2021.03.31

17世紀フランス絵画理論と絵画談義

語らいと沈黙の美術批評史
著者名:
今村 信隆(著)
文学院・文学研究院教員:
今村 信隆 いまむら のぶたか 教員ページ

内容紹介

芸術作品の前で私たちは、誰かと、何かを語り合うことがあります。作品の意味や解釈について、よしあしや好き嫌いについて、そしてときには作品とはあまり関係のない事柄について…。こうした談義には、どのような意義があるのでしょうか。現代のミュージアムでもしばしば議論されるこの問題のヒントを、本書では、17世紀の美術愛好家たちから学びます。絵の前で、批評の手前で繰り広げられる、声の美術批評史の試みです。

著者からのコメント

17世紀フランスの美術愛好家たちの著作は、一読したところ、非常に平易です。後の時代の批評家や美学者たちの著述に比べると、素朴な、あるいはあえて言えば「幼い」議論のように思われてしまうかもしれません。

しかしこれらの議論の素朴さは、それ自体として意味のある素朴さだったのではないか、という疑問がこの研究の出発点になっています。絵の前で、仲間同士で、紳士的に語り合うことが理想であった時代の文章です。したがって、学問的な体系性や精緻さ以上に、語り口が紳士的な魅力を備えていること、内容が難なく理解できること、展開が機知に富んでいることが重視されたとしても、何らおかしなことではありません。

現代の常識に照らしてみれば劣った、乗り越えられるべき議論だと思えたとしても、そこには何かしら、時代の要請に即した美点が隠れているかもしれない。このことを、本書を執筆しながら、学ぶことができました。

ISBN: 9784832968691
発行日: 2021.03.31
体裁: A5判・318ページ
定価: 本体価格6,200円+税
出版社: 北海道大学出版会
本文言語: 日本語

〈主要目次紹介〉

序 章 絵の前で語ること/語らないこと
第1章 絵の前で、批評の手前で――フレアール、フェリビアン、ド・ピールと17世紀の絵画談義
第2章 美術の批評と絵画談義――物語としてのロジェ・ド・ピール『会話』
第3章 創作する画家の所作――17世紀フランス絵画論における〈facilement〉の理想について
第4章 過去との語らい――ロジェ・ド・ピールの天才概念と熱狂概念
第5章 『クレーヴの奥方』の肖像――作中の絵画作品と17世紀のイメージ論
第6章 対話篇・会話篇と作品の〈記述〉