、タカやその獲物の生態学観点を交えながら、日本列島における鷹狩の歴史を史料に基づいて実証的に捉えようとした書籍である。日本史を貫く重要な要素でありながら等閑視されてきた鷹狩の歴史を紐解き、日本列島における鷹狩の歴史、知られざる人とタカの関係史を知ることができる刺激的な一冊となっている。
著者からのコメント
本書は、2016年4月から5年間で進められた研究プロジェクト「日本列島における鷹・鷹場と環境に関する総合的研究」(研究代表:福田千鶴、JSPS科研費JP16H01946)の学術的な成果を広く一般に向けてわかりやすく公表し、日本の鷹狩文化についての社会的認知度を高めることをねらいとしています。このプロジェクトでは、近世史を中心として古代史、中世史、美術史、生態人類学、野生動物管理学などから多様な研究者が参加し、日本列島における鷹狩の歴史を分野の枠を超えて多角的に捉えようと試みてきました。日本史はもちろん、鳥類学など野生動物を専門とする分野の研究者にもぜひおすすめしたい一冊です。
私は第2部「鷹と人の関係史」のなかの、第5章「鷹狩をめぐる江戸時代のツルの「保護」と人との関わり」を担当いたしました。本章は、鷹狩の獲物の最高位とされたツルについて、紀伊藩の伊勢御鷹場で行われていた鷹場管理に着目し、鷹狩の獲物となるツルの渡来を維持するために実施された種々の取組みを、ツルの「保護」という観点から捉えようとしたものです。江戸時代の鷹狩をめぐって行われていた取組みを、実際のツルの生態や行動、現代の保全の観点から評価するという試みはこれまでに行われてきませんでしたが、過去と現在の知見、さらに人間側と鳥類側の視点を結びつけることで、江戸時代の鷹狩や自然環境の実態を、これまでにない観点から明らかにすることができました。
鳥類などの動物側の視点を交えながら史料を解釈することによって、歴史の新たな側面を発見できる可能性があります。本書をきっかけとして、歴史学と鳥類学の連携が今後さらに深まることを期待しています。
外部リンク
〔出版社〕勉誠出版の紹介ページ